第2章 九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神
2人は由布の話を聞くと、モトスは西洋用語に慣れない顔をしながら質問をした。
「その・・・とわ・ぱらいそ?という宗教団体はいつから出来たのですか?」
「・・・ここ数日前だ。これまで九州は豊臣軍による平定が終わった後、安泰であったが、その宗教が現れてから不穏な動きをしておる。我々鬼の一族にも影響が出ぬといいのだが・・・」
由布とモトスはこれからの対策を考えていると、千里は何か来る!!と辺りを見回した。数は数十人。足並みは遅いことから、大きな武器を持っている事が分かった。モトスは遠くから火薬の匂いがすると感じた。大砲が放たれたと同時にモトスは精霊のハネを出現させ、無数の風の刃を放ち、飛んでくる大砲弾を粉々に破壊した。温泉郷に被害が出ないように爆風を風の力で吹き飛ばした。
「最後の通告だぜ!!鬼の女頭領さんよ!!この地を出て行かなければ温泉郷ごと大砲で吹き飛ばしてやるぜ!!」
「く・・・貴様らは大友家に仕えていた侍達か?大友を見限り、今度は胡散臭い宗教の信者に成り下がったか!!」
「胡散臭くねーぜ。教祖様はこの地に保養所を作れば、我々を幹部にしてくれる。それに、トワ・パライソは種族差別もしない。鬼だろうと何だろうと信者歓迎だぜ」
「たわけ者が!!鬼の一族は貴様らに下らぬし、この地も汚させぬ!!わらわが相手になろうぞ!!」
由布は先端に7色に輝く水晶玉が装飾された杖を装備すると、モトスと千里は不適に笑い、互いに背中合わせになり武器を構えた。
「ここは俺たちに任せてください。由布殿は先の戦いで動けなくなった鬼達をよろしくお願いします」
「・・・自然を汚そうとする輩は許せません。それに奴らには聞きたい事も沢山あります」
「やはりお主ら頼もしいな・・・兄者と戦ったらどちらが強いのかのう?」
由布は一瞬、銀の髪の巨大な斧を持った逞しい男性の姿を脳裏に浮かべた。するとモトスは尋ねた。
「兄者・・・とは?」
「いいや・・・昔の話だ。それではよろしく頼む!!」
由布は倒れている鬼達を回復させるためにその場を離れた。
「お前達2人で俺ら複数を相手に出来るかな?この鏡で鬼ともども、兄ちゃん達を退治するところを写して、ツクモ様に見せて褒美を貰うぜ!!」
侍達は2人に攻撃を仕掛けた。千里の放つ無数の岩石とモトスの彩りの花びらを帯びた嵐が合わさり、複数の敵を吹き飛ばした。モトスは敵の懐から見える奇妙な鏡が妖しい光を出している事に気がついた。
「あの鏡を奪い壊せば、奴らは正気に戻るか?」
2人は俊敏な動きや、砂や花粉などの目くらましの技を放ち鏡を奪い取った。そして、武器で鏡を粉々に割った。すると、侍達は鏡の呪縛から解放されたのか気を失いその場に倒れた。
その後も休むこと無く2人の剛と華の息の合った戦法で敵を正気に戻した。
「調子に乗るな!!これでも喰らいやがれー!!!!」
侍大将は手に持つ大きさの筒を2人に目掛けた。筒からは火炎放射が放たれた。モトスの放つ毒粉や花びらは、いとも簡単に燃やされた。
「く・・・南蛮渡来の新兵器か・・・」
モトスと千里は四方八方に火炎を避けているが、このままでは温泉郷の木々に火が行ってしまうと気がかりでならなかった。すると、血の池地獄から熱湯が侍大将に襲いかかった。由布が念力で熱湯を自由自在に動かしていた。
「あ・・・あちぃ!!!!!あちぃ!!!!!」
侍大将は高温の熱湯を浴び、火炎放射が弱まった。千里はその隙に大筒の口に岩を投げ詰め、使用できないようにした。そして無防備になった敵の腹部に拳を喰らわせ、さらに、モトスの強烈な蹴りが顔に炸裂した。
「自然を破壊する兵器を使うからバチがあたったのだぞ!!」
「さぁ、言いなさい。教祖というのは何を企んでいるのか・・・・」
侍大将はモトスに羽交い締めにされ、千里に鎖鎌の先端を喉に突き指された。
「わ・・・分かった。教えるから・・・命だけは・・・・」
男は懐から鏡を取り出そうとした時、少女のような声に遮られた。そして侍大将の鏡は割れたと同時に気を失い倒れた。
「全く・・・役に立たない侍大将ね・・・。あたしが直接出向くことになったわよ。あら、ごきげんよう。挨拶が遅くなったけど、あたしの名前は美羅よ。トワ・パライソの女神の1人よ」
