12.送別と前進
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「頼みたくないけど、頼んだよ」
「なんだか前より辛辣だね!?……って、なにこの文?」
「どちらにせよ、あんたの家にも送るつもりだったんだよ。これは朱音ちゃんの状態の報告書」
朱音に頼まれ、西を目指すことになった小助とお市。
小助は武田本陣へ…つまりお館様と佐助、ひかりへ宛てた軍事とは直結しない、特殊な位置づけにある書状と同じ内容のものを手元に持っていた。結果的にもう一つの送り先であった前田家の者———慶次に直接渡すことになった。
「時間ないだろうから、移動しながら目を通して。お市ちゃんと腕たちが教えてくれた事全部書いてあるから」
「う、うん……なあ、そんなに深刻なのかい…?」
「だろうな。ありゃ相当だぞ」
小助と慶次のやり取りに政宗も加わった。どうやら先の不意打ちで受けた稲妻が想像以上に強い力を持っていたようで左手にもまだ若干痺れが残っている。
「さっきのは本人が意図して出したモンじゃなかったんだろ。大方、その稲妻が……あいつを、」
「当たり。っていうか、自覚してないのあの方」
「まぁあの性格じゃ、告げるのが吉か凶かわかったもんじゃねぇからな」
ちらりと朱音とお市の方へ視線を向ける。
心配そうにお市が朱音の手を握っている。別れの前の言葉を交わす二人を見守りながらも時間に迫られているが為に要点だけを話していく。
「本人は帰りたいとは言ってるけど…どうなるかはわからないから…」
「ンな、塞ぎ込んだ面すんなよ。俺らが居るんだから無事に決まってんだろ」
「……うん、信じさせて」
「任せておくれよ。あの子だって心を開いてくれたんだ!今度こそ…!」
「信じてるからね、朱音。ちゃんと、市のところにも帰ってきて…!」
「はい、お市様」
「ぜったいよ、朱音…っ」
最初に甲斐の屋敷で二人で話した時と同じ、控えめな力だけれども、温かみのある両の手に朱音は安らぎを覚える。どこまでも案じてくれるお市のためにも生きて戻る決心は最後まで捨てない、と。胸にしかと刻んで手を握り返した。
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