第2章 九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神
その頃、早朝の豊後国別府港。モトスと千里は真田昌幸の命により、九州の偵察を始めていた。2人は大阪港から旅客船で別府港まで来た。
「長い船旅であったな、千里。森や山育ちの俺には海路は未知の体験であったよ」
「瀬戸内海を通ったので所々に島がある分、海に慣れていなくても安心感はありましたね」
モトスは海が無い甲斐国で生まれ育ったので、初めて海を見て感動していた。千里も九州は初めて来たと、顔には出さないものの興味津々に辺りを見回していた。
「九州は球磨さんの出身地ですね。海と山の自然が豊かで、南蛮貿易で最先端の地でもあると、彼が言っていました」
「名所や温泉も多そうだな。任を果たしたら、真田家の皆を連れて行きたいな」
モトスと千里は別府の町を散策していると、民達の不思議な行動を目にしていた。千里は、彼らが持っている銀の手鏡が気になっていた。
「あれは・・・装飾からして南蛮の鏡でしょうか?随分と高価そうですが・・・商人だけでは無く、百姓も持っていますね」
鏡を持った民達は、自分の姿を見ているのはもちろん、屋台の食べ物や、飼っている犬や猫など、手鏡を色々な物に向けて遊んでいた。モトスと千里は旅人と偽り、近くに居た百姓の男に尋ねた。
「その手鏡で何をしているのだ?」
モトスが尋ねたとき男は、彼の森精霊の特徴である耳の尖りと菱形の瞳を見て、富士山麓の森精霊だ!!と感激していた。
「あんた!!森精霊のハネをだせるべか?」
「ああ。出来るが・・・それがどうしたのだ?」
「ちょうどよかった!!おっと・・・先を越される前に、おらの田んぼまで付いてきて欲しいんだ!!」
モトスは訳も聞けずに戸惑っていたが、千里はついていけば何か分かるかもしれないと、彼に告げた。2人は男に案内され中心街から少し離れた広い田畑に着いた。罠であることも想定し、モトスは直ぐに毒粉を出現させられるようにし、千里も袖に隠してある小刀を出す準備をしていた。しかし、男は予想外の頼み事をモトスにしてきた。
「この手鏡を持って空を飛んで、この田んぼを写して欲しいんだ!!礼は後でするべ!!」
この鏡で田んぼを写す?モトスは渡された手鏡を、装飾が美しい以外は何の変哲の無い鏡だが・・・とまじまじと見ていた。とりあえず、何もしなければ謎が分からないので、言うとおりにした。モトスは背中に念を込めて、翡翠のような輝きの蝶のハネを出現させた。男はハネの美しさに感動をしていた。
「おお!!これが甲斐国の森精霊のハネ!!あそこは自然も多くて映える(ばえる)場所が多いと聞いたから、是非とも行ってみたいべ。百姓も自由に土地を移動できればいいのになー」
ばえる?千里は聞き慣れない言葉に首をかしげていた。モトスは空高く舞い上がり、田んぼを見渡すと、熊や犬、猫などの動物の絵に見えるように稲刈りがしてあった。後に田んぼアートと言われる一種の芸術である。
「これは・・・お都留や小精霊に見せたら、驚くだろうな・・・と感心している場合では無かったか」
モトスは手鏡を田んぼの絵に向けた。すると鏡からは一筋の美しい光が現れ、絵を照らした。それと同時に、鏡の裏側の紅玉が妖しく光った。モトスには紅玉に見覚えがあった。
(これは・・・梅雪が耳に付けていた物と・・・似ている?)
