24.今、そして未来を
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それがしは朱音。
わたしは――――『朱音』。
*
「お館様!目をお開け下され、お館様!!」
川下へやっとの思いで朱音達が辿り着けば、雨粒の音と共に幸村の絶叫が耳に飛び込んできた。
幸村は荒れ狂う水の中からお館様を助けだしてどうにかこの川下で引き上げていた。
二人ともひとまず無事でよかった。そう『朱音』は思うものの、お館様に駆け寄る事も幸村に声を掛けることすらも出来ずにいた。
己の内に渦巻く激しい混乱と葛藤を抑えるのに手一杯で、ただ黙って、焦点が危うく揺れる瞳で立ち竦んでいた。
お館様は目を開けない。
目を開けない。
「お館様!お館様!どうか、どうか……!」
幸村が泣きそうな声でお館様の身体を揺さぶり、ひたすら呼びかけ続ける。
そう、何度も、何度も、
『ちちうえ、ちちうえ…!いやだ…いや…!』
そんな姿さえも、『朱音』自身の癒えぬ過去と重なる。
大切に思う人が、また。
「……もう、誰かが、…いなくなるのは…」
俯いたまま、『朱音』は静かに呟く。消え入りそうな声は雨音に紛れて誰にも届かない。
「晴、信様……」
古い記憶の名を口にして、すっかり冷たくなった手で顔を覆った。
雨は止まない。
雨は降り続く。
また、重たい、雨が。
『朱音』は動けなかった。
そして、幸村もまた“同じ”だった。
「お館様、お館様ぁ…!!」
「………」
そんな朱音からも幸村からも離れた場所にいる政宗と小十郎もまた、黙って二人を見つめる事しか出来なかった。
.