奥州へ行く
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「やっさいもっさい!」
「お前よくそれ言ってるよな……なんなんだ?」
「そこのけそこのけーって意味の掛け声みたいなものだそうです。父上がおっしゃっておられました」
「よくわからねぇが野菜を見て言う用途じゃねぇことはわかったぞ」
「やっさいもっさい!」
「Cool down、朱音」
現在地、奥州伊達氏が居城・仙台青葉城。
再会の約束を果たす為、朱音が申し出た外出に自らお供する事を名乗り上げた幸村と訪れていた。
戦乱が一時停止した事により可能となった小旅行。しかし幸村は朱音を連れて自らの故郷・上田の城へ戻った直後の事態であったため、城主の癖に!と苛立たしげな佐助の長い小言を喰らったものの、どうにか切り抜けたことで現在までに至る。
「お城の中に畑があるのですね…すごいです」
「ほんとだよな。俺の知らねぇ内にどんどんでかくなってんだよな……まぁ、小十郎のシュミだ。城の外にも別ででっけぇ畑があるぜ」
「なるほど…!」
だがしかし。想像以上に積極的に手を出してくる(語弊)政宗への不満が悶々と積もっていく。
(確かに此度は朱音の命を繋いだと伝え及んでいる上に、朱音自身も政宗殿と親しい思いでいる………だが、)
「いつまでむくれ面してんだ真田幸村」
「……ならば朱音をこちらに返していただきたい」
「返すってなんだよ。抱えてるだけだろうが」
姫抱きから膝抱えへ姿勢がいつの間にか変わっていたが、未だ政宗に朱音が抱き上げられて移動している事実は変わらない。
不愉快さを露わにする幸村の険しい視線にまともに取り合うつもりのない政宗はからかうような視線を投げて寄越した。
問題の渦中にいるはずの朱音は最早青葉城の畑に夢中になっているらしく、幸村の不機嫌も把握していないらしい。抱えられている事で高い視点から見回せて楽しいと感じているのだろう。寒さも和らいだのか、表情は柔く輝いている。
城門から中庭…中畑へ。畑を過ぎたらいよいよ屋敷が見えてきた。近づくに連れ、ちらほらすれ違い出す政宗の家臣たちの視線が当然朱音と幸村に向けられる。
城主である政宗が見慣れない人物を抱えて歩いている姿は流石に周囲の人間には不審感やあらぬ誤解を招いてしまうかもしれない。場の雰囲気を察した朱音は見学を中断して政宗の方へ視線を向けた。
「あの、政宗。もう自分の足で歩けます」
「Noだ。あと少しくらい抱えられたままでいろ」
「そんな、なぜですか…!」
「お前、多少無茶してここまで来ただろ。顔色見てすぐわかったぜ。恐らく真田もな」
はっとして朱音が幸村の方も見遣ると、不服そうながらも政宗に同調するように浅く頷いてみせた。
上田を発つ時点では健康状態は良好だったが、数日に及んだ馬での移動、気候の変化に自覚する以上に身体がついて来られなかったようだ。
朱音の体調を考慮していた幸村が自らの羽織を被せたり、休憩を多めに取るなど手を尽くしたおかげで無事に青葉城までは辿りつけていた。
「その上身体も冷やしてんだ。ったく、こっちの寒さは身体に障るlevelだって、言っただろうが」
「……ごめんなさい、でも今はかなりあたたかいです!政宗のお身体が…熱いおかげ…?」
「俺の身体が熱い?別に普通じゃねぇか?」
「ええっと、なんでしょう……こう、チリチリっとするような…」
「何だかわからねぇが、Time upだ。着いちまったぞ」
あっ!と心の底から衝撃を受けた顔つきになった朱音を見るや否や政宗はしてやったりと背中を軽く叩いてやった。
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