穴山梅雪・・・数年前に武田の残党狩りで甲斐国を支配しようと企んでいた者。そして、望まぬ形で生まれてしまった哀しき森精霊。だが、彼の過去の憎しみや妬みなど全て受け入れ、彼は美しき森精霊として救われ、最期を迎えた。モトスは彼や穴山一族を不幸に陥れた闇の一族が許せなかった。
モトスが紅玉を不信に思っていると、男は大声で彼を呼んだ。
「もう降りて大丈夫だーよ!!これで、美羅ちゃんからステキと評価されて握手できるべさ♪」
「美羅ちゃんとは?それに、その鏡は一体どうしたのですか?」
千里が眼鏡を光らせながら男に問い詰めた。
「そっか!!旅人には渡されなかったのか・・・。この鏡はなぁ」
男は鏡のことを説明した。これは、鏡のような輝きを持つ童顔の女性美羅が、日頃仕事を頑張っている商人や百姓、女性や子供にまで、たいそう高価な手鏡なのに無料で配っていた。
「お金は要らないわ。この鏡で映える姿や物や景色などを写せば良いのよ♪」
と女性は告げるだけで、直ぐにその場を立ち去る。男はあざとさと艶やかさを併せ持つ美羅に首ったけ状態だった。モトスと千里は心の中で明らかに胡散臭いなーと思っていた。
「だから、他の奴には負けねーだ!!おらが最初に美羅ちゃんと握手をして、教祖様に信者にしてもらうんだー!!」
男はかなり燃えていた。モトスと千里はこれ以上ここに居てもしょうがないと、「急いでいるのでこの場を後にする」と告げ、その場を去った。
「あの者・・・教祖と言っていたが、宗教でも流行しているのだろうか?」
「あの鏡と関係している事には違いはありませんね。それに、モトスさんもお気づきの通り、あの紅玉はもしかすると・・・」
「これは下手をすると豊臣政権が危ういな・・・色々と調べて回ろう」
しばらく、モトスと千里は別府周辺で情報収集をしたその時、行商人から色々な話を聞いた。
「ここから山奥へ進んだところに、地獄巡りの地があるんだが・・・そこで鬼退治に向かっている町人が沢山居るんだよ。地獄の温泉郷に住む鬼達は争いを好まない優しい種族なんだが・・・」
行商人が不思議に思いながら2人に教えた。
「もしかしたら、町人はこの鏡で鬼退治をしている姿を映そうとしているのかもしれないな」
「そうですね・・・僕達には関係ないかもしれませんが、放っておく訳にはいかないですね」
モトスと千里は行商人に礼を言い、別府の山奥、地獄の温泉郷へ向かった。
「長い船旅であったな、千里。森や山育ちの俺には海路は未知の体験であったよ」
「瀬戸内海を通ったので所々に島がある分、海に慣れていなくても安心感はありましたね」
モトスは海が無い甲斐国で生まれ育ったので、初めて海を見て感動していた。千里も九州は初めて来たと、顔には出さないものの興味津々に辺りを見回していた。
「九州は球磨さんの出身地ですね。海と山の自然が豊かで、南蛮貿易で最先端の地でもあると、彼が言っていました」
「名所や温泉も多そうだな。任を果たしたら、真田家の皆を連れて行きたいな」
モトスと千里は別府の町を散策していると、民達の不思議な行動を目にしていた。千里は、彼らが持っている銀の手鏡が気になっていた。
「あれは・・・装飾からして南蛮の鏡でしょうか?随分と高価そうですが・・・商人だけでは無く、百姓も持っていますね」
鏡を持った民達は、自分の姿を見ているのはもちろん、屋台の食べ物や、飼っている犬や猫など、手鏡を色々な物に向けて遊んでいた。モトスと千里は旅人と偽り、近くに居た百姓の男に尋ねた。
「その手鏡で何をしているのだ?」
モトスが尋ねたとき男は、彼の森精霊の特徴である耳の尖りと菱形の瞳を見て、富士山麓の森精霊だ!!と感激していた。
「あんた!!森精霊のハネをだせるべか?」
「ああ。出来るが・・・それがどうしたのだ?」
「ちょうどよかった!!おっと・・・先を越される前に、おらの田んぼまで付いてきて欲しいんだ!!」
