13.心配と信念
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「な……!?」
躑躅ヶ崎館に戻ってまず耳に入ったのは他国の忍に数名侵入され、
その内二人を返り討ちにしたという少女の話だった
*
「…それで」
「結果的にその二人は隙をみてさっさと自殺しちまったらしい。身体が毒で麻痺してた奴もいたのに、舌咬んで……ていうか、これは武田(ウチ)の失態だけどさ」
それにしてもよくやるよなぁ、とのんびりとしたような声色で『報告』をするのは、少年の幼さを残す顔立ちをした一人の忍だった。
「残りの侵入者は騒動を察して退いただろうって……まぁ逃げられたってわけ」
「……」
「どうした、忍隊長さん?」
「小助、朱音は」
忍隊長もとい佐助は、苦虫を噛み潰したかのような表情で、自分の主と同い年の同士に問いかける。
同士、と表された小助はそんな佐助を表情を無視して普通に答えた。
「まだ起きて無かった。」
「……」
「つーか、多分だけどその二人の内、どっちかがヘマして朱音ちゃんに見つかったと思うんだよな。だってほら、確かにやんちゃな子だけど朱音ちゃんから人に手を出すわけないし。…ああ。アンタに対してだけはよく喧嘩腰になるらしいけど?」
うははー、と笑ってみせる小助にピキリ、と少し苛立ちつつも、佐助は確認をする。
「……で、その事は確かな訳?」
事実の確認を何より急いでいる佐助を察して小助は笑顔なままだったが、少しだけ真剣な雰囲気を漂わせながら話す。
「…ああ。朱音ちゃんしか考えられない。ひかりさんは怪我してるし、元からそういう備えはないだろ。侵入者には斬り傷じゃなく殴られたみたいな打撲痕が目立ったし」
小助は先に見聞きして把握している情報を流れを推察も交えながらつらつらと話す。
「あの場に第三者がいてソイツが倒したっていうのも低そう。だーれも名乗り出ねぇしこっちの身内なら黙ってる理由がないし、朱音ちゃんの木刀を借りたとしても効率悪くね?まぁ丸腰だったのならあるいは、か」
「確かに、ね……。でもあの子は忍二人も倒せる程の体力や力なんて―――――」
「んで、」
それでも、まるで認めたくない、とでも言うように無意味な反論をしようとした佐助の言葉を、小助は決定打を打つべく遮った。
「見つけられた時の朱音ちゃんは全身痙攣状態で倒れてたんだ。ちょっとだけ意識が戻った時も自力じゃ指一本動かせなかったって」
「―――ッ!」
それを聞いた途端、佐助の表情が目に見えて一層険しくなった。
「……朱音は今、自分の部屋?」
「うん」
聞くが否や、佐助はすぐさま小助を横切ってその場を駆け出た。
その背中に「いってらー」とからかうように付け加えたが、既に小助に意識がない佐助は振り返らなかった。
そして小助は一人その場に残された事なる。
「ほ~ら。やっぱり行くんじゃねぇか」
呆れてるらしい。
それにしても真田忍隊長ともあろう者があそこまで感情を表に出すとは珍しい、と首を捻る。
(いっつも、へらへらしてる癖に)
それにしても佐助をそんなにまでする朱音は一体どんな存在なのだろうか。
前に一度聞いてみたこともあったが、案の定佐助ははぐらかしてばかりで何も教えてくれなかった。
(幸村様や他の人等はみんな初対面っぽかったし、なら佐助が幸村様に仕える前からの関係?)
考えたって仮説を立てたって、それが真実か確かめられる方法は今のところはない。
(ま、その内わかるだろ)
小助は背もたれ代わりの柱に身体を傾け、佐助が向かって行った方向を少しだけ険しい表情で眺めていたところに、
「お主であったか、小さき佐助」
「小助、です。お館様」
話し声を聞きつけて自室から姿を現したお館様。
冗談もほどほどにまじっ、と小助を見詰つめるものだから奇妙な沈黙が訪れた。
「……あの、なにか御用すか?」
「ふ~む……まぁ、話しておこうかの。まだ確信まではしていないのじゃが。お主の意見も聞いてみようかの」
こちらへ来い、とお館様が手招きをした。
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