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第1章 異説 武田の残党狩り編 桃源郷に集う勇士

その頃、湘は北条家4代目当主の氏政とその弟、武蔵八王子城の主、氏照(うじてる)をお忍びで甲斐の石和に連れてきていた。妹の双葉と信康が経営するぶどう園を見て2人は涙を流していた。特に長男の氏政はボロボロと涙を流した。
「う・・・あんなに小さかった妹がこんなに立派になって・・」
氏照も我慢したくても涙が止まらなかった。
「本当に生きてて良かったぜ・・・・だけどよ、妹の姿を見るのはこれが最後か・・・」
湘は2人の涙ぐんでいる姿を見て寂しそうな顔をしていた。


湘は密かに水鏡の魔法で、水を通して氏政に伝えていた。双葉は生きていたと。しかし、彼女は北条一族の名を捨て、1人の夫を支える妻として生きると決意をしていた。その時、氏政は湘に感謝の言葉と嬉し涙を流していた。
「妹を助けてくれて・・ありがとう、湘。妹が生きていたなら、どのような人生を送ってくれても構わない」

ところが、湘には少し気がかりなことがあった。
「しかし、信長が居なくなった今、北条家も本格的に織田領と・・旧武田領に侵攻を考えているのでしょう?」
氏照も、神妙な顔をしながらこれからの事を考えていた。
「うーん・・・徳川も黙っちゃいねーし、西の豊臣も動きそうだしな・・・北条家も勢力を拡大させないとな・・・兄上いかがいたしましょう?」
2人は考えていると氏政は穏やかな表情で2人に結論を出した。
「・・・織田領を侵攻はするが、甲斐の国には関わらない。攻める先は、上野(こうずけ)国(現群馬県)の沼田だ!!」
氏政が決心をすると、湘は凛々しく爽やかな表情で、主に言った。
「それでは、これからの策を練りますね。氏政殿、氏照殿」
(ふう・・・モトスと千里が北条家に来なかったのは残念だったな。あの2人があそこに仕えたら確実に敵同士になるかな・・・)
しかし、湘は2人が敵になっても嘆いたり恨んだりは一切しなかった。むしろ一戦を交えることでお互いを高められたり、弱点などを見極めることが出来る。自分も強くなれる好敵手でもあり、戦友でもあると。再びまた彼らとは共闘するだろうと思った。
その後、北条家が双葉達に関わることは二度となかった。



その頃、モトスと千里は白昼の八ヶ岳の険しい山岳地帯を通り、東信の小諸を目指していた。2人は信濃の小県(ちいさがた)、真田昌幸に仕えると決意したからだ。


数日前、全てが解決した後、モトスはこれからどうするか考えていた。お都留や白州と共に甲斐の国の森や山を護るか、エンザンと共に精霊戦士や忍びの師となるか。しかし自分が本当にすべきことに深く悩んでいた。するとお都留に励まされた。
「私は、モトスさんが本当にしてみたい事をして欲しいです。私はあなたがどの道を選んでも、愛していることに変わりないですし、助けたいと思っています」
俺は今まで主を護り、主の為に尽くす人生を送ってきた。俺はまた誰かに仕え、その一族を護りたいと思っていた。すると、千里の言葉を聞いて決心をした。
「モトスさん。真田家に仕えるのは如何でしょうか?僕は、真田家に仕えたいと思っています。昌幸殿と出会った時に分かったのです。この一族は家族を護りたいという強い志を持っていると」
千里は、梅雪との戦いが終わった後どうしようか悩んでいた。湘に北条家で軍師を目指さないかと誘われたり、球磨からは九州の大名家を紹介しようかと言われたり、桜龍からは出雲で神官になれるさ!!とも誘われた。しかし、千里は浅間山で長年の封印から目覚めさせてくれた真田昌幸の姿を見て、彼はかつて仕えていた源義経と同格の戦の達人で武勇にも優れていると見極めていた。そんな真田一族を支えたいと答えを出した。
「昌幸に仕えるか・・・。確かに真田家は信長が居なくなった今、上杉や徳川、北条などに囲まれて立場が苦しい・・・。それに、昌幸には武田に来た頃、多く世話になったし、今度は俺達が助けたいな。では、小諸の居城へ向かうか!!」


モトスは甲斐を旅立つ前、お都留とエンザンに真田家に仕えると告げた。するとお都留は
「どうかご武運を、モトスさん、千里さん。私たちも必要であれば、真田家に助力します!!」
「真田昌幸の元へ行くのか。真田家は軍略にも武勇にも優れる、中々面白い一族じゃよ。お主達が学べることもたくさんあるじゃろう。是非とも、2人には真田家で修行をして欲しいのう♪」
お都留とエンザンは2人の勇士の向かう道を見守っていこうと思った。


現在、北八ヶ岳麓の白樺に囲まれた美しい松原湖で2人は休息をとっていた。すると千里はモトスに告げた。
「僕はまだ、この時代の文化や戦い方に慣れていないです。厳美と再び戦う前に、多く学ばなければいけないですね」
「そうだな。お前は400年以上も封印されていたのだから、時代は随分と変わったよ。だが、お前なら直ぐにこの時代に溶け込めるさ!!今は共に真田家で頑張ろうな!!」
モトスと千里は湖畔で寝転がり、先の事を考えていた。
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