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第2章  九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神

肥後の国、佐々成政の居城の広い庭園が見える一室で、ツクモは座りながら腕を伸ばしたり曲げる運動をしていた。アジア大陸インド国から伝わったヨガという運動である。ツクモが優雅に体を伸ばしていると、部下の美羅が失礼しますと明るい声で部屋に入ってきた。
「美羅か。何か楽しい策を考えとったのかね?」
「ツクモ様、あたしの策で民達を愉快に操ってみせますよ。成政殿にもお伝えしてよろしいですか?」
「いいや、成政には何も言うな。成政は余の言うことだけを聞いていればよい。それよりも策は何かね?」
ツクモがヨガを止め、美羅に尋ねると彼女は小さい手鏡を懐から出した。その裏には美しく妖しい光を放つ紅玉が埋め込まれていた。
「この手鏡を使います。これで、男どもは畑仕事をそっちのけで、鏡に映した物にのめり込んでしまいますよ♪」
「それはとても愉快たい」
美羅はツクモの部屋を出て行った。縁側を歩いていると成政とすれ違った。美羅は楽しげに彼に挨拶をした。
「お主は確か、ツクモに仕える美羅だったな。ツクモと何を話していたのだ?」
「あたしの名前を覚えていてくださりとても嬉しいです、成政様!!ツクモ様にヨガというインドの運動を教えてもらっていました。体が伸びて、疲れた体をほぐせますよ♪」
「ほう、今度俺も教えて貰おう。いやな・・・ここのところ、秀吉から肥後でも太閤検地を実行しろと勅令がきたので、早く実行すべきかと悩んでいたのだよ・・・」
太閤検地とは、田畑の広さや収穫量を調査すること。そして、隠し畑や不正な年貢の取引などが無いように豊臣政権下の大名が調査をしに来るものである。成政は、肥後国を治め続けるには、一応は功績を挙げなければと、いつ実行すべきかと悩んでいた。すると美羅は彼の柔らかい髪を上げ、耳元で囁いた。
「九州にはまだ秀吉の施策に賛成していない大名も少なくないですよ。ここは少し様子を見てから実行してはどうですかー?」
美羅があざとく微笑んで去ろうとした時に、成政は彼女に待て!!と引き留めた。
「お主は・・その・・・見た目は幼く見えるが、小娘という歳ではなさそうだな・・・。実際のところいくつなんだ?」
成政は何故、自分がそんなことを聞いたんだ?と頭を抱えると、美羅は素直に答えた。
「女の子に歳の事を聞くなんて野暮ですよ!!まぁ、とっくにお酒は飲める歳だけど、ちなみにツクモ様よりお酒強いですよ~。それでも成政殿とは親子ぐらい離れる歳だとおもいますよー♪それじゃあね~」
美羅は手を振って成政と別れた。呆然としている成政の顔を見て、美羅は少し微笑んでいた。
(ふふふ。成政様可愛い~♪・・・まぁ、あたしったら、ツクモ様の妻なのに・・・他の男性と戯れるなんて・・・でも、お父さんかぁ・・・)
美羅は成政に対する特別な感情がほんの少し芽生え始めていた。

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