2.目覚め
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
静かな空間だった。
そんな中、ゆっくりと、瞼を開く。
目の前の橙の髪の青年が、目覚めた彼女が《最初》に見たものになった。
*****
(起きた…!)
雑多な感情が混じる中かろうじて形容するならば、感動の瞬間。…少なくとも佐助本人にとってはそう感じたらしい。
2日程前、甲斐へと戻る途中に通った山で、佐助は一人の少女を拾った。
その少女は大怪我を負っており死の際寸前だった。
佐助はその少女を連れて甲斐へと戻り報告より何よりも先にすぐに薬師に少女を診せ、処置を施して貰い一命を取り止める事に成功した。
そのまま彼女はひたすら眠り続けて、やっと今この瞬間、目を覚ましたのだ。
場所は武田信玄が治める甲斐の躑躅ヶ崎館の一室。
まだ朝日がでて間もない頃だ。まだしっかり陽が届かないこの部屋の中はまだまだ薄暗い。
この少女の事も含め、本願寺で偵察した惨状の様子を報告した後、佐助はすぐにまた別の地へ諜報へ赴かねばならず、彼女の世話は無論経過を知ることも出来なかった。
しかし今回のものは短時間で終えられた仕事内容だったことが幸いか。今朝方帰り、また一通りの報告をし終え様子を見にいった時の出来事だった。
(え、だって女中の話だと今まで一度も目、覚まさなかったんでしょ?俺様一番乗りじゃ…!?)
少女の危険な状態を誰よりも知っていて、一応は接触もした佐助にとっては、目を覚ました事が本当に奇跡のように思えて珍妙な現象を目の当たりにしたかのような、妙な感覚に陥った。もちろん彼だけの内側に散在する多々の感情にもやや影響されているが。
それにしてもあの傷の深さ、出血量、顔色で本当によく目を覚ました、と思う。それもたったの2日でだ。
……まだ様々な疑惑は一切晴れていないけれど、ひとまず安心してもいいだろう。
(『必ず』…って言ってたな……だけど、本当にあの子、なのかな)