10.幸村
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「…全く、何をしておったのだお前達は!」
「「……」」
「何とか言うでござる!!」
場所は変わって躑躅ヶ崎館内の何処かの和室のひとつ。
上座に当たる場所に胡座を掻いた幸村がいて、その正面に彼と向き合う形で正座を組まされている人物が二人。
正座の二人は何故か両頬を腫らしており、若干ふてくされた暗い雰囲気を纏いながら俯いている。
勿論、その二人とは朱音と佐助なのだが。朱音は更に涙目になって木刀を抱えているし、佐助に至っては何やら全体的に脱力したような、いわゆる抜け殻状態である。
所謂、幸村からのお説教を受けた。つい最近までは自分がたしなめ、叱りつける立場の筈だったのに何故逆転しているのだろうか……と、現在減給を突き付けられている佐助は、ぎすぎすの状態の心で意識をはせる。
「佐助!」
幸村の声に反応しビクッと身体がはねた。
「は、ハイハイハイ!わかりましたからもうケンカなんてしませんから!ホントに生活が辛くなるからこれ以上給料を引くのは勘弁してくだ―――」
たいそうなうろたえようだ。佐助は減給が本当に嫌…というか怖いらしい。名前を呼んだだけでこの有り様だ。
あの場で幸村は、ちょっとこっちで話を聞かせろ、と二人に言い、その際に佐助には減給刑で脅してこの場でも少々言及しただけだというのに。
「……いや、それはもう良いが…まだ発たなくて良いのか」
脅しだったのだから減給は本気ではないのだが……そこまで怯えられるとは思わず。
他の忍の任務では何でも嫌がる素振りなんて一切見せないで確実にこなすというのに、それほどまでに減給が嫌なのか。むしろそれこそが彼の絶対の弱点なのかもしれない。
相変わらず求めてもいない謝罪と、更には言い訳らしきものをぺらぺら喋り続ける佐助に、幸村の顔がひきつる。
そんな幸村の様子にも気づかずお構いなしのようだ。
言葉で足りぬなら身体を動かすのみ。幸村は立ち上がり佐助側まで行き耳を引っ張った。
「駿 府 は 良 い の か !!」
瞬間、バッ!と条件反射のように佐助の体が大きく跳ねるように立ち上がった。
「ハイハイ!!行ってきます忍んできます!!頑張ります!だから!」
減給はやめて!と叫びながら瞬きをする間に佐助は姿を消した。
どうやらやっと駿府へ向かったらしい。
いつもなら人の耳元で喋るなだの言われなくとも行くだの文句垂れるのに随分と素直に行ったものだ。
そんな佐助が面白かったのか幸村は今度また減給を突き付けてからかってやろうかと、つい考えていた思考を一旦止めると部屋に残ったもう一人の膨れっ面に向きなおった。
彼女にもまだ対して叱っていないのだがそんな全力で木刀を抱えられていても……なんだか自分が悪者のような気がしてきた。
後から泣きそうになるくらいなら初めからよせばいいものを、と幸村は小さくため息を吐いた。
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