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第2章  九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神

数日後、球磨は肥後国に戻り、トワ・パライソの情報収集をしていた。しかし、町の人は皆、宗教団体に夢中で、ひたすらツクモを賞賛する言葉ばかりだった。球磨はツクモに会ってから胡桃とは会えないままでいた。果たして彼女には学者になるために宗教の力が必要なのか?と深く考えていた。
「俺がとやかく言える事では無いが・・・あいつは本当に胡桃を学者にする気はあるのかだぜ・・・」
球磨は宇土の港から美しい青緑色の有明海が広がる島原湾をぼーっと眺めていたが、いつまでも物思いにふけっている場合では無いと思い場所を移動した。球磨が島原湾を去ったと同時に、中型の商船が入港した。中には紅史郎とツクモの妻の1人、つるぎが乗っていた。
「本当にこれで民達が検地を受け入れてくれるだろうか・・・」
成政は秀吉に、早く九州の民をまとめられたと分からせる為に、急いで検地を進めると決めていた。しかし、そう簡単に反秀吉の大名や民は認めはしないだろうと、ツクモは考えた。成政に米を納めた分、トワ・パライソから素敵な褒美が来たり、幹部にして楽な生活を送らせる事を条件に、急な検地を納得させようとしていた。それは、成政には知らされていない、ツクモの秘策だった。
(米が升よりも越えたら、直接トワ・パライソに送るとよかとーね。信者が米を受け取るとね)
紅史郎は本当に上手く行くかなと考えていた。成政がツクモの言われるがままに、検地を早める事を。しかし、つるぎは動じること無くツクモと姉達を信じていた。
「ツクモ様と姉上の考えは絶対だ。成政殿も優位に事を進めることが出来るだろう」
紅史郎は姉上の考えは絶対という彼女の言葉が気になり、さりげなく尋ねた。
「つるぎは姉上の考えだと言っているが、自分の意見を言うことはあまりないのかい?」
つるぎは彼の質問に対し、腰に下げている西洋の細剣の柄を握りながら淡々とした口調で答えた。
「私は学が乏しい上、戦うしか能力が無い。まじないは珠姫姉さん、策略は美羅姉さんに任せてしまうのだ」
「そうなのか・・・でも、僕が言うのは変だと思うが、たまには自分の意見を主張するのも良いと思うよ。夫のツクモはともかく、2人は君のお姉さんなのだから」
紅史郎の純粋な気遣いに、つるぎはほんの少し顔が赤くなった。しかしすぐにそっぽ向いて答えた。
「確かにそうだが、私は、ツクモ様はもちろん、姉上達にも大変感謝をしている。私が今こうして生きているのは姉上達が頑張ってくれたからだ」
「・・・つるぎ」
「深刻な顔をするな、紅史郎。肥後国の国衆がツクモ様に納税をしたいと言ってきた。彼らの居城へ行ってみよう」
つるぎは凜々しい表情に戻り、心配をしている紅史郎に先を急ごうと促した。
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