やさしい想いを抱く者から死んでいく。

透き通った瞳。曇ることのない瞳。その美しさはさながら硝子玉。落ちれば音を立てて容易に砕け散る。

乾いた甲高い、それでいて細い音。
繊細な音。
どんなに小さくても耳にまで必ず届く音。

脆い存在でも、ここにいた事を、尚ここにいる事を謡っているようだ。


この世は無常也。

戦国乱世に於いてそれを実感せぬ、例外な者などいない。



―――



私の音色は届いただろうか。
砕ける前に、或いは砕ける音で、おまえに伝えられただろうか。

死ぬためじゃない、苦しむために生きるんじゃないんだよ。
何に於いても辛い時代なのは事実だけど、それでも、おまえは私達の希望。おまえには笑んでいてほしい。

いつ死ぬともしれないと覚悟はしていたけれど、流石に唐突すぎたかな。驚かせて、ごめんね。


でも伝えたいことはいつもとおんなじだ。
一人で進もうとしなくていいんだ。周りを、もっと頼ってくれればいいんだ。
無力だと思うのならば、それをただの弱さでなく、人と繋がれる強さとして手を取り合えばいいんだよ。
優しい子達よ。皆と支え合って生きておくれ。

私に残る悔いは側で守れないことだけ。
だから私の分まで、お兄ちゃんに託したよ。きっとおまえを迎えに行ってくれる。

本当は、ずっと、ずっとこれからも側にいたかった。ずっと、長く。母親とも触れ合えなかった、危ういおまえを皆で守り、育てていきたかった。


だから、信じさせておくれ。これからの、おまえの未来に、私の分まで、おまえを支えてくれる多くの人々が現れることを。その中でおまえが心から笑むことができると。

そう、信じているよ。


―――――――誰より無邪気で、何より純粋な心を持つ、大切な、私のいとしい娘。