第2章 九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神
その頃、湘と紅史郎は宇土の町を散策していた。湘は港町での交易や武器の出回りなどを密かに調査をしていた。しばらく、船着き場を歩いていると、紅史郎は漁師たちに話しかけられた。
「あんたは確か・・・暁家の次男坊じゃないかい?大友家が衰退しているそうじゃねーか?新しく仕える大名は見つかったかい?」
「心配してくれてありがとう・・・。今は佐々成政殿に仕えているよ」
紅史郎は苦笑いをして漁師たちに答えた。
「それにしてもここ数十年、煉太郎を見ないのだが、どうしちまったんだろうなぁー?」
「・・・・それは・・分かりません」
紅史郎が戸惑っていると、湘は彼に都合の良くない話が振られたと察した。そして、とっさに紅史郎は少し貧血を起こしたようだと嘘をつき、直ぐにその場を離れさせた。港町から少し離れた武家屋敷が並ぶ街で、湘は彼に兄が居たのか?と尋ねた。
「・・・僕には兄が居たのですが・・・体が弱くてよく床に伏せていました・・・。」
紅史郎は湘に兄の事を話した。暁家は数十年前に本家と分家の争いにより分裂した。その時に、本家当主だった父は毒殺され、母も分家の者から逃げる最中、雇われた荒くれ者達に殺害された。そして、兄の煉太郎は分家の養子にはなれずに、宇土の港町で浮浪児として働いていたが突然姿を消した。
「僕は、暁家の分家の養子となり、豊後の大友家に仕えていたけど、兄を見捨ててしまったのですよ。久しぶりに再会したときに、兄に合わせる顔がなかった・・・」
煉太郎兄さんは僕に一緒に暮らそうよと言ってくれた。だけど、僕が一緒に豊後へ行こうと連れて行くべきだった・・・。
紅史郎は深く悔やんでいると、湘は彼に優しい言葉をかけた。
「しかし、煉太郎殿は体が弱くても、家を追い出されても、君と再会するまで一生懸命1日1日を生きていたのであろう。優しくて逞しい兄君ではないか」
湘が紅史郎を励ますと、そうだ!!とひらめいた。
「私の友人に、各地を旅している暴れ牛・・いいや、暑苦しい傭兵がいるのだが、その者に煉太郎を知っているか尋ねてみるのも良いな、その者は優しいから君に協力をしてくれるよ、きっと。」
湘は球磨の自信満々な笑顔を思い出しながら、紅史郎に言った。
「その人って確か、天草出身の強き傭兵、球磨殿かな?会ったことは無いけど、何でも荒くれ者達を懲らしめたり、各地の戦に雇われては弱き者を助け、炊き出しなどをしていると聞いたよ」
紅史郎は瞳を輝かせていた。彼は球磨に強い憧れを抱いているのだ。球磨の正体が本当の兄とは知らずに。
「しかし・・・球磨殿はどこに居るか分からない・・・九州へ来ていると良いけど」
「その者はもしかしたら近くに居るかもしれないな。・・・何となくそんな感じがする」
湘は淡々と口にしたが、球磨の事をとても信頼していると紅史郎には分かった。
「湘さんと球磨殿は仲が良いのか?」
「とんでも無い。あんな暴れ牛とは良く言い争いケンカになる。だが、切っても切れない宿命で結ばれているのかもしれないな」
湘は球磨以外にも3人の気を感じ取っていた。おそらく桜龍もモトスも千里も九州へ来ているみたいだ。きっと、九州で何かが起こるのかもしれない。湘は肥後に来て、気になっていた事を紅史郎に聞いてみた。
「そういえば、街を歩いているときに・・・・」
湘が言葉を続けようとした時、暁家の使用人が紅史郎の元へやってきた。
「紅史郎様、探しましたぞ!!成政殿が合わせたい人物が居ると申しておりましたので、早くお戻りくださいませ!!」
「湘さん、お話中のところ申し訳ない・・・。湘さんは今日泊まる所は決まっているか?もし良ければ暁家の館に招待するよ」
紅史郎と使用人は快く誘うと湘は、宿は決まっているので大丈夫と断った。
湘は紅史郎と別れた後、深く考えていた。
(町を歩いていた時に、教祖やら寄付金だのと耳にしたのだが、紅史郎殿は何か知っているかと聞きたかったのだが・・・私としたことが、散策や話に夢中でその話題を出すことを忘れていた・・・)
