26.変化
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「――――燃えてる……」
いよいよ本能寺が視認できる距離までやってきたが、朱音はそう感想を溢した。
まさに言葉の通り、本能寺は炎上していた。
「織田信長は焼き討ちが大好きだからねぇ………あら?見張りの兵が―――いや、織田の兵が一人もいない…?」
高い木の上から寺を見渡す佐助の発見は一軍を驚かせた。
「確かに罠であるとわかってはいたが……一人もいねぇのか?」
下にいる小十郎が問うたが、佐助は首を横に振らなかった。
一軍は火が燃え移らない程度に距離を保ちながら本能寺の門前まで近づいた。バチバチと木材が弾ける音があちこちから聞こえてくる。薄暗い空に火の粉が無数の蛍火ように舞っている。
「目眩ましもしないとは……まさかもう終わっちゃったとか?」
佐助は冗談めかして言ったが朱音は異変に気付いた。そのまま本能寺の方へ凝視する。
「……いいえ。この先に居る!」
「え?」
大真面目な顔つきで突然言い放った彼女を佐助や小十郎、かすがは見遣る。
彼等を気にする余裕はなく、聞こえた“気配”を告げる。
「音は3つ……人が、斬り合いをしているような、刃の衝突する音が中からしていまする!」
それだけを早口に言って朱音は武田軍から拝借した例の獲物を取り身につけると、周りには目もくれず、寺の中へと駆け出していった。
「待て!一人で先走るな朱音!―――…猿飛、」
後を追おうとした小十郎が振り返り、佐助に視線を向けた。
少し曇った表情で、佐助はまだ諦めきれない、とでも言いたげだった。
だが、遂に決心したのか小さく笑った。
「……頼むよ、旦那。こっちに来るお二人は任せて」
「ああ、必ず連れていく」
ムスッとしたままかすがが続ける。
「朱音に妙な真似したら承知しないからな」
「テメェいい加減にしやがれ」
「さっさと行け右目―――朱音を独りにするな」
思いがけない言葉に小十郎は一瞬動きを止めたが、すぐに固く頷くと火の中へ駆け出していった。
残されたのは連合軍。政宗と幸村が来るのを待つ。
「……かすが、気付いてたんだ」
「当たり前だ。他愛のない会話でもすぐにわかる」
「どさくさ紛れに謙信サマの美しさについてをあの子に刷り込む事が他愛のない会話ねぇ」
「黙れッ――――――失ったのは、きっとずっと前のことだろう……だが、まだ癒えてはいない」
「………」
「お前が務めを忘れるほどに大切な人間が、主以外にいたとはな」
「そりゃあ、まぁ……ワケアリって事にしといて?」
「小助の言っていた通りだな」
「え?」
「『忍隊長殿が最近妙に人間臭い』だと」
「あんのおしゃべり野郎…」
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