15.息吹き
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「___」
この世に生まれ、名づけられた一人の姫。
愛しい響きは唐突に、愛おしい日々は一瞬で消え去る。
恐怖に、喪失、戦烈を刻まれた身体は放り出され、生きることも死ぬ事も選べず覚束ない足で彷徨った。
「ろく」
幸運にも拾われた先でつけられた呼び名。
硝子玉のように脆い心で、底抜けに明るい者達に接し、人というものを見て、知る。
己の大切なものたちが息絶えた戦場に立つ決意を固め、強さの為に自身の心を封じ込めて邁進する。
生への半端な執着が延々と自身を追いつめ、やがて全ての記憶を手放した。
「朱音」
全てを失わせた先に贈られた名前。
右も左も言葉も忘れ、幼児退行した状態で、過去に苛まれる事無く多くの人々と触れ合い、ぬくもりを受け入れられるようになる。
記憶が回復した後も名乗り続け、過去と回顧すると向き合う事を選び、多くの人々の手助けに支えられながら目的へ迫る。
決着し、身体と魂は既に限界を超えていた身であったが、帰りと待ち願う人々に応え命を繋ぎ留めた。
鼓動が、この肉体が、この請えが、
いつだって誰かへ、どこかのあなたにまで響くよう、わたしは生の音を掲げ続けるだろう。
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