第2章 九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神
日ノ本の何処にも見る事が出来ない、深い闇の空間に巨大な城が存在した。天高くそびえ立つ天守閣の窓から黒い鎧を着た、黒髪の渋面の男性が朧月を見ていた。
「陽(よう)の二ホンは今では夏か。さぞ、日差しが強く暑いだろうな」
陽の二ホンとは、人を始め、様々な動物や種族が共存し、また、各戦国大名が天下を統一させる為に日々戦を繰り返す乱世の国でもある。
「陽の二ホンの者たちは陰(いん)の二ホンがある事など知らぬだろうなぁ」
陰の二ホンとは、陽の光が差す事の無い闇の世界。この地は陽の日ノ本の何処かに繋がっているが、陽の民はその地を知らず、陰の者は行き来が出来る。
黒い鎧の男が露台から室内に入った時、人造戦士の青年、厳美(げんび)が部屋に入り尋ねた。
「親方様、空を見上げて何を考えているのですかー?」
親方と呼ばれた男は穏やかな口調で彼に返事をした。
「お前か、厳美。少し陽の世界のことを考えていたのだよ。それより厳美、前に大きな痛手を受けたようだが、もう回復はしたのか?」
「お陰様で、この通り何時でも任務に出られますよ♪」
厳美は数年前に中部地方の甲斐国で、武田の残党狩りをしていた穴山梅雪達に加担し、自らの野望の為に彼らを利用していた。しかし、地水火風と聖龍の加護を持つ5人の「御伽勇士」に阻止され、傷も負い、逃げ帰り療養していた。厳美は平静さを保ちながらも心では深く怒りを込めていた。親方は彼に優しく答えた。
「それは有り難いが、お前の出番は今しばらく待て。お前の仲間もまだ完全には目覚めていないだろう?」
厳美はあっさりと納得し、陽気な表情に戻り言った。
「確かに、私の優秀な仲間たちを奴らに見せてあげたいですねー♪」
厳美は親方に一礼し、自分の研究部屋に戻った。親方は最上階の部屋を後にし、城内の広い大理石の風呂場に向かった。
大理石の浴室は、暗い城内とは想像がつかない程に広く、眩しい光が指していた。壁に西洋ランプや、天井には煌びやかな宝石が装飾されたシャンデリアが輝き、豪奢な造りであった。浴室の入り口には、絹の羽衣を着た3人の女性が待機していた。女性たちは親方に笑顔でお辞儀をした。親方は3人に「待機ご苦労」とぼそっと言い、風呂場の奥に進んでいった。奥には、黒曜石で出来た龍の像の口から湯が出ており、そこには金の長い髪とカンラン石のような黄緑色の輝く瞳を持つ異国風な優男が鼻歌を歌いながら湯に浸かっていた。そして、彼の額には妖しく光る紅玉が埋め込まれていた。親方は呆れながら青年に問うた。
「ツクモよ・・・よくぞこのような眩しい空間で長く湯に浸かっていられるな・・・」
親方は手で目を覆っていると、ツクモと言われた青年は彼の姿に気付き立ち上がり、彼を優しく誘った。
「余は闇の中で美しく光る煌びやかな物が好いとーね♪親方さんも一緒に入るかね?」
ツクモは見た目の優雅さとは裏腹に何処かの国言葉のような独特な口調で言ったが、親方は何も動じず聞き流し話題を変えた。
「今、陽の二ホンではサル(豊臣秀吉)が天下を取ろうとしているそうだ。だが、まだまだ平定にはほど遠く、九州で何かが起こりそうだ。それを狙い、奴らに我が神の力を示すのだ」
親方の野望に満ちた言葉を受け、ツクモは直ちに湯から上がった。そして、3人の侍女の中で年長者の女性がツクモに西洋のガウンを掛けた。
「つまり、余が九州へ行けということかな?」
「ああ、そうだ。お前も自身の力を奮いたくて待ち遠しかっただろう。手段は問わぬ。ここで戦国の世を壊し、新たに我が神が支配する世界へと変えるのだ」
「手段は問わぬということは、余の好きにして良かね?余は殺戮とかは嫌いなので、愉快に楽しい方法で、戦国の世を壊してみるとーね♪」
ツクモは親方に宣言をした後に、後ろで控えていた3人の侍女に声をかけた。
「では、珠姫(たまき)、美羅(みら)、つるぎ、準備が出来たら、陽の二ホンへ向かうとね」
ツクモが命ずると、彼と同世代位の黒髪の妖艶な女性、珠姫が笑顔でお辞儀をした。
「ツクモ神様。わたくし達3姉妹にお任せください。つるぎの武術と美羅の知略と、わたくしの呪術にかかれば、サル他乱世の武士達はツクモ神様の敵ではありませんわ」
その次に、童顔で小柄な、鏡のような透明な髪の女性が明るい口調で彼に答えた。
「あたしもお姉様やつるぎには後れを取らないように、精いっぱい努めますよ!!ツクモ神様♪」
そして最後に、赤毛の髪で長身の中性的な姿顔立ちの女性が、彼に強い決意をして言った。
「姉上達の言う通り、私もツクモ神様のお役に立てられるように、努めます。この命、我が神の為に使うことをいといません」
3人の侍女はそれぞれ身支度をするために、自室に戻った。親方は意気込んでいる彼女たちを見て、強い女達だと感心していた。
「・・・貴殿は良い部下を持っているな」
