節分
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……という訳だ、頼んだぞ佐助!!」
「え、なにそれ。なにその理由。なにその横暴。なにこの俺様の扱い」
「さしけ!!かたちがだいじ、でござる!!」
「やっぱりなんか変な方向に育ってってない!?この子!」
「馬鹿を言え佐助。朱音は素直で思いやりのあるよい子であるぞ」
「マジで!?そんな話初めて聞いた!イイ子ならまずこんな、人に向かって豆なんか投げたりしな――いだだだだだッ!」
「「おにはーそとぉー!」」
不要と思われるが状況説明をしよう。
生憎本物の鬼は本日いらっしゃらないので、替わりの鬼役を見つけて豆まきをする事になりました。
その鬼役に任命されたのがたまたま呼び出され、偶然を必然的に謀られた佐助だった。
躑躅ヶ崎館の庭に出て、明らかに嫌そうな顔をしながら投げられた豆を極力避けずに(鬼役なので)この大きな子ども二人の相手をしなくてはならないのだ。
無論蛇足だが鬼の代わりに豆を人間に投げつける必要は皆無である。
「……旦那ぁ!このお遊戯って時間外手当、出ますよねー!?」
豆を沢山喰らいながらも佐助は叫ぶ。
「む、上乗せ給料か……」
気持ちを支えるものがないとやっていられないらしい佐助は主に申し出る。
幸村はむむ、と少しだけ悩むような素振りを見せたが――
「お前は給金が出ぬと、節分嗜む事もできぬのか……精進せよ佐助ェエエ!!」
逆に、幸村の怒りを買ってしまった。
悩むというより、自分と朱音と遊ぶにあたって消極的な態度の佐助に不満を感じていたらしい。
「ならば減らしてくれるわ!」
「ひぃいいいい!!それだけは止めてくれー!!」
「げんきゅ〜ぅっ!」
無性にコントロールの良い朱音の投げた豆がメコッと佐助の額に直撃した。
豆の当たり所が悪かったのか減給の衝撃が強かったのか、佐助はそのままふらふらとしゃがみこんだ。
ちょうどその時、新しい人物の声がした。
「朱音!……あらあら、こんな所にいらっしゃったのですね。少し探しちゃいましたよ」
「む、ひかり!」
屋敷の廊下からひょい、とひかりが現れた。
途端にひかり、ひかり!と朱音が駆け寄って、そのまま彼女に元気にダイブする。
廊下に上がる際につっかけを脱ぐのも忘れない(ひかりの躾の成果)。
「ひかりー!」
きゃー、とひかりに会えた喜びが大きいようで最早豆まき放棄で力一杯抱きついてる。
まあまあ、とひかりも抱き返しながらある提案を持ちかけた。
「今日もお元気ですね、朱音様。……ところでこれから炊事場で海苔巻き…節分の恵方巻きを作るのですが、朱音様も如何ですか?あなた様の食育にもなるでしょう、との事で」
節分行事という事で恵方巻き作りに誘う為に来たらしい。
「海苔巻き!!それがしは作る!?」
「はい、女中の皆さんと一緒にですよ」
「みなさんと作るでござる!!」
表情を輝かせて即答した朱音は再び庭の方に向き直る。
何やら片隅に緑色の抜け殻が転がっているがそれは無視の方向で。
「幸村ー!それがしはひかり、みなさんと恵方巻き作るでござるー!」
行ってきますの意を込めて幸村に告げた。
「む、おお!!それは良いな!是非とも行ってまいれ」
幸村もきらきらとした笑顔で返してくれた。
「では、完成しましたら幸村様達にもお出ししましょうか」
「はい、ひかり!」
「あら、朱音様。惜しかったですわね……お履物が、」
ささっ、とひかりが屈んで先程朱音が脱ぎ散らかした草履を揃えた。
「!!す、すみませぬ……」
自らの詰めの甘さに朱音もしまった、と言わんばかりに少々凹んでいるようだ。
(ひかり殿はまこと、細かな事にも気が回るのでござるな…)
朱音を指導する身として己も見習わなくては、と幸村が感心していた所に、
ぞわり、と突如背中にオカン…否、悪寒が走った。
ここ暫くは当てられる事のなかったこの気は……
「だぁぁぁんなぁ~……」
嫌な予感がして、ギ、ギギ、ギ…と恐る恐る首を回すとそこには本物の鬼にも負けない位の気迫を纏った『鬼』がいた。
「さ、さす」
「なぁ~んかアレ、だよねぇ……旦那最近、朱音が来てから……アレ、だよね~…2人して俺様の扱い、アレだよねぇええ……」
名前を呼ぶのを遮りながら鬼――もとい佐助が低い声で呟いている。
それもつかの間、ぶわッ!と佐助を軸に周りから真っ暗な闇が溢れだした。
あまりの恐ろしさに幸村は長年の癖なのか、逃げ出すよりも咄嗟に玉砂利の上に正座をした。
「……あんまり調子に乗るんじゃありません!!他人との接し方がなってない!!」
堪忍袋も仏の顔も何とやら。佐助の目が鋭く光った。
その目をよく知りつつ、久しぶりに見た幸村はさぁっ、と血の気が引く。
威圧で圧され、身動きの取れなくなった武将男児の断末魔が上がった。
「う、…わぁあああああ!!朱音、助けてくだされぇえええ!!」
今まで溜まっていた分を一気に吐き出すかのように、腰に手を当て仁王立ちの姿勢で、佐助は幸村に長々と説教をし始めてしまった。
*******
「あらあら、では佐助様が鬼になって豆まきをなさっていたのですか」
「はい!おにはそとー!」
(オカン、ついに復活)