湘は後日、暁家を訪ねて、紅史郎に聞いてみようと考えながら、宿に向かった。
夕方、紅史郎は佐々成政の居城で、成政に呼ばれ部屋に行った。
「紅史郎に紹介したい男が居る。入れ」
質素な造りの中広間には、異国風の奇抜な着物を着た男性が上品に入ってきた。
「お初にお目にかかります、紅史郎殿。余はツクモ。成政殿の補佐をし、永遠の楽園、「トワ・パライソ」の教祖も務めているとね♪」
「成政殿からお聞きしていると思いますが、改めて、私は暁紅史郎です」
紅史郎はツクモに自己紹介をした。すると、ツクモは彼をじーっと見つめていた。
「・・・?過去に私と合った事がありますか?」
紅史郎も彼とは初めて会った気がしないと、首を少し傾けて考えていた。
「気にせんとー。少し昔の知り合いに似ていただけたい♪」
ツクモは軽く胡麻化した。紅史郎は彼が何故、成政に仕えることになったのか疑問に思った。
「おや?何故、余が成政殿に仕えるか不思議に思っているかね?」
ツクモは彼の考えていることを見通していた。
「成政殿は九州の民たちを幸せにしてあげたい。それは余も同じ考え。だから、成政殿と共に新しい九州を築きたいと彼の志に共感したとね」
ツクモが素直に答えると、成政も天晴な表情で言葉を続けた。
「正直、俺は織田家が衰退し、憎きサルに仕えることになり・・・それと、九州を任されるのが正直不安であったが、ツクモはそんな俺に共感をしてくれた。共に九州を楽園にしようと。そして、サルに負けぬくらいの大大名になってみせるとな!!」
「そ・・・そうですか・・・」
紅史郎は成政の意気込みに賛同するしかなかった。しかし、心のどこかではツクモという存在に不信感を抱いていた。
(僕は、兄さんを見捨て、大友家も見放してしまった・・・成政殿の考え方に反対する資格は無い。暁家が存続するのであれば・・・)
紅史郎の困惑した表情をツクモは妖しく見続けていた。
(この者は余と同じ香りがする・・・もしかしたら、余と何か関係するとね?)
ツクモと紅史郎は初めて会った気がしない不思議な繋がりがある事を知る由もなかった。
第2話 完
「あんたは確か・・・暁家の次男坊じゃないかい?大友家が衰退しているそうじゃねーか?新しく仕える大名は見つかったかい?」
「心配してくれてありがとう・・・。今は佐々成政殿に仕えているよ」
紅史郎は苦笑いをして漁師たちに答えた。
「それにしてもここ数十年、煉太郎を見ないのだが、どうしちまったんだろうなぁー?」
「・・・・それは・・分かりません」
紅史郎が戸惑っていると、湘は彼に都合の良くない話が振られたと察した。そして、とっさに紅史郎は少し貧血を起こしたようだと嘘をつき、直ぐにその場を離れさせた。港町から少し離れた武家屋敷が並ぶ街で、湘は彼に兄が居たのか?と尋ねた。
「・・・僕には兄が居たのですが・・・体が弱くてよく床に伏せていました・・・。」
紅史郎は湘に兄の事を話した。暁家は数十年前に本家と分家の争いにより分裂した。その時に、本家当主だった父は毒殺され、母も分家の者から逃げる最中、雇われた荒くれ者達に殺害された。そして、兄の煉太郎は分家の養子にはなれずに、宇土の港町で浮浪児として働いていたが突然姿を消した。
「僕は、暁家の分家の養子となり、豊後の大友家に仕えていたけど、兄を見捨ててしまったのですよ。久しぶりに再会したときに、兄に合わせる顔がなかった・・・」
煉太郎兄さんは僕に一緒に暮らそうよと言ってくれた。だけど、僕が一緒に豊後へ行こうと連れて行くべきだった・・・。
紅史郎は深く悔やんでいると、湘は彼に優しい言葉をかけた。
「しかし、煉太郎殿は体が弱くても、家を追い出されても、君と再会するまで一生懸命1日1日を生きていたのであろう。優しくて逞しい兄君ではないか」
湘が紅史郎を励ますと、そうだ!!とひらめいた。
「私の友人に、各地を旅している暴れ牛・・いいや、暑苦しい傭兵がいるのだが、その者に煉太郎を知っているか尋ねてみるのも良いな、その者は優しいから君に協力をしてくれるよ、きっと。」
