11.信じること
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「どうして戦う力がほしいと思ったの?ろくちゃん」
今日とて強引に街まで連れ出された少女。
連れ出した張本人の慶次といえば秀吉と通りで起こった喧嘩を諌める(一緒になって騒ぎたいだけかもしれないが)為に駆け出していった。そしてその隙を見計らったのかその女性は手の付けられない団子越しに少女の隣に腰掛けた。
「慶次がね、ひどく落ち込んでいたから。あまり困らせちゃだめよ」
「だれかを、まもる力がほしいんです……わたしは、よわい、から…」
「弱いままじゃだめかしら?」
「え…?」
「今の時勢は確かに争いで回っているけれど、本当に争いを無くす為には同じ力を使ってもきっと叶わないわ。だから、ろくちゃんはそのままでいてほしいの」
そんなの無理だ。もう二度と何も為せずに置いていかれるのが嫌で嫌で仕方ないというのに。反論する代わりに少女は深く俯いた。
「なら、ほかに、どうすればいいのですか…」
「最初は誰もが戦いを望んだわけじゃない。けれどこの相容れない諍いを終わらせるのはやり返すことじゃなくて……きっと、互いを許して、受け入れること」
「ゆるして、受け入れる…?」
「私達は皆おなじ人なんだから、いつか、きっとできると思うの。私はそう信じている」
「どうすれば、そんな世になるのですか、」
確証がない事だというのに、曇りなく言い切る彼女の強さに少女は魅かれた。けれど武力以外でなんて、どんな手段があるのか思いつかず素直に訊ねた。
「今の私達みたいに、ろくちゃんが私の言葉に耳を傾けてくれたように……相手と言葉を交わして、お互いを信じて、心を通わせることよ」
「ことば……」
言葉。信じる。
それらを受け入れるには少女の心の傷はまだ酷く憔悴していた。
最期の戦に赴く前の家族の約束の言葉と、信じた先の現実を真っ先に思い出してしまった。
けれど彼女の言う事は否定したくなかった。
いつかはそんな時代になってほしいと、少女も同じ願いを抱えているが故だろう。
「………わたしでは、それはできない、です」
「ろくちゃん…」
「だから、かわりに、わたしの分まで、おねねさんが…!たくさんの人とたくさんお話して、たくさん信じて、ください…!」
面食らったように彼女…ねねが少女を見詰めるが、すぐに安堵させる為の笑みを浮かべた。少女を自身の膝の上に抱き上げると、小さな背中ごと抱きしめた。
「………わかったわ。じゃあろくちゃんがまた、誰かをまた信じられるようになるまでは、私がいっぱい頑張ろうかな!」
力強い弾んだ声が背中越しに聞こえてくる。
武力は持たずとも、自分の芯を貫き、人と打ち解け合える事を信じるねねに、少女は確かに憧れていた。
本当の強さ、人がわかり合う為に必要なものを彼女はきっと知っている。
「ありがとう、ろくちゃん」
「どうして、わたしに、お礼を…?」
「ろくちゃんが、私を信じてくれてるから。本当に嬉しいの………いつになってもいい、待ってるわね」
「……あ、り、がと、う……、おねねさん…」
意図して使うのを避けていた、『他人と打ち解ける』この言葉を、久方ぶりに口にした。
争いのない世を信じたい。そう願う一心だった。
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