第2章 九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神
その頃、球磨は天草に到着していた。有明海を一望できる丘に立地する孤児院へ急ぎ、坂道を上って行った。
院の近くまで進むと人だかりが見え、球磨は益城院長や子供達が危ない!?と人混みの中をササッとくぐり抜けた時、思いがけない女性と再会した。
「え・・胡桃・・・なのか?なんでこんな所に?それにその姿は・・・・」
球磨は出会った時と全く姿が変わった胡桃に目を疑った。彼女は眼鏡を外し、艶やかな化粧をしていた。さらに、肩を露出した銀白の絹の着物は女神のような姿に見え、周りの者は目を奪われていた。
「あら?球磨さん、お久しぶりですね。私は今、天草の民に『トワ・パライソ』の教えを伝えているのですよ」
胡桃は背中まで伸びる栗色の髪をなびかせながら、たおやかな口調で説いていた。球磨は彼女の変貌に驚きを隠せなかったが、気を引き締め「これはどういうことだ」と問い詰めた。
「本当に胡桃なのか・・・?まさか、ツクモの野郎に何かされたのか?」
球磨が彼女の元に近づこうとした時、彼に相当する体格の信者達が間に入り込んだ。彼らは、剛勇な球磨でさえ振り払えないほど強い力で両腕や肩を押さえつけた。
「は・・離しやがれ!!!」
球磨は体を激しく振わせながら信者の濁った瞳をじっと見ると、まるで心を何者かに支配されているようで、生気さを感じなかった。先ほど胡桃の姿を見た時も、清らかな瞳だったが、瞳と心の奥からは血の通った意志や優しさを感じ取れなかった。
(こいつらといい、胡桃もやはりツクモの野郎に心酔している・・・・)
孤児院の皆も心配だ。早くこの場をやりすごさねーとな)
球磨は隙を突き、長い足を高く上げ、大男の顔につま先蹴りを喰らわせ気絶させた。信者達は球磨の攻撃に一瞬怯みながらも反撃しようとした。しかし腕っ節の強い球磨に先手を取られ、手も足も出なかった。胡桃は目の前で乱闘している球磨達に「お止めなさい!!」と強く叫んだ。
「ここには孤児院の子供達も居ます。私は今、子供達に『トワ・パライソ』の素晴らしさを説いているのですよ。ただ・・ここの院長様が留守にしているのは残念ですけど」
(益城院長は孤児院には居ないのか?)
球磨は、益城がトワ・パライソの信者にはなっていないと安心した。しかし一方、孤児院は今、大変な事が起きているのに、何処へ行ったのだろうと気がかりでならなかった。球磨は不在の益城に代わり、胡桃や目の前で棒立ちして見ている民に、険しい表情で公言した。
「皆!!良く聞いてくれ!!『トワ・パライソ』は表向きでは民に楽園を創生すると言っているが、信者共は教祖の命で、別府の鬼の里を襲ったり、宇土の武家屋敷を焼き払おうとしたんだぜ!!そんなえげつない宗教を信じては駄目だ!!」
民達は球磨の必死な説得に動揺していたが、胡桃は「この男の戯言を信じてはなりません!!」と説得を続ける球磨の前に立ち遮った。球磨は彼女の肩を掴み忠告した。
「目を覚ましてくれ、胡桃!!君はツクモの野郎に利用されている。あいつは、君の学者になりたいという意志につけ込み、女神として民に崇められる広告塔にしようとしている」
球磨は必死に胡桃を説得したが、彼女は首を横に振り反論した。
「ツクモ様は、私の夢を叶えてくださるのよ!!それと、ツクモ様は全ての民を争いの無い永遠の楽園に創造するとおっしゃっていましたわ。この戦国乱世は教祖様が終わらせてくださるわ」
胡桃は再び民達の前で演説すると同時に、多くの民が彼女の言葉に胸を打たれ、拍手が鳴り響いた。
そして怒りの矛先は球磨に向けられ、民達は一斉に彼に襲いかかろうとした。
「球磨さん、これ以上ツクモ様に楯突くようでしたら、裁きを受けてもらいますわ!!」
「く・・胡桃をここまで洗脳するとは・・・ツクモの野郎・・・絶対に許せねぇ!!!!」
球磨の怒りは胡桃よりもツクモに向けていた。農具を持って襲ってくる民達に球磨は手出しが出来ず、避けるか武器を奪い壊し対処したが、洗脳された民達を相手にするのに手こずっていた。無慈悲な瞳で苦戦している球磨を見ている胡桃の隣に、いつの間にかツクモが出現した。
「予想通りの展開になったとね。それでも球磨君は健気に戦っているとね。実に面白いけん」
ツクモは優雅な姿で高みの見物をしていると、胡桃は少し思い悩みながら彼に質問した。
「彼を天草におびき出したのはツクモ様の策ですか?」
ツクモは悪びれもせず、心地良い表情で答えた。
「本気姿の球磨君を見たいと思ったけん。彼は強く優しい性格だから、護りたい者が沢山あるとね。特に天草には彼が育った孤児院があるから、絶対に来るだろうと予想的中とね」