銀の髪の小柄な女性が呆れながら言うと、由布は警戒し彼女を睨み付けた。
「貴様が、魔鏡を操っていたのか!!」
「魔鏡とは失礼ねー。これは、民達が乱世でも面白おかしく楽しめる幸福の鏡よ。自分の楽しいことや、素敵だと思うことを鏡に写して、それを我が教祖様に見せると、素敵なご褒美を与えられるのよ」
美羅が悪びれること無く愉快な口調で説明すると、千里はさらに問い詰めた。
「それで、彼らに過激な行動をさせていたのですね」
「それはこの人達の心の乱れとか認めて貰いたいという欲求で起きた事よ。あたしが操っていたわけではないわ。それより、別府に教祖様の保養所を作りたいの。だから、さっさと出て行ってくださる?鬼のお・ば・さ・ん」
「ほう・・・随分と減らず口を叩く小娘だこと。とは言っても小娘の可愛いさを感じさせない性格と歳だな。出向いてきた以上、みすみす逃すとは思うな!!」
由布は杖を美羅に向け、水晶から虹色に光る帯を出現させ女を拘束させた。しかし、女の姿は手鏡に変化した。
「逃げられたか・・・この者は鏡で分身を作っていたのだな」
モトスは渋い顔をしながら鏡を拾った。千里も鏡に操られて気を失っている侍達を介抱した。
「教祖とは一体・・・とりあえず、この鏡の使用は危険ですね・・・」
「まぁ、これに懲りてこやつらも鏡には手を出さぬだろう。しかし・・・美羅とかいう小娘がこれから先、何を仕掛けてくるか・・・」
モトスは今後また鬼の温泉郷が襲撃に遭うか心配だったので、もう少し護衛をすべきかと訪ねると由布は首を横に振った。
「モトスと千里よ。お主達のおかげで鬼の里は救われた。もうわらわ達で大丈夫だ。お主達は阿蘇を超え肥後に向かうと良い。そこで仲間達と合流できると思うぞ」
2人は承知しましたと応え、邪悪な者の侵入を防ぐお香と聖なる砂を由布に渡し、その場を後にした。2人は湯布院から九州の険しい山々が並ぶ九重連山を越え、阿蘇から肥後国へ向かった。
その頃、球磨は肥前の平戸から筑前の博多まで行き、胡桃に会おうとしていた。作ったカステイラを持って彼女の長屋を尋ねた。しかし玄関の前に人影を見たので、球磨はとっさに木の陰に隠れた。すると、昨日に平戸で会った奇抜な格好の男が胡桃と話していた。
「それでは、トワ・パライソの信者になることをゆっくりと考えるとね。君程の才色兼備な女性が世に出られないとはとても残念たい」
「もったいなきお言葉をツクモ様・・・。ただ・・・今しばらくお時間を頂けないでしょうか?」
「よかよか♪トワ・パライソはいつでも君のことを待っているとーね。何も強制はせんとー」
ツクモは笑顔で玄関を出て胡桃と別れた。すると木の陰に隠れていた球磨は、ツクモを呼び出し険しい表情で彼の着物を掴みながら問い詰めた。
「やはりお前はトワ・パライソとかいう宗教団体の教祖だったのかよ!!」
しかし、ツクモは堂々と包み隠さず認めた。
「バレちゃったとーね。まぁ、隠しているつもりは無かったけん。そう、余が教祖たい」
「胡桃を信者にするとそそのかしたのか!!」
怒っている球磨とは正反対にツクモは冷静に悪びれることなく答えた。
「聞いていなかったかね?強制はしていないと。信者になるのは彼女次第。彼女が自分の力か、我が力を借りて学者になるかは本人が決めるとね」
「・・・・く・・」
球磨が悔しがりうつむいていると、ツクモは面白がるように彼の顔をのぞき込みながら質問した。
「胡桃ちゃんの事が好いとーね?顔に出てるけん」
「・・・な・・お前!!たぶらかすんじゃねー!!」
「彼女に好意を寄せているのなら、彼女の夢を応援するのも愛情とね。それと、君には彼女以外にも護りたい者があるのだろう?」
ツクモの言葉に球磨はこれ以上何も言えなかった。するとツクモは笑顔で球磨に別れの挨拶をした。
「君も良ければトワ・パライソの信者になってはいかがかな?球磨君くらいの実力者なら即幹部になれるとね♪」
球磨はそんな者には入らないと否定する間もなく、ツクモはいつの間にか姿を消した。球磨は彼を不信に思いながら、トワ・パライソの事をじっくりと調べようと考えていた。
(胡桃はあいつの所に行っちまうのか・・・・?)
