4.『名前』
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「名前でござる!」
「え、何。どうしたの旦那?」
唐突に声をあげた幸村に佐助はそう聞き返した。
「だから、名前だ!このおなごは記憶が一切ない。故に名すらもわからぬ。呼ぶ時に困るであろう!」
「…まぁ、確かにそうだけど…」
「だから名が必要になるのでござる!」
「う、うん……で、その名前は誰が決めんの?」
何だか幸村は目を爛々と輝かせ楽しそうだ。そんな様子を見て、聞かなくても確信ができているのだが、あえて佐助は言葉にする。
返答は案の定。
「俺と佐助で決めればよかろう!」
「ほら予想通り」
「何がだ?」
「いや、なんにも……まぁ実際決めないと困る訳だし」
じゃあ旦那はどんなのがいいの?、と問いかければ
「うむ…ここはお館様に、ちなんで――『館(やかた)』などどうであろう!!」
眩しい笑顔のまま幸村が提案し佐助の表情は凍りついた。
「それ、明らかにおかしいでしょ!」
ありったけの気力を込めて思い切り突っ込んだ。
いくらなんでもそれは酷い。
「な、何故だ佐助!お館様から館という字を拝借して――」
「この子は女の子!というかまずそれは人に付ける名前として相応しくない!それに呼ぶ時に『館』とか、『お館』とか大将と普通にかぶって紛らわしいでしょーがッ!!」
な ん と !
幸村の顔がこれでもかというほど驚愕に満ちる。
そして思案を噛みしめるように目をギュッと閉じて再び拳を握りしめている。
「確かにそうでごさるな…!でかしたぞ佐助!」
「でかしたっていうか、当たり前の事言っただけだし…」
(どんだけ大将好きなんだこの人…盲目すぎるだろ)
度の過ぎた、むしろ幸村固有の尊敬する師匠フィルターに理解できず佐助はため息をついた。
「では、なんという名にすべきであろうか…」
やがて、幸村が唸りだす。
いつのまにか少女は今度は二人の顔を交互に見ている。
本気で言葉がわかっていないのか自分にまつわる話の内容に何も踏み込んで来ず。興味深そうにきょろきょろ見ているだけだった。
やがて幸村が思いついた!とでも言いたそうな表情で口を開いた。
「……『団子』!」
「はい?」
「だから、団子という名はど「駄目に決まってんでしょーが!!」
「なに…!……ならば『餅』!」
「駄目ッ!!」
「『わらび』!」
「それも駄目ッ!!」
「『よもぎ』!『餡』!!」
「旦那、もう食べ物から離れて!」
「い、いやしかし…餡なら響きが辛うじて人らしくはないか!?」
「この流れで出たモンに納得できるかぁッ!」
自由奔放な幸村に佐助がうがーっと唸って頭を抱える。
どれも安易(?)な名前ばかりで、しかも甘い物だらけ。………幸村らしい『名前』ではあるが。
「ぬぅ、佐助ッ!先程から文句ばかり申すな!!お前も共に考えるのだ!!」
そして、逐一いちゃもん付ける佐助にも手伝わせるつもりらしい。
「長くなりそうだな…」
佐助は主のネーミングセンスに呆れつつ、結局付き合う事にした。
名前とはこの上なく大事なものだ。それをちゃんと知っているが故に。