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第1章 異説 武田の残党狩り編 桃源郷に集う勇士

その頃、家康達は伊賀路を抜け、林道から開けた道に出ようとしていた。
「もうすぐ、亀山の街に出る!!皆、もう少し頑張ってくれ!!」
家康は張り切っていたが、信康の事が少し気がかりでならなかった。
(そういえば・・・梅雪の影は信康と言っていたか。切腹した息子と同じ名だな・・・)
家康は息子の事を思い出していた。猛将で野心が強く、家臣とは不仲で父を脅かす程の存在であった。そして、息子は謀反の疑いで切腹し亡くなった。
(私は信康という名に呪われているのか?それとも、何かの因果かな・・・?しかし、私は決めた。天下を取る為に邪魔となる者は・・・切り捨てると!!)
家康が決心をしていると、木の上から不気味な声が聞こえた。
「僕は息子さんの怨霊ですよー。家康サマー」
理性を失った信康は鋭い爪で家康の頭上から攻撃を仕掛けた。忠勝は間一髪、愛槍、蜻蛉切(とんぼきり)で受け止め払ったが、その力と身のこなしは半蔵の速さをも翻弄した。
「天下を取るのはこの僕だ!!!!その為には、徳川家康、貴様には死んでもらう!!」
信康は必死に主君を護る半蔵を攻撃していた。半蔵は彼の凄まじい力に吹き飛ばされ、忠勝は急いで彼を護ろうとした。その隙に、信康は家康を囲っている兵士達を銃で撃ち倒し、無防備となった家康に襲い掛かろうとしたその時、2双の曲刀が龍の爪を受け止めた。
「この者は、お主達の手には負えぬ・・・早くこの場を離れるのだ!!」
モトスは家康達に早く逃げろと促した。家康は彼の武田菱の額当てを見て戸惑って言った。
「お主は・・・長篠の時に黒蝶のモトスと恐れられていた者?何故敵である私を助ける?」
すると、桜龍も家康の前に現れ、太刀を構えながら言った。
「この状況で敵も味方も無いですぜ、家康殿。俺らの目的は、信康を正気に戻す事なので」
千里と球磨と湘も、忠勝と半蔵の前に現れ、早く主を連れて逃げて下さいと促した。忠勝は負傷した半蔵を担ぎ、3人に一礼し家康を連れ、先を急いだ。信康はモトス達に怒りを向けながら叫んだ。
「お前ら・・・僕の邪魔をするのか!!僕は天下を取り、日ノ本を支配する!!お前らをここで始末してやる!!」
信康は龍の爪を立て、右手には短銃を構えた。そして、モトスに襲いかかった。信康は左腕でモトスの双曲刀と交えながら一方の手で桜龍目掛け、銃弾を連射した。桜龍は太刀で弾きながら文句を言った。
「く・・・こいつ隙がねぇ・・・どんだけ弾入れてんだよ!!」
モトスは信康に蹴りを入れようとしたが、右足を龍の腕に掴まれ投げ飛ばされ、木に衝突しそうになった。すかさず球磨が受け止めた。
「すまぬ・・・球磨」
「ダンナ!!こいつは異常な力を持っているぞ・・・俺らも加勢するぜ!!」
球磨が西洋槍を信康に向けると、湘は確信を持った顔で皆に言った。
「信康はおそらく何者かに腕を変形させられ、人格も操られている・・・どうにかしてこの者を元の姿に戻せないか?」
湘は双葉と玄杜の為に、彼を救いたいと思っていた。すると千里は静かだが怒りを込めた顔で彼の龍の腕を見つめていた。
「こんな事をするのは奴しかいません・・・信康は厳美の操り人形となってしまいました・・・許せません・・・・」
桜龍は今にも爆発しそうな千里の髪を優しく撫でながら皆に言った。
「そんじゃあ、龍の腕の邪気を打ち払いますか。皆!!行くぞ!!」
5人は再び信康と戦い始めた。球磨の炎と千里の放つ岩が信康の動きを止め、湘の冷気とモトスの放つ竜巻が合体し、完全に動きを封じた。そして、桜龍は太刀に雷光を帯びさせ、黒い邪気を放つ龍の腕に深く傷を付けた。
「う・・・・あああああー!!!!!!!」
信康は苦しみ出し正気を取り戻そうとした。
「は・・早く!!僕を始末しろ!!僕は家康を殺そうとした・・・」
信康は涙を流しながら懇願すると、桜龍は彼の腕の傷口に護符を付け、邪気を浄化させようとしたその時
(信康さん、最後の機会です。桜龍の聖なる龍の瞳を奪いなさい)
突如、信康の耳元に厳美の甘い囁きが聞こえ、再び瞳は黒く濁った。千里はいち早く厳美の気配に気づき、危ない!!と桜龍を助けようとしたが、黒い影が千里の動きを止めた。その時、信康の強力な銃弾が桜龍の鉄の胴当てを貫通させ、腹部を撃ち抜いた。
「う・・・く・・っそ・・・・・」
油断したと桜龍は悔しい顔をしながら倒れないように太刀で体を支えた。
「さすが、聖なる龍の瞳を宿すだけあって、しぶといですねー。信康さん彼の瞳を奪ったら、あのお方の配下にしてあげてますよー」
木陰から厳美が姿を現した。モトスと湘と球磨は彼を一目見て言葉が出なかった。
梅雪とも・・・江津とも違う・・・禍々しく計り知れない程の強い邪悪さを帯びている・・・。
「おやおや、千里クン以外は初めましてですねー♪私は厳美。千里クンと同じ人造戦士なんですよー」
厳美が陽気に挨拶すると、何とか意識を保っている桜龍が険しい表情で彼に尋ねた。
「貴様が・・・梅雪や江津・・・それに信康を影で操っていたのか・・・」
「ふふふ、操るなんて大袈裟な。私はただ、それぞれの欲望を叶えるきっかけを作っただけですよー。皆さん、それぞれ深い闇を抱えていたから解放させたのですよ」
桜龍は冷や汗を流しながらも厳美を睨み続けた。
「おやおや、桜龍さんは虫の息ですねー。血もこんなに出て。信康さん、ちゃちゃっと彼の瞳を奪っちゃってくださいな♪」
厳美の漆黒の瞳が紅く光ると、信康の左腕に反応した。
「う・・・嫌だ・・僕はもう誰にも操られない・・・」
信康は右腕で暴れている左腕を抑え、意識を保っていた。
「強情ですねー信康さん。所詮は操り人形の分際なのに。あなたにはもう帰る場所なんて無いのですよ!!」
厳美が命令し続けると、千里が鬼のような形相で鎖鎌で彼に攻撃を仕掛けた。
「・・・これ以上、人の心も体も支配させません!!ここで決着を付けてあげますよ!!」
すると、球磨が千里の隣りに並び、強く厳美を睨みつけた。
「俺だって、白州が護っている村に危害を加えたこいつを許さねぇ!!白州達の痛みを思い知らせてやる!!」
「あーはははは!!面白いですねー♬良いでしょう。ゆっくりと相手をしてさしあげますよ!!」
厳美は陰から黒い大鎌を出現させ攻撃態勢に入った。

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