第2章 九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神
その頃、肥後の天草では、褐色肌の大柄な青年が割烹着姿で孤児院の子供たちに料理を振る舞っていた。彼が世話になった孤児院は九州征伐により孤児が増えたので、孤児院で育った青年や天草地域の大工が集まり、隣の敷地に海が一望できる新しく大きな孤児院を建設していた。
「球磨(きゅうま)兄ちゃんの造った西洋風炊き込みご飯美味しいよ♪」
球磨と呼ばれた男は、大きな土鍋に海老やイカやアサリなどの魚介類が入った、ダシが決め手の、南蛮の香辛料を混ぜた炊き込みご飯、後に和風パエリアと言われるスペイン料理を作っていた。
「この料理は南蛮船の料理人から教えてもらったんだぜ。ニンニクという少し香りが強いが、結構精がつくぜ」
球磨は子供たちの他にも、土木作業をしている男たちにも炊き込みご飯を振る舞った。
「うまいぜ!!球磨」
「お前は日ノ本各地を回ったり、南蛮人とも交流しているから色々な料理を作れるんだな」
男たちは球磨を尊敬していた。
「よせやい!!日ノ本はまだ回っていない所も山ほどあるし、南蛮人には護衛の礼に料理を教えてもらった感じだし」
球磨は男たちと芋焼酎と一緒に談笑しながら食べていると、後ろから銀髪の神父服の男性が現れた。
「皆さん、作業お疲れ様です。午後は気温が暑くなるので、ゆっくり休んで作業をしてください。球磨も料理お疲れ様です。」
「益城(ましき)院長!!もったいなきお言葉、励みになります!!」
男たちは酒を切り株に置き、益城に挨拶をした。すると、球磨は笑いながら益城に声をかけた。
「益城院長も子供たちの世話、お疲れ様。炊き込みご飯も芋焼酎も沢山あるから、皆で飲もうぜ!!」
球磨が益城に用意をすると、美味しそうに食べた。
「料理も武術も腕を上げましたね、球磨。各地を回り成長したことが分かります」
益城が球磨の瞳を見つめながら言うと、球磨は照れながら答えた。
「嬉しい言葉ありがとう。だけど、成長したのは俺の力だけではなく、旅先で出会った人々や、共に戦ってくれた同志たちの力もあって俺はここまで強くなったんだ。もちろん、益城院長が鍛えてくれたのが1番効いているぜ!!」
球磨は後ろに抱えていた西洋槍を天高く掲げると、周りにいた子供や男たちはクマちゃんかっこいいぜ!!と歓声を上げていた。すると球磨は、クマちゃん言うなと周りに注意した。益城はその光景を笑って見ていた。すると、1人の男の子が球磨を尊敬の眼差しで見て宣言をした。
「球磨兄ちゃん!!僕大きくなったら、「とわ・ぱらいそ」っていう教団の幹部になって、孤児院が困らないようにするんだ」
とわ・ぱらいそ?球磨は初めて聞く言葉に、少年にそれは何だい?と尋ねた。すると、益城が丁寧に説明をした。
「トワ・パライソは、最近になって肥前国(現長崎県)の島原を中心に立ち上げられた教団で、トワはおそらく永遠(とわ)でパライソはスペイン語で楽園という意味かもしれません。」
益城の説明によると、肥前、肥後の民たちの他にも、九州全域に影響力を出しつつあり、異国風の美青年が教祖を務め、さらに3人の美女が、大名や領主を洗礼しているという噂である。しかし、球磨も益城も胡散臭い物だと感じていた。
「何だか・・・怪しいな。秀吉殿は異教徒を取り締まっているし・・・九州でこんな宗教が流行ったら豊臣政権も黙ってはいないだろうな・・・」
しかし、球磨は少年のキラキラした瞳を見て何も言えなかった。すると益城は球磨の肩に手を乗せ、優しく助言をした。
「今は焦らず、様子を見るのが最善です。・・・例え、悪い方向に進もうとも、あなたには共に戦う勇士たちがいるのですから」
「ああ。あいつらか。だが、はるばる九州までくるかなー?」
そう言いながらも、球磨は、かつて甲斐国で梅雪たちを相手に共に戦った、桜龍、湘、モトス、千里の気を感じていた。もしかしたら、また彼らと共に日ノ本を陰から壊そうとする一味と戦う予兆なのかもしれない。しかし球磨は臆することなく不敵に笑い、面白え!!と意気込んでいた。
その頃、肥後の中心部に位置する城の広間で、黒髪で生真面目そうな武将、佐々成政が金髪の青年と話していた。神経質で用心深い成政は胡散臭い教祖だと疑っており、男を追い返そうとしたが、家臣も侍女も、彼の背中や肩などを露出した奇抜な服装や優雅な雰囲気に魅了され、止める者がいなかった。
「私に何のようだ!!寄付金目当てなら帰ってもらうぞ!!!」
成政が何か怪しいと警戒をしても青年は何も動じず、彼の強い橙の瞳を見て囁いた。
「寄付金などいらんけん。余は成政殿を九州の王にしたいとねー。そなたには王としての素質があるとね。トワ・パライソはそなたを応援するけん」
応援とは?と気になり、成政は男の言葉に反論せず、話を続けろと促した。
「まだ聞いていなかったな・・・。お前・・・名は何という?」
青年は爽やかな笑顔で彼に答えた。
「余は、ツクモ。物を司る神、付喪神(つくも)と同じ名だが、余は炎の魔人とも言われているとね」
