Marry me!(前編)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ねえねえ、朱音ちゃんけっこんしないの?」
問いかけられたのは己とはあまりに縁遠い言葉だった。
意図せず硬直した朱音に目の前の人物が更に身を乗り出してきた。
「だーかーらー!めおと!父ちゃと母ちゃ!フウフ、けっこん!しないの?」
「……えっと、なぜ突然そんなことを?」
「だってね、母ちゃが、ちっちゃい子のお世話上手な人はショーライいい母ちゃになるって!」
常に快活明朗。素直に好奇心全力投球。確実に奔放にのびやかに成長している彼女はどうやら最近母から聞いたばかりの受け売りを必要以上に真に受けているらしい。
「ほんとなのっ!ほんとにすごいよ!この子ね、いつもあたしや他の人があやしてもずっと泣いてるの!この子の母ちゃ以外みんな駄目なのにね、朱音ちゃんが抱っこしてて笑ってるんだよ!?」
「あらあら、そうなのですか」
「あぶー」
朱音が右腕に抱えるは、先程お守りを任されたばかりの小さな赤子。どうやら常日頃は相当な泣き虫さんであったらしい。まだ据わりきらぬ首を支えながら軽く身体を揺らすと赤子の温かい体温、そして脱力感…いわゆる信頼性を感じてとれた。
「そろそろ寝ちゃうかなー」
「ねーねーっ、だからね、朱音ちゃんはいつけっこんするの?」
「……うーん、考えていませんでした」
「えー!?十になるあたしでも考えてるのに!?」
「あら、おませさんですね。ふねちゃんももうそんなに大きくなったのですね」
「朱音ちゃん、ほんとに大丈夫!?」
齢十歳の少女、土佐に暮らすふねに心の底から心配され詰め寄られるが、朱音は曖昧な笑みを返す他なかった。
繋ぎ留められ、未来を望んだ生。
その続きは何もかもが新鮮であると同時に馴染み辛いことも少なからず。
誰かを助ける事を徹底し、そして相変わらず自身への執着は弱いまま。
年端もいかない小さな友人に呈された疑問は全く以て彼女の枠の外にあったのである。
.