モトスは訳も聞けずに戸惑っていたが、千里はついていけば何か分かるかもしれないと、彼に告げた。2人は男に案内され中心街から少し離れた広い田畑に着いた。罠であることも想定し、モトスは直ぐに毒粉を出現させられるようにし、千里も袖に隠してある小刀を出す準備をしていた。しかし、男は予想外の頼み事をモトスにしてきた。
「この手鏡を持って空を飛んで、この田んぼを写して欲しいんだ!!礼は後でするべ!!」
この鏡で田んぼを写す?モトスは渡された手鏡を、装飾が美しい以外は何の変哲の無い鏡だが・・・とまじまじと見ていた。とりあえず、何もしなければ謎が分からないので、言うとおりにした。モトスは背中に念を込めて、翡翠のような輝きの蝶のハネを出現させた。男はハネの美しさに感動をしていた。
「おお!!これが甲斐国の森精霊のハネ!!あそこは自然も多くて映える(ばえる)場所が多いと聞いたから、是非とも行ってみたいべ。百姓も自由に土地を移動できればいいのになー」
ばえる?千里は聞き慣れない言葉に首をかしげていた。モトスは空高く舞い上がり、田んぼを見渡すと、熊や犬、猫などの動物の絵に見えるように稲刈りがしてあった。後に田んぼアートと言われる一種の芸術である。
「これは・・・お都留や小精霊に見せたら、驚くだろうな・・・と感心している場合では無かったか」
モトスは手鏡を田んぼの絵に向けた。すると鏡からは一筋の美しい光が現れ、絵を照らした。それと同時に、鏡の裏側の紅玉が妖しく光った。モトスには紅玉に見覚えがあった。
(これは・・・梅雪が耳に付けていた物と・・・似ている?)
穴山梅雪・・・数年前に武田の残党狩りで甲斐国を支配しようと企んでいた者。そして、望まぬ形で生まれてしまった哀しき森精霊。だが、彼の過去の憎しみや妬みなど全て受け入れ、彼は美しき森精霊として救われ、最期を迎えた。モトスは彼や穴山一族を不幸に陥れた闇の一族が許せなかった。
モトスが紅玉を不信に思っていると、男は大声で彼を呼んだ。
「もう降りて大丈夫だーよ!!これで、美羅ちゃんからステキと評価されて握手できるべさ♪」
「美羅ちゃんとは?それに、その鏡は一体どうしたのですか?」
千里が眼鏡を光らせながら男に問い詰めた。
「そっか!!旅人には渡されなかったのか・・・。この鏡はなぁ」
男は鏡のことを説明した。これは、鏡のような輝きを持つ童顔の女性美羅が、日頃仕事を頑張っている商人や百姓、女性や子供にまで、たいそう高価な手鏡なのに無料で配っていた。
「お金は要らないわ。この鏡で映える姿や物や景色などを写せば良いのよ♪」
と女性は告げるだけで、直ぐにその場を立ち去る。男はあざとさと艶やかさを併せ持つ美羅に首ったけ状態だった。モトスと千里は心の中で明らかに胡散臭いなーと思っていた。
「だから、他の奴には負けねーだ!!おらが最初に美羅ちゃんと握手をして、教祖様に信者にしてもらうんだー!!」
男はかなり燃えていた。モトスと千里はこれ以上ここに居てもしょうがないと、「急いでいるのでこの場を後にする」と告げ、その場を去った。
「あの者・・・教祖と言っていたが、宗教でも流行しているのだろうか?」
「あの鏡と関係している事には違いはありませんね。それに、モトスさんもお気づきの通り、あの紅玉はもしかすると・・・」
「これは下手をすると豊臣政権が危ういな・・・色々と調べて回ろう」
しばらく、モトスと千里は別府周辺で情報収集をしたその時、行商人から色々な話を聞いた。
「ここから山奥へ進んだところに、地獄巡りの地があるんだが・・・そこで鬼退治に向かっている町人が沢山居るんだよ。地獄の温泉郷に住む鬼達は争いを好まない優しい種族なんだが・・・」
行商人が不思議に思いながら2人に教えた。
「もしかしたら、町人はこの鏡で鬼退治をしている姿を映そうとしているのかもしれないな」
「そうですね・・・僕達には関係ないかもしれませんが、放っておく訳にはいかないですね」
モトスと千里は行商人に礼を言い、別府の山奥、地獄の温泉郷へ向かった。