ツクモは他にも何か企んでいるかのような含み笑いを浮かべていた。
院の近くまで進むと人だかりが見え、球磨は益城院長や子供達が危ない!?と人混みの中をササッとくぐり抜けた時、思いがけない女性と再会した。
「え・・胡桃・・・なのか?なんでこんな所に?それにその姿は・・・・」
球磨は出会った時と全く姿が変わった胡桃に目を疑った。彼女は眼鏡を外し、艶やかな化粧をしていた。さらに、肩を露出した銀白の絹の着物は女神のような姿に見え、周りの者は目を奪われていた。
「あら?球磨さん、お久しぶりですね。私は今、天草の民に『トワ・パライソ』の教えを伝えているのですよ」
胡桃は背中まで伸びる栗色の髪をなびかせながら、たおやかな口調で説いていた。球磨は彼女の変貌に驚きを隠せなかったが、気を引き締め「これはどういうことだ」と問い詰めた。
「本当に胡桃なのか・・・?まさか、ツクモの野郎に何かされたのか?」
球磨が彼女の元に近づこうとした時、彼に相当する体格の信者達が間に入り込んだ。彼らは、剛勇な球磨でさえ振り払えないほど強い力で両腕や肩を押さえつけた。
「は・・離しやがれ!!!」
球磨は体を激しく振わせながら信者の濁った瞳をじっと見ると、まるで心を何者かに支配されているようで、生気さを感じなかった。先ほど胡桃の姿を見た時も、清らかな瞳だったが、瞳と心の奥からは血の通った意志や優しさを感じ取れなかった。
(こいつらといい、胡桃もやはりツクモの野郎に心酔している・・・・)
孤児院の皆も心配だ。早くこの場をやりすごさねーとな)
球磨は隙を突き、長い足を高く上げ、大男の顔につま先蹴りを喰らわせ気絶させた。信者達は球磨の攻撃に一瞬怯みながらも反撃しようとした。しかし腕っ節の強い球磨に先手を取られ、手も足も出なかった。胡桃は目の前で乱闘している球磨達に「お止めなさい!!」と強く叫んだ。
「ここには孤児院の子供達も居ます。私は今、子供達に『トワ・パライソ』の素晴らしさを説いているのですよ。ただ・・ここの院長様が留守にしているのは残念ですけど」
(益城院長は孤児院には居ないのか?)
球磨は、益城がトワ・パライソの信者にはなっていないと安心した。しかし一方、孤児院は今、大変な事が起きているのに、何処へ行ったのだろうと気がかりでならなかった。球磨は不在の益城に代わり、胡桃や目の前で棒立ちして見ている民に、険しい表情で公言した。
「皆!!良く聞いてくれ!!『トワ・パライソ』は表向きでは民に楽園を創生すると言っているが、信者共は教祖の命で、別府の鬼の里を襲ったり、宇土の武家屋敷を焼き払おうとしたんだぜ!!そんなえげつない宗教を信じては駄目だ!!」
民達は球磨の必死な説得に動揺していたが、胡桃は「この男の戯言を信じてはなりません!!」と説得を続ける球磨の前に立ち遮った。球磨は彼女の肩を掴み忠告した。
「目を覚ましてくれ、胡桃!!君はツクモの野郎に利用されている。あいつは、君の学者になりたいという意志につけ込み、女神として民に崇められる広告塔にしようとしている」
球磨は必死に胡桃を説得したが、彼女は首を横に振り反論した。
「ツクモ様は、私の夢を叶えてくださるのよ!!それと、ツクモ様は全ての民を争いの無い永遠の楽園に創造するとおっしゃっていましたわ。この戦国乱世は教祖様が終わらせてくださるわ」
胡桃は再び民達の前で演説すると同時に、多くの民が彼女の言葉に胸を打たれ、拍手が鳴り響いた。
そして怒りの矛先は球磨に向けられ、民達は一斉に彼に襲いかかろうとした。
「球磨さん、これ以上ツクモ様に楯突くようでしたら、裁きを受けてもらいますわ!!」
「く・・胡桃をここまで洗脳するとは・・・ツクモの野郎・・・絶対に許せねぇ!!!!」
球磨の怒りは胡桃よりもツクモに向けていた。農具を持って襲ってくる民達に球磨は手出しが出来ず、避けるか武器を奪い壊し対処したが、洗脳された民達を相手にするのに手こずっていた。無慈悲な瞳で苦戦している球磨を見ている胡桃の隣に、いつの間にかツクモが出現した。
「予想通りの展開になったとね。それでも球磨君は健気に戦っているとね。実に面白いけん」
ツクモは優雅な姿で高みの見物をしていると、胡桃は少し思い悩みながら彼に質問した。
「彼を天草におびき出したのはツクモ様の策ですか?」
ツクモは悪びれもせず、心地良い表情で答えた。
「本気姿の球磨君を見たいと思ったけん。彼は強く優しい性格だから、護りたい者が沢山あるとね。特に天草には彼が育った孤児院があるから、絶対に来るだろうと予想的中とね」
ツクモは他にも何か企んでいるかのような含み笑いを浮かべていた。