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第2章  九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神

その頃、胡桃は南肥前、島原半島の雲仙岳の麓にそびえ立つ豪奢な宮殿の入り口で辺りを見回していた。胡桃の他にも、宮殿にははるばる山頂まで登った反豊臣政権の大名や商家の者、そして、九州の民達も多く宮殿に来て、感激で涙を流していた。円形の屋根に外観と大理石で出来た庭は左右対称のローマで流行しているルネサンス様式で造られている。日ノ本の他にも世界の歴史や建築様式に興味津々の胡桃は瞳を輝かせながら、幾何学模様の壁をじっくりと調べていた。その時、アーチ状の黄金の扉から、金髪の奇抜な着物の青年が胡桃の前に現れた。
「トワ・パライソの本拠地へようこそ。学者を目指す、才色兼備の胡桃殿」
ツクモは彼女をここまで護衛した信者の兵士に報酬金を渡した。胡桃は彼らに礼を言ったが思いとどまり。
「あの・・・ツクモ様、これはあくまでも施設の見学だけで、まだ信者になると決めたわけでは。父と母には何も告げずに来てしまったし・・・」
ツクモは優しく微笑みながら彼女のうつむいて、前髪が額にかかったのを静かにかきあげた。そして、大きな手で彼女の顎をくいっと上げた。
「それでも、親に黙ってここまで来たと言うことは、ここで学者を目指したいという志があるというと見えるとーね。」
ツクモのかんらん石のような美しい瞳で胡桃の心を見据えていた。胡桃自身も歴史学者になりたいという夢を捨てきれず、ツクモの元で働けば宮殿の書物館で本を読み研究が出来る。太宰府の書庫には置いてない本なども、ここでは数え切れないほど置いてあるという。胡桃は女性でも学者になれるほどの知識を培いたいと欲が出てきた。
「はい。私は小さい頃から歴史学者を目指していました。ですが、女は学者にはなれない、女は嫁に行き夫を支える者だと言われました・・・ですが、ここに居れば、性別、種族、家柄も関係なく何にでもなれるのですね」
胡桃は考えが変わり、トワ・パライソの信者になりたいと決めた。
「心配することはなかとね。信者になったからと、ずっと宮殿の中に居なくてもよかね。実家に戻りたかったら戻っても良いし。その時に親に我が楽園の事を説明すれば、一緒に信者になってくれるとーね♪」
ツクモは、新しい希望を持った胡桃を宮殿内部に案内した。その時、珠姫と美羅がツクモの前に現れ、それぞれ報告した。
「ツクモ様には何の脅威にはなりませんが、ここ最近、我々の民を操る計画を邪魔する者達が現れていますわ。わたくしが会った神官の男からは未知の力を感じました・・・」
続いて美羅が頬を少し赤くしながら報告した。
「あたしが会ったのは、富士山麓の森精霊の渋いおじ様と眼鏡の可愛い顔の男性でした。それでも、ツクモ様の美貌には到底敵いませんですけど♪」
「任務ご苦労様けん。邪魔者がどういう者か分かっただけでも、大収穫とーね。2人はゆっくりと休むとね」
ツクモは何も動じずに陽気な口調で2人を労った。珠姫は通路に置いてあるギリシャの神話の神々の彫刻を興味深くに見ている胡桃の存在に気がつき、彼に尋ねた。
「ツクモ様・・・あの熱心な娘は、新しい信者ですか?」
「ツクモ様ずるいですよー、私たちに黙って可愛い妻を迎えるなんてー!!」
2人は風変わりな姿をした胡桃を見るなり、ツクモに質問攻めをした。しかし、ツクモは慌てること無く2人の口に指を当て、答えた。
「彼女は妻ではなかとーね。ただ、考古学者になりたい夢を叶えたいために、信者になったとね。妻は珠姫と美羅とつるぎの3人たい!」
2人はそうなのですねとあっさりと納得し、熱心な胡桃に気さくに話しかけ、宮殿内を案内した。ツクモは彼女たちにお辞儀をしている胡桃を見て何かを企んでいた。
(彼女にはトワ・パライソの広告塔になってもらうとね。これを彼が知ったら、どう思うのか楽しみとね。厳美君の言っていた御伽勇士の炎の加護を持つ戦士、球磨君)
ツクモはこれから面白くなりそうとニヤニヤと笑っていた。彼の額に埋め込まれている紅玉が妖しく光った。


                        第4話  完
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