2.心
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「………」
今頃、どうしているのだろう。
どこにいるのだろう。
元気にしているだろうか。体調を崩してたりしてはいないだろうか。
(またかー)
まさに上の空。
ここは、甲斐。躑躅ヶ崎館。
屋敷の縁側でぼうっと空を眺めているようで眺めていないのは、真田幸村。そんな状態をあの日から時折繰り返していた。
「俺様としちゃ、騒がしすぎるのが多少は静かになってくれてよかったーなんて思っちゃうんだけども」
ひゅ、と幸村の前に降り立ったのは彼の部下であり強く信用する忍、佐助。
「さ、すけ……お前…」
「ん?なになに?」
「お前は、気にならぬのか…!?」
「全く。って言ったら流石に嘘だけど。まー大丈夫なんじゃないの?前田の風来坊もいることだし」
前田。その単語を聞いた瞬間、気の抜けたようだった幸村の気配がブワッと膨れ上がった。
「それが、それが、余計に不安にさせるのだぁあああああああ!!あの様な軟弱でだらしのなくて破廉恥な者と一緒に朱音はぁああああ!!」
「旦那さ、もうあの子の父親になったら?あと、魔王の妹も一緒にいるからね」
「ぉおおぉおぉおお……!朱音~…!!」
「聞いてよ、ホント」
縁側の板張りに顔面を擦り付けて盛大に男泣きする幸村ほど表には出さないが、佐助も彼女が気にはなっている。
「ほら、旦那!次の川中島での戦も決まったことだし、いつまでも引きずらないの!気持ち入れ替えて!すっげー迷惑だけどそこでまたあの独眼竜にも会えるかもよ!?」
「独眼竜…政、宗どの…」
床からわずかに顔を上げた、目を腫らし、鼻を赤らめた幸村が低くつぶやいた。
「政宗殿……政宗殿は…朱音の…貞操を……せ…接吻…を…………………―――――ぅううぅおぉおおおぉおおおぉおおお!!」
「ぁあ゛ーッもう!だから落ち着けってーの!話題しくじったわもー!!」
(独眼竜云々はともかく、俺様も心配っちゃ心配だけど…)
(例えば今、どっかの戦いに首突っ込んで捕まったりしてなきゃいいけどねぇ……)
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