13.終着
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「ばかが」
「えっ?」
唐突にそう言われ胴着姿の己を凝視したが、彼女自身も不思議そうに一度だけ首を捻った。
しかしすぐに納得したように手を打つと笑顔を見せる。
「あにうえの真似っこでござる!」
「ああ、最近やったせいですね…」
「ちちうえのところに行くのであればあにうえにも会えるでござるな!」
「そうですね、」
――――――――『そんなのどうでもいいです!どうして起こしてくれなかったんですか!!』
『隼人殿が、無理に起こす必要はないと申されたがゆえ…、』
――――――――いや、違う。わたしの兄上は…、
「あのね、兄上、生きていらしたって…」
「む?」
「幸村たちが、わたしが寝ている間に薩摩に訪れたと言っていて…」
「ゆきむら!?それがしは幸村にも会いたいでござる!」
幸村、という単語が出た途端に人の話を聞かなくなる相変わらずなこの子どもに呆れて苦笑した。
そこで、ふ、と思い直す。
幸村と何か大事な話を交わした気がしたのだ。
「幸村に会いたいでござる!ごーざーる!」
「わ、わかりましたから落ち着いて、なんだか恥ずかしいです!」
じたじた暴れだす幼子のような自分の姿の両肩を抑えたが、構わず彼女は身を乗り出してきた。
「そなたは幸村に会いたいでござるか?」
「それはもちろん、幸村を目指して帰ると、約そ、く………あ、」
(約束…っ、わたしはそう約束していた…!)
靄が少しずつ晴れていく。
頭の中も冴え始めるが目の前の彼女はお構いなしにどんどん訊ねてくる。
「さしけにも?」
「え?」
「さしけにも会いたいでござるか?」
「ま、まあ」
「お館さまにも?」
「はい」
「ひかりにも、小助にも、お市さまにも?」
「会いたい、です」
「ならば、そなたはどこに行くのでござるか?」
『―――――――勝手に死んでんじゃねぇ、朱音!』
天から降ってきた声は前の幸村のものとは違う誰かのものだった。
でも知っている声。彼も朱音にとってはかすかに面影を纏う相手だ。
「む!おうしゅうは~やっさいもっさい!ござる~」
いつかの言葉を全く同じように陽気に唄う胴着姿の自分に思わず噴き出した。
するといつしかのお館様を真似るかのようにその両頬をぺふっと挟まれた。
目の前には相変わらずの生意気にも子ども染みた笑顔。
「決まったでござるか、」
「うん」
「ちちうえは、また今度。もう少しだけ、後にするね」
まだわたしには、会いたい人がたくさんいる。