IF:井伊と武田と
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「朱音!なぜそなたが、そこに…ッ!?」
無理でした。
ほぼ何も誤解を解けぬまま当日を迎えた。
直虎により引っ張り出された最前線にて会した、少し久しぶりの馴染みの顔達が驚愕している。広大な台地を挟んでズラリと対峙する両軍。
違うんです幸村、事情があるんです。
そう説明する前に直虎が朱音の腕を引きながら高らかに宣言する。
「今日こそ決着を付けてやる!覚悟しろ、武田の暑苦しい男共!そしてお前達が利用している朱音も私が解放してやる!」
「……何のコト?」
幸村の隣に立つ佐助がぼやく。視線の先では根無し草の少女が必死に首を振り続けている様子を見るに、彼女の本意ではなさそうだ。
挙動不審さながら狼狽えている朱音の頭を直虎が撫でる。
「そう怯えるな、朱音。今に私が助けてやる。行くぞッ!武田信玄!」
ブン!と振り抜いた大太刀の切っ先には武田軍総大将、武田信玄ことお館様が腕を組んで佇んでいる。
朱音が巻き込まれたらしい大方の事情はお館様も察しているようだがここは戦場。昔馴染みの娘よりも敵軍と相対さねばならない。
重々しい軍配斧を翳すと直虎に問いかける。
「確か……お主は以前我らと相対した戦が原因で、武田に恨みを抱くようになったそうじゃな」
「そうだ!お前達がわざと戦を長引かせたせいで私は……ッ!私の人生は台無しになったんだ!」
「そうか。それならば総大将たる儂と一騎討ちにて雌雄を決せばお主も満足いくのではないか?」
「フン!今更正々堂々ぶるつもりか。まぁいい、乗ってやる!」
怒りと共に切っ先を変わらずお館様に向ける直虎は怯む事無く睨め付けている。
「「手出し無用だ!良いな!」」
両軍大将が向き合い、周りにそう命ずると戦闘が始まった。
「私怨に軍を動かす必要は無い、って判断したんだろうねぇ〜お館様」
ガン!ゴン!ゴン!バキィ!!
と仰々しい打撃と刃撃音が連続する中、佐助は溜め息混じりに呟く。
「ウチらを立ち会いにして、白黒ハッキリさせるつもりだね。さっすが無駄の無い判断。ね、旦那」
無用な流血を避けられるならそれに越したことはない。両軍大将の激闘を見守る佐助が幸村に視線を向けたが、幸村は何やら落ち着きなく視線を動かしている。
お館様の立ち会いも見届けたいし、一人旅中の朱音が敵軍にいる事も気にかかるようだ。
「悪いわね……直虎様、本気であなたを助けるつもりでいるから、この戦いが決するまではここで見届けてあげて」
「で、ですが……」
「朱音さんが急にいなくなってしまうと、直虎様寂しがってしまいますから!ね、ね?」
「あなたとの鍛錬、直虎様は本当に活き活きとされてましたの!朱音さんは私たちへの指導もとてもお上手ですし、どうかもう少しだけ…!」
朱音は朱音で、軍勢の交戦が無いならばと、武田陣へ事情を説明に行こうと井伊軍を抜け出そう所、何人かの女衆に引き止められている。
どうやら井伊の人間全てが、朱音が武田に騙されていると認識している訳でもないようだが、国主の矜恃を汲み取って行動しているようだ。
成り行きかもしれないが井伊軍で戦闘指南もしていたらしく、妙に親しまれている雰囲気すらある。
「あ〜あ。あの子、ウチの敵対勢力に助力してやがんの」
「朱音、朱音…!しかし今はお館様も…!」