湘は球磨の自信満々な笑顔を思い出しながら、紅史郎に言った。
「その人って確か、天草出身の強き傭兵、球磨殿かな?会ったことは無いけど、何でも荒くれ者達を懲らしめたり、各地の戦に雇われては弱き者を助け、炊き出しなどをしていると聞いたよ」
紅史郎は瞳を輝かせていた。彼は球磨に強い憧れを抱いているのだ。球磨の正体が本当の兄とは知らずに。
「しかし・・・球磨殿はどこに居るか分からない・・・九州へ来ていると良いけど」
「その者はもしかしたら近くに居るかもしれないな。・・・何となくそんな感じがする」
湘は淡々と口にしたが、球磨の事をとても信頼していると紅史郎には分かった。
「湘さんと球磨殿は仲が良いのか?」
「とんでも無い。あんな暴れ牛とは良く言い争いケンカになる。だが、切っても切れない宿命で結ばれているのかもしれないな」
湘は球磨以外にも3人の気を感じ取っていた。おそらく桜龍もモトスも千里も九州へ来ているみたいだ。きっと、九州で何かが起こるのかもしれない。湘は肥後に来て、気になっていた事を紅史郎に聞いてみた。
「そういえば、街を歩いているときに・・・・」
湘が言葉を続けようとした時、暁家の使用人が紅史郎の元へやってきた。
「紅史郎様、探しましたぞ!!成政殿が合わせたい人物が居ると申しておりましたので、早くお戻りくださいませ!!」
「湘さん、お話中のところ申し訳ない・・・。湘さんは今日泊まる所は決まっているか?もし良ければ暁家の館に招待するよ」
紅史郎と使用人は快く誘うと湘は、宿は決まっているので大丈夫と断った。
湘は紅史郎と別れた後、深く考えていた。
(町を歩いていた時に、教祖やら寄付金だのと耳にしたのだが、紅史郎殿は何か知っているかと聞きたかったのだが・・・私としたことが、散策や話に夢中でその話題を出すことを忘れていた・・・)
湘は後日、暁家を訪ねて、紅史郎に聞いてみようと考えながら、宿に向かった。
夕方、紅史郎は佐々成政の居城で、成政に呼ばれ部屋に行った。
「紅史郎に紹介したい男が居る。入れ」
質素な造りの中広間には、異国風の奇抜な着物を着た男性が上品に入ってきた。
「お初にお目にかかります、紅史郎殿。余はツクモ。成政殿の補佐をし、永遠の楽園、「トワ・パライソ」の教祖も務めているとね♪」
「成政殿からお聞きしていると思いますが、改めて、私は暁紅史郎です」
紅史郎はツクモに自己紹介をした。すると、ツクモは彼をじーっと見つめていた。
「・・・?過去に私と合った事がありますか?」
紅史郎も彼とは初めて会った気がしないと、首を少し傾けて考えていた。
「気にせんとー。少し昔の知り合いに似ていただけたい♪」
ツクモは軽く胡麻化した。紅史郎は彼が何故、成政に仕えることになったのか疑問に思った。
「おや?何故、余が成政殿に仕えるか不思議に思っているかね?」
ツクモは彼の考えていることを見通していた。
「成政殿は九州の民たちを幸せにしてあげたい。それは余も同じ考え。だから、成政殿と共に新しい九州を築きたいと彼の志に共感したとね」
ツクモが素直に答えると、成政も天晴な表情で言葉を続けた。
「正直、俺は織田家が衰退し、憎きサルに仕えることになり・・・それと、九州を任されるのが正直不安であったが、ツクモはそんな俺に共感をしてくれた。共に九州を楽園にしようと。そして、サルに負けぬくらいの大大名になってみせるとな!!」
「そ・・・そうですか・・・」
紅史郎は成政の意気込みに賛同するしかなかった。しかし、心のどこかではツクモという存在に不信感を抱いていた。
(僕は、兄さんを見捨て、大友家も見放してしまった・・・成政殿の考え方に反対する資格は無い。暁家が存続するのであれば・・・)
紅史郎の困惑した表情をツクモは妖しく見続けていた。
(この者は余と同じ香りがする・・・もしかしたら、余と何か関係するとね?)
ツクモと紅史郎は初めて会った気がしない不思議な繋がりがある事を知る由もなかった。
第2話 完