「部下ではなかとーね。彼女たちは、余の妻たい。いくら親方さんが羨ましいと思っても彼女たちはあげんよ」
「・・・別にいらぬ」
親方はそっけない態度で、風呂場を出て行った。
「陽(よう)の二ホンは今では夏か。さぞ、日差しが強く暑いだろうな」
陽の二ホンとは、人を始め、様々な動物や種族が共存し、また、各戦国大名が天下を統一させる為に日々戦を繰り返す乱世の国でもある。
「陽の二ホンの者たちは陰(いん)の二ホンがある事など知らぬだろうなぁ」
陰の二ホンとは、陽の光が差す事の無い闇の世界。この地は陽の日ノ本の何処かに繋がっているが、陽の民はその地を知らず、陰の者は行き来が出来る。
黒い鎧の男が露台から室内に入った時、人造戦士の青年、厳美(げんび)が部屋に入り尋ねた。
「親方様、空を見上げて何を考えているのですかー?」
親方と呼ばれた男は穏やかな口調で彼に返事をした。
「お前か、厳美。少し陽の世界のことを考えていたのだよ。それより厳美、前に大きな痛手を受けたようだが、もう回復はしたのか?」
「お陰様で、この通り何時でも任務に出られますよ♪」
厳美は数年前に中部地方の甲斐国で、武田の残党狩りをしていた穴山梅雪達に加担し、自らの野望の為に彼らを利用していた。しかし、地水火風と聖龍の加護を持つ5人の「御伽勇士」に阻止され、傷も負い、逃げ帰り療養していた。厳美は平静さを保ちながらも心では深く怒りを込めていた。親方は彼に優しく答えた。
「それは有り難いが、お前の出番は今しばらく待て。お前の仲間もまだ完全には目覚めていないだろう?」
厳美はあっさりと納得し、陽気な表情に戻り言った。
「確かに、私の優秀な仲間たちを奴らに見せてあげたいですねー♪」
厳美は親方に一礼し、自分の研究部屋に戻った。親方は最上階の部屋を後にし、城内の広い大理石の風呂場に向かった。
大理石の浴室は、暗い城内とは想像がつかない程に広く、眩しい光が指していた。壁に西洋ランプや、天井には煌びやかな宝石が装飾されたシャンデリアが輝き、豪奢な造りであった。浴室の入り口には、絹の羽衣を着た3人の女性が待機していた。女性たちは親方に笑顔でお辞儀をした。親方は3人に「待機ご苦労」とぼそっと言い、風呂場の奥に進んでいった。奥には、黒曜石で出来た龍の像の口から湯が出ており、そこには金の長い髪とカンラン石のような黄緑色の輝く瞳を持つ異国風な優男が鼻歌を歌いながら湯に浸かっていた。そして、彼の額には妖しく光る紅玉が埋め込まれていた。親方は呆れながら青年に問うた。
「ツクモよ・・・よくぞこのような眩しい空間で長く湯に浸かっていられるな・・・」
親方は手で目を覆っていると、ツクモと言われた青年は彼の姿に気付き立ち上がり、彼を優しく誘った。
「余は闇の中で美しく光る煌びやかな物が好いとーね♪親方さんも一緒に入るかね?」
ツクモは見た目の優雅さとは裏腹に何処かの国言葉のような独特な口調で言ったが、親方は何も動じず聞き流し話題を変えた。
「今、陽の二ホンではサル(豊臣秀吉)が天下を取ろうとしているそうだ。だが、まだまだ平定にはほど遠く、九州で何かが起こりそうだ。それを狙い、奴らに我が神の力を示すのだ」
親方の野望に満ちた言葉を受け、ツクモは直ちに湯から上がった。そして、3人の侍女の中で年長者の女性がツクモに西洋のガウンを掛けた。
「つまり、余が九州へ行けということかな?」
「ああ、そうだ。お前も自身の力を奮いたくて待ち遠しかっただろう。手段は問わぬ。ここで戦国の世を壊し、新たに我が神が支配する世界へと変えるのだ」
「手段は問わぬということは、余の好きにして良かね?余は殺戮とかは嫌いなので、愉快に楽しい方法で、戦国の世を壊してみるとーね♪」
ツクモは親方に宣言をした後に、後ろで控えていた3人の侍女に声をかけた。
「では、珠姫(たまき)、美羅(みら)、つるぎ、準備が出来たら、陽の二ホンへ向かうとね」
ツクモが命ずると、彼と同世代位の黒髪の妖艶な女性、珠姫が笑顔でお辞儀をした。
「ツクモ神様。わたくし達3姉妹にお任せください。つるぎの武術と美羅の知略と、わたくしの呪術にかかれば、サル他乱世の武士達はツクモ神様の敵ではありませんわ」
その次に、童顔で小柄な、鏡のような透明な髪の女性が明るい口調で彼に答えた。
「あたしもお姉様やつるぎには後れを取らないように、精いっぱい努めますよ!!ツクモ神様♪」
そして最後に、赤毛の髪で長身の中性的な姿顔立ちの女性が、彼に強い決意をして言った。
「姉上達の言う通り、私もツクモ神様のお役に立てられるように、努めます。この命、我が神の為に使うことをいといません」
3人の侍女はそれぞれ身支度をするために、自室に戻った。親方は意気込んでいる彼女たちを見て、強い女達だと感心していた。
「・・・貴殿は良い部下を持っているな」
「部下ではなかとーね。彼女たちは、余の妻たい。いくら親方さんが羨ましいと思っても彼女たちはあげんよ」
「・・・別にいらぬ」
親方はそっけない態度で、風呂場を出て行った。