奥州へ行く
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朱音と手合わせできる可能性にすっかり夢中になっていた蒼紅を決死の思いで説得し、漸く出発準備が整った。
大量の野菜を乗せた荷台を引き連れて幸村と朱音はそれぞれに礼を述べると馬の側まで移動した。
「なら今度はひと月でもふた月でも居れるくらいあの猿を言いくるめて来いよ」
「佐助の説得をする際は俺も力になろうぞ!」
「……、」
全然諦めてなかった。
せっかく片腕の機能を取り戻せる可能性を知ったのに、想定外の期待を寄せられあんまり喜べなくなってしまった。
戦場を目指す癖に、それほどまでに戦える力がある癖に真剣勝負を渋るなど信じられない!と言わんばかりの2人の結託した視線が突き刺さるが無論応じる気にはならない。
肩を落とす勢いで思わず長めのため息が出た。それにより気が抜けてしまったのだろうか。政宗に改めて流してもらった雷も尽きたらしく、また左腕はだらりと落ちてしまった。ああ~…と揃って名残惜しそうな表情をされた。
「……そんなに残念そうに見ないでください。本当にそろそろ出ないと日が暮れてしまいます」
「しょうがねぇな。今回は勘弁してやるぜ、最後にもっかい送ってやるよ」
朱音の左腕にもう一度触れ、雷を流そうとしていた所で政宗が何かを思い出したように動きを止めた。
「如何なさいました、政宗様」
「もう一人、いるかもな。お前の腕を動かせる奴」
意外な発言に幸村も朱音も驚く。政宗の手が朱音の横髪の一部を梳いた。
「あの時、焼き切れちまっただろ。お前の兄貴の髪結紐」
「……隼人兄上…!」
あの時、死に近づく朱音を留める一つの手段として、生き別れていた兄の品を受け取っていた。本多忠勝が養子・忠朝がまだ隼人という名であった頃に使用していた物だ。
自分とも朱音とも違う稲妻の気配をその髪結紐から感じ取った政宗はお守り代わりにと朱音に身に着けさせ、救命する際にも彼女の手と髪結紐と己の手を重ねて雷を流し込んだ。
朱音が一命を取り留めた頃には、元より古びていた髪結紐は役目を終えたと云わんばかりにその場で塵となった。血縁者の上に同じ雷の婆娑羅者。可能性としては有り得るのではないだろうか。
「確かめに三河に行ってもよいかもしれぬな!」
「良かったじゃねぇか。兄上の所に行く大義名分ができてよ」
「はい」
新たな可能性もまた見つかったことで、いよいよ馬に跨って見送る奥州の者達に礼を述べた。
「野菜を傷つけぬよう、多少遠回りでも街道を通って帰れよ」
「勿論でござりまする!まこと感謝致す、片倉殿!」
「ああ、また来いよ」
「その頃にはもうこの世は平和すぎて退屈だろうからな、楽しみにしてるぜ朱音」
「……はい、遊びに参るのは楽しみです。またお手製のずんだ餅も食べたいです」
遠くも近くも、まだどちらに転ぶとも知れぬ未来。それでも寄せるは他愛もない希望。
平穏の日々を心待ちにしながら、二人は青葉城を後にした。
*おまけ
「はあ!?デカい貸ってなに!?もうっ!今度ウチの蕎麦とりんご大量に送っとけばいいよね!」
「完全にご近所付き合いのそれですね」
「うむ、礼を尽くすのだぞ、佐助!」
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