同時に、知り合って間もない胡桃のことがとても気がかりだった。
第3話 完
「その・・・とわ・ぱらいそ?という宗教団体はいつから出来たのですか?」
「・・・ここ数日前だ。これまで九州は豊臣軍による平定が終わった後、安泰であったが、その宗教が現れてから不穏な動きをしておる。我々鬼の一族にも影響が出ぬといいのだが・・・」
由布とモトスはこれからの対策を考えていると、千里は何か来る!!と辺りを見回した。数は数十人。足並みは遅いことから、大きな武器を持っている事が分かった。モトスは遠くから火薬の匂いがすると感じた。大砲が放たれたと同時にモトスは精霊のハネを出現させ、無数の風の刃を放ち、飛んでくる大砲弾を粉々に破壊した。温泉郷に被害が出ないように爆風を風の力で吹き飛ばした。
「最後の通告だぜ!!鬼の女頭領さんよ!!この地を出て行かなければ温泉郷ごと大砲で吹き飛ばしてやるぜ!!」
「く・・・貴様らは大友家に仕えていた侍達か?大友を見限り、今度は胡散臭い宗教の信者に成り下がったか!!」
「胡散臭くねーぜ。教祖様はこの地に保養所を作れば、我々を幹部にしてくれる。それに、トワ・パライソは種族差別もしない。鬼だろうと何だろうと信者歓迎だぜ」
「たわけ者が!!鬼の一族は貴様らに下らぬし、この地も汚させぬ!!わらわが相手になろうぞ!!」
由布は先端に7色に輝く水晶玉が装飾された杖を装備すると、モトスと千里は不適に笑い、互いに背中合わせになり武器を構えた。
「ここは俺たちに任せてください。由布殿は先の戦いで動けなくなった鬼達をよろしくお願いします」
「・・・自然を汚そうとする輩は許せません。それに奴らには聞きたい事も沢山あります」
「やはりお主ら頼もしいな・・・兄者と戦ったらどちらが強いのかのう?」
由布は一瞬、銀の髪の巨大な斧を持った逞しい男性の姿を脳裏に浮かべた。するとモトスは尋ねた。
「兄者・・・とは?」
「いいや・・・昔の話だ。それではよろしく頼む!!」
由布は倒れている鬼達を回復させるためにその場を離れた。
「お前達2人で俺ら複数を相手に出来るかな?この鏡で鬼ともども、兄ちゃん達を退治するところを写して、ツクモ様に見せて褒美を貰うぜ!!」
侍達は2人に攻撃を仕掛けた。千里の放つ無数の岩石とモトスの彩りの花びらを帯びた嵐が合わさり、複数の敵を吹き飛ばした。モトスは敵の懐から見える奇妙な鏡が妖しい光を出している事に気がついた。
「あの鏡を奪い壊せば、奴らは正気に戻るか?」
2人は俊敏な動きや、砂や花粉などの目くらましの技を放ち鏡を奪い取った。そして、武器で鏡を粉々に割った。すると、侍達は鏡の呪縛から解放されたのか気を失いその場に倒れた。
その後も休むこと無く2人の剛と華の息の合った戦法で敵を正気に戻した。
「調子に乗るな!!これでも喰らいやがれー!!!!」
侍大将は手に持つ大きさの筒を2人に目掛けた。筒からは火炎放射が放たれた。モトスの放つ毒粉や花びらは、いとも簡単に燃やされた。
「く・・・南蛮渡来の新兵器か・・・」
モトスと千里は四方八方に火炎を避けているが、このままでは温泉郷の木々に火が行ってしまうと気がかりでならなかった。すると、血の池地獄から熱湯が侍大将に襲いかかった。由布が念力で熱湯を自由自在に動かしていた。
「あ・・・あちぃ!!!!!あちぃ!!!!!」
侍大将は高温の熱湯を浴び、火炎放射が弱まった。千里はその隙に大筒の口に岩を投げ詰め、使用できないようにした。そして無防備になった敵の腹部に拳を喰らわせ、さらに、モトスの強烈な蹴りが顔に炸裂した。
「自然を破壊する兵器を使うからバチがあたったのだぞ!!」
「さぁ、言いなさい。教祖というのは何を企んでいるのか・・・・」
侍大将はモトスに羽交い締めにされ、千里に鎖鎌の先端を喉に突き指された。
「わ・・・分かった。教えるから・・・命だけは・・・・」
男は懐から鏡を取り出そうとした時、少女のような声に遮られた。そして侍大将の鏡は割れたと同時に気を失い倒れた。
「全く・・・役に立たない侍大将ね・・・。あたしが直接出向くことになったわよ。あら、ごきげんよう。挨拶が遅くなったけど、あたしの名前は美羅よ。トワ・パライソの女神の1人よ」
