Marry me!(前編)
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「ただいま戻りましたよっと旦那」
「おお、佐助!ご苦労であった!お前が戻ってきたということは、」
「そ、わかったよ。あの子の居場所」
独断で城を飛び出したこと等諸々説教したいことはあるが、彼女に関わる事には何を言っても無駄だ。ここ数年でそれを十分承知している佐助は幸村が望む彼女の情報を告げる。
実の所ほぼ宛てもつけず駆けていた馬と幸村自身を休ませるべく、休憩がてら街道の方の茶屋まで出た。
「して、朱音はいずこに!」
「加賀の前田のお屋敷。でも、どうも旦那には知られたくなかったみたいで…まぁ匿われてるって感じだったね」
「……避けられているのか、俺は」
「さあ。距離を置きたいのは事実だろうね」
あからさまに表情を暗くした幸村。己の意志と彼女の気持ちの釣合いを計るのはこの上なく難しく思えた。
やがて注文通りにやってきた団子を食すが、いまいち味わうことができない。が、すぐにでも発てるようにと次々頬張る。
「忍衆で調べられたのは居場所まで。あの子がどんな状態かまでは不明」
「……まさか、また寝込んだりしているのだろうか」
「うーん…、まぁ、また無理した可能性は十分に有り得るね」
そんなつもりは一切なかったというのに、またしても彼女を追いつめてしまったらしい。
真っ先に己を傷つけることで凌ごうとする今も直らぬ彼女の悪い癖だ。
「で、どうする?会いにいくの?」
「……ああ、どうしても会いたいのだ」
「わお」
声色は暗いままでも、揺るがない意志が表れていた。本来は異性を苦手とするはずの幸村が迷いなく言い放ち、佐助は面食らってしまった。
佐助自身の彼女との内々の葛藤、複雑な思いはあるものの今はそれを隠す事に徹した。何とも形容がつかぬあやふやなことでもある為、今口に出したところで何の意味もない。
(でも羨ましい、かも。真っ直ぐだな、旦那)
張り付けた笑顔の奥に潜むは羨望の思い。
「しかと、朱音の想いも聞きたい」
「想い?」
「応も否もなく、ただひたすら、有り得ぬとしか申さなかったのだ」
「まぁ身分もない自分だけ嫁にして、他は一切娶らないって言えばクソ真面目なあの子はそう言うでしょうよ」
「政略結婚など最早必要なし。そのような時代を呼び込むきっかけは、他ならぬ朱音や慶次殿が真っ先に作り出したものだ」
「相当自信あるんだね、旦那。あの子が自分を好いてるって」
「……ム…。そ、そこまではわからぬが、……俺が朱音を想う気持ちは何者にも劣らぬ、故に何者にも譲る道理もない」
「あ~らら、自分だけかよ。結構横暴じゃない?それ」
「そうかもな。だが、誰にも渡したくはない。共に歩むと決めているのだ。それに…根拠はないが朱音もそう思ってくれている気がする、」
鬼ごっこであるならばなんと模範的な姿勢たる鬼であろうか。突き離されたことでかえって執念が剥き出しになったのかもしれない。
逆境に燃えるタイプ。根拠はないというのに底なしの自信。流石は一武将、こうした性格が戦闘狂な一面にも通じているのかもしれない。
「逸るのはわかるけど、乱暴は駄目だぜ、旦那」
「な!俺を何だと思っておるのだ佐助!」
「さぁ~ねぇ~。はぁい、案内始めるよ~」
「ま、待てッ!佐助ェ!」
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