お料理しましょ
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そんなわけで幸村と朱音と佐助で作った大量の雑炊は本日の朝餉の一品として出され皆から好評価を得た。
特にお館様とひかりと小助、お市には直接渡しに行き、それぞれおいしいと笑顔で言ってもらえた。
その際の出来事を、少々―――…。
「まこと奔放で心優しき子よの、朱音」
「いいえ、これはさしけの真似っこです。ふーふーしておきますね、お館様」
「うむ!」
*
「あらあら、よろしいのですか?…ふふ、せっかくですからお言葉に甘えさせていただきますわ、朱音さま」
「ひかりには本当にたくさんお世話になりましたから、恩返し、というにはまだまだ足りませんが…」
「いいえいいえ、ひかりはとっても嬉しいですわ。ここ最近の一番の幸せです」
*
「これじゃあどっちが子どもかわからないわね、うふふ…」
「もう、どちらも子どもじゃないですよ、お市様!」
「そうだったかしらね…いただくね、朱音」
*
「そ、そんな俺はいいよそんなの…!普通に食べれるから!」
「でも一番重症なのは小助ですよ!ご遠慮なさらずに」
「ああもう、それもあるけどそういう事じゃなくてね朱音ちゃん!ほ、ほら後ろ後ろッ」
療養中の小助がこの上なく狼狽しながら示した方を振り返っても意味がわからず朱音は尚も掬った匙を小助に差し出す。
「幸村とさしけがいるだけで、何事もないではありませんか」
「それだってば!その事言ってるの!」
「え?」
もう一度振り返っても朱音は小助の意図するものがわからなかった。確かに最初にお館様の所に渡しに行った頃から2人とも口数が少しばかり減ったとは思うが、それ以外は特に思い当たる節はなかった。
「とにかく、あーんですよ小助。卵がね、小助の髪みたいに綺麗な色にできたんですよ」
「そ、そうだね綺麗だし斬新な例えだね。で、でもさ…」
「はいっどーぞでござる!」
妙にしぶる小助の口に冷める前にと朱音は匙を半ば強引に突っ込んだ。程よい温かさで含めたものの、朱音の背後の二人の激しい嫉妬の眼差しに耐えかねる小助は純粋に味わうことができず、絶妙な表情を浮かべた。
それでも必死に笑顔を作り出して全力で礼を述べる。
「とってもおいしいよ、ありがとね」
「よかった…!まだまだあるのでどうぞ!」
「あ、あのね、もう自分で…!」
「やです!せっかくですからわたしにさせてください、お願いです!」
ああもう、なんでこんな場面で子どもさながらわがまま言うのやら。
まだまだ自分が食べさせてあげようと張り切る彼女の背後の二つの嫉妬の塊がいよいよ憎悪の集積に変わりそうで小助の背に冷や汗が滴って行った。
「……で、えっと、色んな人ん所行って食べさせてあげてる、の?」
「はい、あとは慶次の所にお届けしておしまいです」
「へ、へぇ…風来坊の所にも行くんだね~…」
慶次の名が出た途端、これまでとは比べ物にならないくらい禍々しい気配を膨らませた幸村が視界に入りつつも、苦しげに愛想笑いを浮かべる小助。状況を見かねて、せめてもの打開策を講じてみることにした。
「あ、あのさッ朱音ちゃん、すっごくこれおいしいから俺どうやって作ったのか知りたいなぁ!」
「はい、もちろんです!」
「だ、だからさ、お話してもらっちゃってると前田の風来坊のとこに行くのすごーく遅くなっちゃう…から、さ」
チラチラと黒い影に沈む二人に目で合図を必死に送るとどうやら得心がいったらしく、両者はにわかにシャキンとした凛々しい雰囲気に戻った。
「じゃあ、慶次の所に行ってからまたここに…」
「朱音!前田殿の所へは俺たちが行こう!それゆえ、ここで小助とゆるりと話しているといい!」
「うん任せて、じゃあさっそく行ってくるからねお二人はのんびりどうぞ〜」
「え、え、っと、はい、よろしくおねがい、しま、す…?」
思案させる間もなく言いたい事だけ言うと、幸村と佐助は妙に素早く部屋を飛び出していった。
それによって威圧から解放された小助が布団から起こしていた上体を前方に倒して脱力した。そのままの状態で朱音と言葉を交わす。
「あー…つらかったぁ……」
「あの、小助?」
「もーにぶいー、にぶいよ朱音ちゃんたらー…」
「あ、そうだ。あのね、わたしもね、小助にわたしの兄上と会ったことがあるか聞きたいんでした」
「………もー貴女様は、ほんっとーに……でも、なんか一安心したらお腹空いてきたわ。もっとお雑炊くださいな、朱音ちゃん、」
「あ、はい、お安い御用です!こすけ、あーんっ」
「うははー、あーん」
はばかる相手もいなくなった所で満面の笑みで再び身体を起こし、ちゃっかり役得の至高の至福を味わう小助だった。
なお、別室において現在進行形で繰り広げられている真田主従の八つ当たり鬱憤晴らしの『野郎から野郎への恨み嫉妬込み込み、殺気満々のあーん』の犠牲者になっている慶次については、また別の機会に。
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