IF:井伊と武田と
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
信じた方向へ一直線。
見ている方が心配になるほどの突き抜けようだが、それでこそこの乱世で女性の身でありながら国を治めるまでに至ったのだろう。
そんな実力者、井伊直虎。
本来ならば朱音が憧れるような存在なのだが、素直に尊敬できない大きな問題がある。
「だから、騙されているんだ朱音は!こんなに強い乙女なんだから、連中は都合よく利用しているに違いない!」
「そ、そんなはずがありません!あの時のわたしは怪我をしてて…!」
「手負いの娘を誑かそうとしただと!?どこまでも不埒な奴らめ…!」
ググ、と拳を震わせる直虎を諌めようとするが今回も失敗しそうで朱音は狼狽える。
押しに弱い性格ではないはずだが、激昂する直虎の勢いが激しすぎるため、つい弱々しい声になってしまう。
「本当に、甲斐の皆様は、直虎様がおっしゃるような非道な方々ではございません…!」
「いや、奴らは巧妙に隠すんだ!次の戦でこの私が明らかにしてやるからな!」
初対面の時から印象に残っていた、直虎の異性への執着心。
共に過ごす内に大元の原因が武田軍との戦であった事を朱音は知った。
なんでも武田軍が意図的に戦を長引かせ、直虎の祝言を台無しにしたという。予定より随分と遅れて国元に戻った頃には、直虎の婚約者は逃げ出した後だったのだそうだ。
無論、武田軍に散々お世話になった朱音にしてみれば彼らにそんな悪意があるとは思えない。
記憶のない大きな赤子が屋敷中うろちょろしたり、池の鯉を素手で掴んだり、木登りしようとしたり、戦装束を無断で持ち出したり、総大将の角兜によじ登ったりしても全て許容されたのだ。
とにかく受け入れてもらった記憶しかない朱音は直虎は誤解しているのだろうと思い、説得を試みているが成果は芳しくない。
「打倒ではなく救助。守護に重きを置くお前の戦場への方針は承知したが、武田への認識が間違っているのは見過ごせない!今後のお前の為にも、私が必ず成敗してやるからな!」
あくまで善意で朱音と話す直虎は『お前を守ってやる』といわんばかりの実に頼もしい雰囲気が醸し出されている。
あと数日だという武田軍との開戦までに、この見当違いの思いやりをどうにかして直したいところだ。こちらも粘り強く向き合えばきっと…と朱音は負けじと意思を固めた。