1.はじまり
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木々が複雑に入り乱れている山の奥深く。視界は薄暗い。油断をすれば道なき道にあっという間に飲み込まれよう。
入り乱れる木々に反するようにとても閑散とした場所である。元より人々があまり利用しない。人が食糧にできる実や草は少なく、時折目にする獣は只の人で到底太刀打ちできそうにない威厳を放っている。それゆえに忍のような一目を避けたい者や事情をよく知らない旅の者が迷い込むように通る程度の場所だ。
そんな場所を吹き抜ける風が木の葉を揺らす音に混じって木々を飛びうつるように移動していくのは、武田軍所属の忍――猿飛佐助。
忍にしては――――忍でなくてもとても目立つ橙色がかった髪を風に流されるままに揺らして、手慣れた軽い動作でどんどん前へと迷いなく進んでいく。一刻も早く自らの領内へ、主の元へと向かうために。
(織田に背いた本願寺の者達が討たれた……ついに情勢が大きく動きだしたんだ)
時は戦国乱世。
武力により様々な者が天下統一を目指し刃を振るう時代。
そんな中で近頃急速に勢力をのばしてきているのが――自らを第六天魔王と称する織田信長率いる、織田軍である。
残忍
非道
無慈悲
数日前に織田軍に焼き討ちにあったという情報が入り、偵察に赴いた先の惨状はそれに尽きた。
「いずれにせよ…」
織田とは、いつかは自分の所属する武田とも渡りあう事になるのだろう。天下を狙う以上は決して避けられはしない。
いくた自分が内心非難しようが嘆いていようが、やって来るものはやって来る。
運命は巡る。
もし、第六天魔王の手に自分の主達が本願寺軍の者達のように討たれたら……
身体は自然と本能に従った。一瞬だけ、身震いがしたのだ。
――――そんな事、あってほしくないなぁ
「…とりあえず、大将の所へ急ぎますかね」
暗くなる思考はこの森の中が薄暗いせいだ。そう決めつけて強制的に思考を遮断した佐助は、甲斐に向かう足を更に速めようとしたその時、前方からの異臭に気付いた。
(……血の匂いだな)
人か獣か。
仮に何処かの忍や間者で生きていたのならば何かの情報を聞き出すのに好都合だ、と。
その匂いの元を突き止めるべくそちらへ足を向けた。
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