17.爆発
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「何故おひとりで、それも寝巻きのままお外へ赴いたのです!外の砂や汚れが服に付きお布団に付きそして朱音様の御身体の中に入り込み大小様々な病に掛かったらどうするのです!また床に伏せるおつもりですか!?」
陣羽織に血の模様を描いていた伊達政宗は今頃ある程度の処置は終わり床間に伏せている頃合だろうか。
朱音は佐助に『竜の旦那が気になるならせめて寝間着から着替えといで』と言われ一旦部屋に戻った。
そして部屋の中で待ち構えていたのはまた一人で飛び出した朱音の身を案じたひかりだった。お館様たちの帰還と共に新たに迎える大勢の他の軍の人々が屋敷に暫く滞在することになったので朱音が混乱したり、不安になったりしてはいまいかと懸念しての行動であったがまたしても間に合わなかった。
そんな彼女は現在鬼の如き表情で目的の少女を見つめている。何も言わないからこその威圧が朱音を縮こまらせた。
普通に寝巻きのままでは夜風に当てられて風邪を引くと言えば良いのに……開口一番に些か遠回しでズレた説教をかまされた。
眉をへの字にしつつちょっぴり正座の刑を経験した。
部屋を出る事自体を禁じられていたわけではなかったので裏柳色の上着に真っ黒な袴に着替えると朱音は再び部屋を出た。
ぺたぺたと少し冷たい廊下の上で足を進めて目的の場所へと向かう。
角を曲がって歩いてまた曲がって歩いて。幾つか角を曲がった先に居たのは、
「…幸村、お館様!」
「おお!朱音!そなた…!」
「大声出すでない、幸村。独眼竜が眠っておる。朱音もじゃ」
「…ッ!、申し訳ございませぬ…!」
「、すみませぬ…」
慌てて口をつぐんだ幸村に、また注意されしゅんとした朱音。連続で怒られるのはあまり好きではない。
「……朱音も行くか?」
そんなお館様の低い柔らかい声色にす、と朱音は頭を上げて答えた。
「は、はい…!」
今この躑躅ヶ崎館に身を寄せているのは先の長篠の戦いに於いて傷ついた数多の兵達。
家紋、軍門に拘らずにお館様は戦で傷ついた者には全て手を差し伸べたのだ。そんなことをすればもちろん武田の負担になるであろうに、迷わずやってのけたお館様は本当に器の大きい人だ。
そして今幸村達が向かっているのは前々から幸村が嬉々として語っていた好敵手の元。
だから勿論朱音も気にはなるというもの。
二人と共に歩きながら朱音も前々からその『こうてきす』の事が気になっていたため人物像を妄想したりしていた。
やがて政宗の眠る部屋の前に来た。
襖を開けると部屋には土色の背中とその奥、例の伊達政宗が横たわっていた。政宗の顔色は血の気が失せて、とても良いとは言い難い。
「………!」
部屋の中にはお館様だけが入り、幸村と朱音は開けられたままの襖を挟んで廊下で事の運びを見守る事になった。
お館様と土色の陣羽織――政宗の腹心、片倉小十郎が身体は政宗に向けたまま話し始めた。
「手厚き処遇、感謝申し上げる」
「命は取り止めたようじゃな。じゃがかなりの血を失うておる。口から流し込めるものを支度させておる故、摂らせてやるがよい」
「…恩に着まする」
小十郎は礼儀正しくお館様にゆっくり頭を下げた。
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