奥州へ行く
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「まぁ、アンタのせいだろうな。真田幸村ァ」
「……流石に、返す言葉もござらぬ…っ」
野菜収穫を行った翌日。今度は朱音がぐっすり眠りこんでいた。夜更かししたわけでもないのに昼前になっても起きる気配がない。
「宿酔いでdownした分まで昨日は一人で頑張っちまったんだろうな」
「す、すまぬ、朱音…!」
甲斐の屋敷にいた頃と同じように、眠る彼女の部屋に何故か堂々と居座る蒼紅。政宗はからかいの材料があるのをいいことに幸村に好き放題に言っている。
片や一切言い返せない幸村は申し訳なさと悔しさに唇を噛み締めるばかりだ。
「某は、なんと不甲斐ないことか…ッ!」
「……それなんだがな」
ふと思い出したように皮肉る語調を止めた政宗が静かに幸村を見詰めた。
「アンタがdownしてたから朱音はやれたと思うんだよ」
「……どういう事でござろうか」
神妙な顔つきで言い出した政宗の真意が汲み取れず幸村は首を傾げた。ふーっと息を吐いた政宗は朱音の方へ向き直り、眠る頭を撫でてから言葉を続けた。
「毎度アンタに助けてもらわなくても、自分はちゃんとやり遂げられる。――――そう伝えたくて一生懸命になってるように俺には見えた」
「………」
「突き離す意味でじゃねぇぞ。アンタ、ずっと朱音を気にかけてるだろ。顔色とか見分けるの鈍そうなクセに、わずかな体調の変化にも気づけるなんざよっぽど見てねぇとわからねぇ事だろ」
「それは……、朱音は元々無茶も厭わぬ性格であるが故…」
「そうやってずっと見てるから、アンタを安心させたかったんだろ。自分の事は自分で出来るようにしたいと小十郎も聞いたらしいしな」
心配する思いが返って無理をさせてしまったのだろうか。素直である分融通も利かない彼女はやはりいつでも全力で生きている。
「前は信じて送り出したんだろ?同じようにとまでは言わねぇが、少しはまた信じてやった方が朱音は喜ぶんじゃねぇか」
受け入れてくれた人と共に。同じ目線で、同じ感覚で生きてくれる人に出会えた。それが、何よりの幸せ。
だからその人を目指して戻ると。そう約束したのだ。
「……そうであったな、朱音…。そなたは脆くとも、それ以上にずっとずっと強い」
強いが為の脆さ。強さの為に心をも造り替えた執念。不器用なりにも自身ができる事へ常に全力で突き進む。それが朱音だ。
「倒れたとしても、それは大事な事を必ずやり遂げた後。常にそうであったな」
眠る頬を指でそっとなぞった。
落ち着いた寝息が彼女の生を伝えてくる。
朱音を微笑ましく見つめる幸村の様子を、胡坐を掻き顎杖をつく政宗が面白そうに、あるいは面白くなさそうにじぃっと観察している。
「……マジで相当惚れ込んでるな、アンタ」
「惚れッ!?い、いきなり何を!政宗殿!?」
「そのままproposeまでする気か?Ah~ha~?」
「ぷ、ぷ…ろ?」
ニヤニヤーっと意地の悪そうに笑う政宗に例の如く英語の意味が分からず狼狽えながら首を傾げる幸村。意味はわからずとも惚れ込んでる、という一言で顔面は既に茹で上がっていた。
この男の破廉恥の基準がいまいち把握できていないながらも、まぁ奥手である事には変わりはないはずなのでこの先の進捗は如何に。政宗は更に意地悪精神を働かせた。
「それを甘やかさないシスコンの本多忠朝が許すかねぇ」
「はっ…!!……ぷろ何たらと『死す根』の意味、おぼろげにもわかり申したぞ、政宗殿…!」
妹と同じく癖毛。対極的なのはその鋭い目つきを持つ彼の姿を思い浮かべた幸村は一気に身体を強張らせた。
薩摩の地に於いて一度彼に誤解をさせた際の殺気にも似た雰囲気を忘れたわけではない。
まだまだ前途多難のようだ。
*
「へっくし」
「ん!?忠朝、風邪か!?」
「いや、偶然出ただけ…」
「それは良くない!すぐに温かくしよう!」
『ギュイイイイイー!』
「や、やめろ!何故父さん用のデカい布団持ってくる!いいかr」
「覆うぞ!忠勝!」
『ギュイギュイン!』
「やめろってこのっ……!!」
徳川軍は今日も平和です。
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