12.記憶
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目を覚ますと視界に入ったのは灰色の襖だった。
「…ん……」
ぼけっとしている頭を上体を起こして無理矢理覚醒させると、ここはいつもの自分の部屋だと朱音は気づいた。
目を覚ましたところで本日の記憶の整理をする。
朝、鯉を掴んだ。胴着が濡れた。朝餉を食べた。
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おわり。
「はて…」
なんとも充実しない一日なのだろう。だいたいまず今は何時なのだろうか。どれだけ眠りに落ちてしまっていたのだろうか。
外の状況が気になって、朱音は襖をススス…と開けた。
「……わからないでござるな」
空は一面、雲に覆われていた。
だから部屋の中も薄暗かったのかと一人納得する。
とりあえず誰かに会って時間だけでも確認をしよう。そう思って部屋を出ようとした所で朱音はいつも自分の傍にあるものがない事に気づいた。
「…木刀……!」
本日の一大事こと鯉を素手掴みする直前、池の脇に置いた覚えがある。
朱音は飛び出して一直線に走って行った。
(幸村がそれがしにくださった木刀なのに…!)
「朱音様……?」
眠っているはずの朱音の様子を見に来たひかりと丁度入れ違う形になった。
(何処に行かれたのでしょうか……また屋敷の中を探さなくては…)
ひかりも部屋を出ると朱音の捜索を始めた。
突っ掛け草履を履いた足で玉砂利を踏みしめていく。
(木刀…木刀…!どうか池にあってくだされ…!)
部屋から今朝の池のまでの長い距離を急ぐには、体力の戻りきっていない朱音には少々堪える。
急ぐ気持ちも相成って身体が硬くなっているのか、途中から歩いたり走ったりを繰り返しながら向かわざるを得なかった。
焦ってばかりで、完全に治りきらない自分の身体が恨めしく思えた。
やっとの思いで池が見える最後の角を曲がった。
(―――見つけた!)
今朝自分が置いた所と変わらない、池のすぐ脇に木刀はあった。
視界に捉えてようやく安心すると身体の力みが抜け、落ち着いて足を進めていく。
朱音は帯刀してはいけない時と場所を覗いて、基本一日中持って行動しているほど木刀がお気に入りだ。
朱音にとって木刀は、自分の好きな音が鳴る玩具のようなもの。いつだって持っていたい。
その木刀まであと20歩程度の距離になった。
そこで気づいた。
朱音から見て池の僅かに奥、塀に沿う木々のひとつが不自然に揺れた。
そちらへ自然に意識を向けると、恐らく人……ひとり分の気配を感じた。
そこそこ高所の位置にあるようだ。
そういえばと。朱音は以前木に登ってみようとした所を佐助に発見され、危ないだの破廉恥だの言い争いになった事を思い出した。