25.理由
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「武器は普段何を使っていた?」
ああ、そうか。今の自分は丸腰も良いところだった。
小十郎の問いかけに朱音は少し昔の記憶を掘り起こす。その瞬間眩暈にも似た感覚がし、少しだけ過去を思い出すのを拒んでいる自分に気づいた。思わず瞳が暗く滲んだがすぐに答えた。
「えっと……刃を潰した刀一本と、薙刀……」
初めて聞いた武器装備例に思わず驚愕。
二刀流というべきか、それとも刀でないのならば二刃流というべきか。
バランスがどうの考える以前にそんな選択する人間は他にいるのだろうか。大体刃の潰した刀って一体なんなのか。最早刀と呼んでいいのか。
「…それは、本気か?」
「え?はい」
呆れた小十郎が確認してみても即答でだった。
その何事もない、といった様子に一体この少女はどんな経歴を持っているのだろう、と流石に少し興味を持ったのだった。
*
「問題があると思うんだよね」
「小助君?あ、その服かっこいいです」
久々に自ら乗る馬の調子をひかりと見ていた朱音は不意に現れた小
助に振り向いた。先程までとは違い黒色に近い忍装束を纏っている。彼の金髪と相成って映えるなぁと朱音は思う。そう告げると
「うはは、ありがと。これ俺の勝負服」
「あとね、ずっと思ってましたが…その髪も綺麗ですね」
「、この髪を褒めるとはまた……………ん、ありがと」
一瞬間が空いたものの、柔らかく微笑んでみせた小助はやがて自身が危惧している事を素直に告げる。
「で本題だけど…ほら、あいつ。……あの“世話好き”にとっちゃ朱音ちゃんの記憶が戻ったって伝えるのは……ちょっと混乱させちゃうかもしれないんだよね」
「佐助様ですか」
あら、とひかりが相槌を打つ。
しかし瞬時にその場にビシリと硬直した人間が一人。言わずもがな……朱音である。
「そもそも記憶があろうがなかろうがアイツは朱音ちゃんが本能寺に行くのには絶対反対するだろうな。そこで更に戻ったなんて知ったら…相当取り乱すんじゃねぇかなぁ…何考えてるかわかんねぇけど」
「あら、また忍らしくない事を」
「全くだな!」
「まぁ佐助様ですし、」
「佐助だし、」
あっはっは、と笑い飛ばし、するすると会話を進めて行くひかりと小助。
そう、幸村は政宗と共に先に発ったが武田軍属の忍隊長・猿飛佐助はまだこの躑躅ヶ崎館にいるのだ。今頃は大方お館様の容態でもみているのかもしれない。後で朱音もお館様を見舞いたいと考えているが……その前にこの問題が。
“佐助”
“佐助”
“佐助”
「さ……さ、ささ、…さッ…」
『朱音』のプライド:他者へは敬意を払うべし。
朱音のプライド:さしけ。
(い…如何にすべき…ッ!?)
己の中で大奮闘が始まり、嫌な汗をかいていれば、
「………ま、朱音ちゃん自身にも良い影響はなさそうだから、やっぱ暫く黙っといたほうが良いかな?」
見かねた小助が苦笑しながら述べた。
「そうですわねぇ」
ひかりも同調したところでひとまずこの話題は片付いた。
*
―――――佐助の注意をとりあえず朱音に向けさせない。そのためには他の事に意識を持っていくべく。
「その為には同じ忍たる俺が佐助にけしかけるのが一番イイと思うんだけども」
「けしかける…?」
馬の多手綱を引いて移動させながら小助は佐助の対処方法を朱音に提案し説明する。
「まず朱音ちゃんと接触させないのが一番確実。俺が今すぐあいつんとこ行って、先に一緒に本能寺に向かうっつーのが一番バレないんだろうけどさ……」
しかしそれではまたもや不都合が生じてしまうのである。
ふと、小助が難しそうな表情で朱音を見つめる。その理由がいまいちわからない朱音は首を傾げるが、ひかりが小助の言いたい事を察したらしい。
「朱音様の傍に居られない、という事ですね」
「…そう」
「、小助君…」
傍に居られないのであれば守ることもできはしない。これでは自分の目的と食い違ってしまう。そのため小助は渋ってしまっていた。
「小助君、…わたしは大丈夫です。それよりもやはり、…さ…ささ、さ、…」
「朱音ちゃん……」
「ごめんなさい…」
プライドって恐ろしい。なぜ自分はこんなにも厄介な性格なのだろうと朱音は溜め息をついた。
「……では、片倉様に朱音様の側に居てもらうよう、お願いするのは如何でしょう。小助様とは向こうで合流して……」
「うーん……それが、妥当かな」
「え…?あの、コ……小十郎様は屋敷に集まった連合軍の統率をされる方で、私なんかに注意を割くなんて!それに…」
「ああ大丈夫大丈夫。」
言葉を最後まで言わせず小助はヒラヒラと手を降った。
にっこり笑ったひかりも同調して言った。
「「貴女様ですから」」
「え、え…?」
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