お料理しましょ
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「はい、ほら、あーん」
「………」
「冷めちゃうってば、あーん」
なんか無性に腹立つ気がするでござる。と
心なしか顔が熱くなりつつもジロリと彼を睨んでみる。
「まっ!舌打ちなんかしちゃって!悪い子にはお仕置きだぜーくすぐっちまうぜー」
「た、食べまするっ」
佐助が匙を動かす前に、動物のように自分から飛びついて、ぱくりと野菜たっぷりの雑炊にかぶりついた。
むぐむぐ、むぐむぐと無心に咀嚼する朱音。
「なんかすっごい達成感がない『あーん』なんだけど…」
自分で口元まで運んであげるつもりだったようで、ふてくされたような抗議の声にも朱音は反応しない。
ずっと無言のままもごもごしている。
「聞いてんの?……わー、シカトだぁ。シカトされちゃってるよ俺様ー…」
「―――――――美味でござる…」
「え?」
「さしけ!このおかゆ、まっこと美味でござるっ」
パァ!と唐突に眩しい笑顔を向けられたため、何よりまず驚きが勝った。
ぼーぜんとしていたら一瞬で器と匙が奪われ自分で食べ始めてしまった。
よほどおいしいのだろうか。自然体な笑顔が溢れ出しつつもゆっくり味わうように食べてくれている。
「俺様が作ったんだけどね」
「なんと!さしけはごはんは上手でござるな!」
「ご飯作ることは、料理っていうのよ朱音ちゃん」
「りょ?」
「料理な」
その言い方だと俺様料理以外能無しみたいじゃないの。と詰めの甘い日本語に笑いつつも内心まだ驚きが消えないらしい。
てっきり自分が作ったといえば、びっくりして最悪突き返すかもとか予測していたのに、まさかの現実である。
自発的に次々と頬張り、にこにこしたまま佐助に話しかけてきた。
「りょうりはひかりも上手でござる!」
「だろうねぇ。ひかりさんは将来女中頭候補になるんじゃないかって言われてるほどの人だし。性格はちょっとアレだけど」
「ひかりはすごいでござるっ」
(もしかして……、遠回しに俺様もほめてくれてる?)
「あららー、うれしいなぁ。ありがとう朱音」
「なッ!そ、それがしはさしけには言っておりませぬ!」
「いやーそんな言われちゃうと俺様照れちゃうわぁ」
「い、いいい言っておりませぬ!さしけの破廉恥!」
そんないつかのやりとりは確かに覚えていて。
*
「こんばんは。おかえりなさい、さしけ」
「佐助だって言ってんでしょーが。なぁに、また眠れないの?」
「違います!さしけを待っていたんです!」
「もしかして俺様の春?!」
「春はまだ先でしょう!それよりお願いがあります」
甘い展開のフラグはバキバキに粉砕されたところで、思い出したように部屋を出たのか寝間着姿のままの朱音は佐助に頭を下げた。
「甲斐を発つ前に、少し時間が空いている日はありますか?」
「やだ、俺様と逢瀬!?」
「どうなさったのですか慶次みたいな事を言って。そうでなく、料理を教えていただきたいのです」
ふざけてばかりの態度に半ば呆れながらも朱音はそう申し出た。
するとスパンと夜風の吹く廊下に現れた人物がひとり。
「朱音と聞いて!」
「良い子は寝てる時間だよ、真田の旦那」
「某も料理!一度してみたかったのだ佐助!!」
「な、ん…だと…!?」
お料理教室。開催決定。
「ちょっと!夜中にうるせえよあほ佐助!」
「騒いでんの俺様じゃねぇよチビ助!」
「小助!起きてきて大丈夫なんですか!?」
「なんと!銃創がまだ塞がっておらぬというのに無理に起き上がってはならぬぞ小助!」
「ひぃえええええ!?朱音ちゃんに、ゆ、幸村様ぁあああッ!?」
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