ツクモの後ろにはいつの間にか、珠姫と美羅とつるぎの姿があった。
佐々成政は彼らとの出会いにより、九州の大名や民による豊臣政権への反乱の引き金になることなど知る由もなかった。
第1話 完
「球磨(きゅうま)兄ちゃんの造った西洋風炊き込みご飯美味しいよ♪」
球磨と呼ばれた男は、大きな土鍋に海老やイカやアサリなどの魚介類が入った、ダシが決め手の、南蛮の香辛料を混ぜた炊き込みご飯、後に和風パエリアと言われるスペイン料理を作っていた。
「この料理は南蛮船の料理人から教えてもらったんだぜ。ニンニクという少し香りが強いが、結構精がつくぜ」
球磨は子供たちの他にも、土木作業をしている男たちにも炊き込みご飯を振る舞った。
「うまいぜ!!球磨」
「お前は日ノ本各地を回ったり、南蛮人とも交流しているから色々な料理を作れるんだな」
男たちは球磨を尊敬していた。
「よせやい!!日ノ本はまだ回っていない所も山ほどあるし、南蛮人には護衛の礼に料理を教えてもらった感じだし」
球磨は男たちと芋焼酎と一緒に談笑しながら食べていると、後ろから銀髪の神父服の男性が現れた。
「皆さん、作業お疲れ様です。午後は気温が暑くなるので、ゆっくり休んで作業をしてください。球磨も料理お疲れ様です。」
「益城(ましき)院長!!もったいなきお言葉、励みになります!!」
男たちは酒を切り株に置き、益城に挨拶をした。すると、球磨は笑いながら益城に声をかけた。
「益城院長も子供たちの世話、お疲れ様。炊き込みご飯も芋焼酎も沢山あるから、皆で飲もうぜ!!」
球磨が益城に用意をすると、美味しそうに食べた。
「料理も武術も腕を上げましたね、球磨。各地を回り成長したことが分かります」
益城が球磨の瞳を見つめながら言うと、球磨は照れながら答えた。
「嬉しい言葉ありがとう。だけど、成長したのは俺の力だけではなく、旅先で出会った人々や、共に戦ってくれた同志たちの力もあって俺はここまで強くなったんだ。もちろん、益城院長が鍛えてくれたのが1番効いているぜ!!」
球磨は後ろに抱えていた西洋槍を天高く掲げると、周りにいた子供や男たちはクマちゃんかっこいいぜ!!と歓声を上げていた。すると球磨は、クマちゃん言うなと周りに注意した。益城はその光景を笑って見ていた。すると、1人の男の子が球磨を尊敬の眼差しで見て宣言をした。
「球磨兄ちゃん!!僕大きくなったら、「とわ・ぱらいそ」っていう教団の幹部になって、孤児院が困らないようにするんだ」
とわ・ぱらいそ?球磨は初めて聞く言葉に、少年にそれは何だい?と尋ねた。すると、益城が丁寧に説明をした。
「トワ・パライソは、最近になって肥前国(現長崎県)の島原を中心に立ち上げられた教団で、トワはおそらく永遠(とわ)でパライソはスペイン語で楽園という意味かもしれません。」
益城の説明によると、肥前、肥後の民たちの他にも、九州全域に影響力を出しつつあり、異国風の美青年が教祖を務め、さらに3人の美女が、大名や領主を洗礼しているという噂である。しかし、球磨も益城も胡散臭い物だと感じていた。
「何だか・・・怪しいな。秀吉殿は異教徒を取り締まっているし・・・九州でこんな宗教が流行ったら豊臣政権も黙ってはいないだろうな・・・」
しかし、球磨は少年のキラキラした瞳を見て何も言えなかった。すると益城は球磨の肩に手を乗せ、優しく助言をした。
「今は焦らず、様子を見るのが最善です。・・・例え、悪い方向に進もうとも、あなたには共に戦う勇士たちがいるのですから」
「ああ。あいつらか。だが、はるばる九州までくるかなー?」
そう言いながらも、球磨は、かつて甲斐国で梅雪たちを相手に共に戦った、桜龍、湘、モトス、千里の気を感じていた。もしかしたら、また彼らと共に日ノ本を陰から壊そうとする一味と戦う予兆なのかもしれない。しかし球磨は臆することなく不敵に笑い、面白え!!と意気込んでいた。
その頃、肥後の中心部に位置する城の広間で、黒髪で生真面目そうな武将、佐々成政が金髪の青年と話していた。神経質で用心深い成政は胡散臭い教祖だと疑っており、男を追い返そうとしたが、家臣も侍女も、彼の背中や肩などを露出した奇抜な服装や優雅な雰囲気に魅了され、止める者がいなかった。
「私に何のようだ!!寄付金目当てなら帰ってもらうぞ!!!」
成政が何か怪しいと警戒をしても青年は何も動じず、彼の強い橙の瞳を見て囁いた。
「寄付金などいらんけん。余は成政殿を九州の王にしたいとねー。そなたには王としての素質があるとね。トワ・パライソはそなたを応援するけん」
応援とは?と気になり、成政は男の言葉に反論せず、話を続けろと促した。
「まだ聞いていなかったな・・・。お前・・・名は何という?」
青年は爽やかな笑顔で彼に答えた。
「余は、ツクモ。物を司る神、付喪神(つくも)と同じ名だが、余は炎の魔人とも言われているとね」
ツクモの後ろにはいつの間にか、珠姫と美羅とつるぎの姿があった。
佐々成政は彼らとの出会いにより、九州の大名や民による豊臣政権への反乱の引き金になることなど知る由もなかった。
第1話 完