Marry me!(前編)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「まさか、にござる」
「まさか、とは」
「こんなことでまたそなたと会う事に驚いているのでござる」
目の前には呆れ顔の自分が腕組みをして立っていた。この夢の舞台は例によって曇天の空の下、全てが終わり、始まった場所。
確か彼女と最後に会ったのは…、
「一度目は幸村、二度目は政宗が起こしにきたでござるが…此度は如何に、」
「ということは4年ぶりですか。お久しぶりです」
「呑気に構えている場合ではないでござる!それがしと顔を合わせる意味、わかっていないでござるな!」
首を傾げると彼女がズイと詰め寄ってきた。
「ここはそなたが一度死した場所。心に焼き付いた原点でござる。ここに来るという事は相当な危機に瀕している証拠っ!」
なるほど。つまり心身いずれかが切迫している時にこの夢を見るということだろう。
するりと得心がいった。彼女に会う前からこの場所の夢は散々見ていたので間違いないだろう。
「当然、こたびは命の危機ではありませぬ。」
「……参りました。それほどまでに、わたしは悩んでいますか」
「それがしに会ったことが何よりの証拠。己を相手に偽りは無意味でござる」
叱りつけるような口ぶりをする幼児退行していた時の己。いつもながらどうにもちぐはぐな様子に苦笑してしまう。
「戦を駆け回る為に己を騙し続けることは数年持ったのに、此度はたったの数日でござる」
「………」
「しかし、これ以上は偽りたくない。これ以上は苦しいでござる」
「でも、これは、わたしのわがまま。彼にとって正しい選択ではない、」
「……幸せになってもらいたいでござる。お家をきちんと繋いで、遥か未来まで」
「……それは何もないわたしとでは、きっと担えない、」
そうだ。そうなのだ。ちゃんとわかってる。
わかってるのに…、
「………胸の奥が痛い。苦しい、こんなに痛いの、いや。痛くて、痛すぎて、このまま死んでしまいそう……!」
「でも、苦しくても……会いたいって思ってる…、幸村……っ」
本当に、わがまま。
わがまま言って、すぐ寂しくなって、また無茶を求める。
いつまでたっても、こどものままだ。
ばかなのは、わたしだ。
この、大馬鹿者。
*
「どうした、忠朝。悪い報せだったのか?」
「……最悪だな」
遠慮なく気兼ねなく。向き合う真正面でそこまで不愉快そうに眉間の皺を寄せられれば、手渡された手紙に何が書いてあったのか気になるというものだ。
心底対処に困ると嫌気の差した様子の忠朝の背後に回り込んでその内容を覗き込んだ。
「……なるほど。なんだ、やっぱりそっくりじゃないか。流石は兄妹だ」
「どこをどう読んでそう思った」
「頑固なところに決まってるだろう。意固地になって、周りが散々いいといってるのに、己を許さない」
「一言一句違わずお前に返すぞ、家康」
「んんー?」
この三河の国も、4年前の豊臣軍の進撃停止以来、それまでよりずっと穏やかな日々が築かれつつある。そんな中届いた相談を持ちかける文。実妹の状況とその打開策を実兄として求められた忠朝と興味深そうに事態を把握する家康。
「真田と朱音殿ならきっとよい夫婦となるだろうに…、身分を気にしてままならない、か。参ったなぁ」
「……、」
「忠朝?」
「……、」
「あ、嫁に行かせたくない兄上殿?」
「悪いか」
「何を!決して…わ、悪くない、ぞ…!………っぷ、」
慌てて背を向けて笑いを押し殺す家康に苛立たしげな視線を送った。
「その愛情をいつかは直接妹御に伝えてやれよ、忠朝。さて、実兄として何か解決策は思いつかないか?」
「……正直考えたくない」
「また誤解されるぞ?」
「本心だ」
複雑な親心ならぬ兄心。それでも何か考え込むようにじっと目を閉じた。
暫くして、聞きなれた機動音が近づいてきた。
『ギュギュイン、』
「そうなんだよ、今忠朝悩んでいてな。お前もこの文読んでみてくれ、忠勝」
『……キュイーン』
「そうだろう。で、何かできることはないか考えていてな」
「……慰みの気持ちはもらっておく。十分にもらっておく。だから、頭を撫でるのはやめてくれ、養父さん」
『ギュギュン!』
「ああ、なぜ更に強く撫でる!」
「儂も儂も!」
「ああああ!やめろ気が散る!首が曲がる!」
.