銀の髪の小柄な女性が呆れながら言うと、由布は警戒し彼女を睨み付けた。
「貴様が、魔鏡を操っていたのか!!」
「魔鏡とは失礼ねー。これは、民達が乱世でも面白おかしく楽しめる幸福の鏡よ。自分の楽しいことや、素敵だと思うことを鏡に写して、それを我が教祖様に見せると、素敵なご褒美を与えられるのよ」
美羅が悪びれること無く愉快な口調で説明すると、千里はさらに問い詰めた。
「それで、彼らに過激な行動をさせていたのですね」
「それはこの人達の心の乱れとか認めて貰いたいという欲求で起きた事よ。あたしが操っていたわけではないわ。それより、別府に教祖様の保養所を作りたいの。だから、さっさと出て行ってくださる?鬼のお・ば・さ・ん」
「ほう・・・随分と減らず口を叩く小娘だこと。とは言っても小娘の可愛いさを感じさせない性格と歳だな。出向いてきた以上、みすみす逃すとは思うな!!」
由布は杖を美羅に向け、水晶から虹色に光る帯を出現させ女を拘束させた。しかし、女の姿は手鏡に変化した。
「逃げられたか・・・この者は鏡で分身を作っていたのだな」
モトスは渋い顔をしながら鏡を拾った。千里も鏡に操られて気を失っている侍達を介抱した。
「教祖とは一体・・・とりあえず、この鏡の使用は危険ですね・・・」
「まぁ、これに懲りてこやつらも鏡には手を出さぬだろう。しかし・・・美羅とかいう小娘がこれから先、何を仕掛けてくるか・・・」
モトスは今後また鬼の温泉郷が襲撃に遭うか心配だったので、もう少し護衛をすべきかと訪ねると由布は首を横に振った。
「モトスと千里よ。お主達のおかげで鬼の里は救われた。もうわらわ達で大丈夫だ。お主達は阿蘇を超え肥後に向かうと良い。そこで仲間達と合流できると思うぞ」
2人は承知しましたと応え、邪悪な者の侵入を防ぐお香と聖なる砂を由布に渡し、その場を後にした。2人は湯布院から九州の険しい山々が並ぶ九重連山を越え、阿蘇から肥後国へ向かった。
その頃、球磨は肥前の平戸から筑前の博多まで行き、胡桃に会おうとしていた。作ったカステイラを持って彼女の長屋を尋ねた。しかし玄関の前に人影を見たので、球磨はとっさに木の陰に隠れた。すると、昨日に平戸で会った奇抜な格好の男が胡桃と話していた。
「それでは、トワ・パライソの信者になることをゆっくりと考えるとね。君程の才色兼備な女性が世に出られないとはとても残念たい」
「もったいなきお言葉をツクモ様・・・。ただ・・・今しばらくお時間を頂けないでしょうか?」
「よかよか♪トワ・パライソはいつでも君のことを待っているとーね。何も強制はせんとー」
ツクモは笑顔で玄関を出て胡桃と別れた。すると木の陰に隠れていた球磨は、ツクモを呼び出し険しい表情で彼の着物を掴みながら問い詰めた。
「やはりお前はトワ・パライソとかいう宗教団体の教祖だったのかよ!!」
しかし、ツクモは堂々と包み隠さず認めた。
「バレちゃったとーね。まぁ、隠しているつもりは無かったけん。そう、余が教祖たい」
「胡桃を信者にするとそそのかしたのか!!」
怒っている球磨とは正反対にツクモは冷静に悪びれることなく答えた。
「聞いていなかったかね?強制はしていないと。信者になるのは彼女次第。彼女が自分の力か、我が力を借りて学者になるかは本人が決めるとね」
「・・・・く・・」
球磨が悔しがりうつむいていると、ツクモは面白がるように彼の顔をのぞき込みながら質問した。
「胡桃ちゃんの事が好いとーね?顔に出てるけん」
「・・・な・・お前!!たぶらかすんじゃねー!!」
「彼女に好意を寄せているのなら、彼女の夢を応援するのも愛情とね。それと、君には彼女以外にも護りたい者があるのだろう?」
ツクモの言葉に球磨はこれ以上何も言えなかった。するとツクモは笑顔で球磨に別れの挨拶をした。
「君も良ければトワ・パライソの信者になってはいかがかな?球磨君くらいの実力者なら即幹部になれるとね♪」
球磨はそんな者には入らないと否定する間もなく、ツクモはいつの間にか姿を消した。球磨は彼を不信に思いながら、トワ・パライソの事をじっくりと調べようと考えていた。
(胡桃はあいつの所に行っちまうのか・・・・?)
同時に、知り合って間もない胡桃のことがとても気がかりだった。
第3話 完