第1章 異説 武田の残党狩り編 桃源郷に集う勇士
気を失いかけているモトスは琵琶の美しい旋律と共に心の中で懐かしい声が聞こえた。
「目を覚ましてくれ・・・モトス」
声の主はかつての主君、武田勝頼であった。
「勝頼様・・・私の言動は浅はか過ぎました・・・私1人で梅雪を討伐するつもりが、叶わぬ事でした」
「諦めてはいけないよ、モトス。私もかつて、父を超えたいが為に家臣の忠告も聞かず、独断で行動してしまった。その結果、多くの仲間が犠牲になったり、離れてしまった。・・・梅雪もその1人」
勝頼は哀愁を帯びた表情でモトスの手を握った。
「モトスには私のようになって欲しくない!!お主には苦楽を共にする仲間がいる。だから、彼らと共に梅雪を怨念から解放して欲しい」
勝頼の言葉にモトスは共に戦ってくれた桜龍達の事を思い出し、申し訳ない顔をしていた。
「皆に迷惑をかけたくないと思っていたが・・・結局、迷惑をかけてしまったのは俺の方だったな・・・」
「私は梅雪に何度も助けられたのに、あの者の本心に気づいてやれなかった・・・願わくば梅雪とともに武田家を再興させたかった・・・」
モトスは消えかかる勝頼に強く誓った。
「お任せ下さい、勝頼様!!今度こそ梅雪の心を救ってみせます」
「ありがとう、モトス。お主には戦国の世を護る強い力と慈愛の優しさを持ち備えている。自の力を信じて生きるのだ!!」
勝頼の姿は消え去った。そしてモトスは目を閉じ、集中力を高め自らの姿を翡翠の蝶と変化させた。すると、エンザンの声が心の中に聞こえた。
(モトスよ。梅雪の怨念は奴の心の中におる)
モトスは梅雪の心臓部を見るとエンザンが放った蛍光色に輝く液が見えた。蝶となったモトスは彼の心の中に入っていった。
「エンザン棟梁が導いてくれた。そして勝頼様と皆も・・・この思いを無駄には出来ぬ!!」
梅雪は捕えていたモトスが消え驚いていた。4人はモトスの勝利を信じて見守っていた。しかし、梅雪は江津の琵琶の演奏に苛立ち、凄まじい圧力で彼を掴み握り潰そうとした。
「江津め・・・死の龍は浄化され善人となったか!!!だが、貴様は一生重い罪を背負う哀れな罪人と変わりはないわ!!」
しかし江津は梅雪の言葉を否定することなく、薄く笑いながら独り言を呟いていた。
「ふ・・モトスは勝頼に会えたようだ。・・・私は最期に勇士達を助ける役目が出来て悔いはない。地獄に行くぞ・・・お律」
「何だぁ?よーく聞こえないな!!命乞いしてるのか?」
「卿も哀れな男であったな・・・私は卿の事嫌いではなかったよ」
「黙れ!!貴様のような醜い罪人が、俺様と同等の立場で語るな!!」
梅雪は江津を地面に叩きつけようとしたその時、渾身の力で桜龍が梅雪の腕を斬り落とした。江津は千里の術で柔らかい土の上に落ちた。
「梅雪!!てめぇは誰かの力に縋らねーと戦えない臆病者が、力を与えてくれた江津の事を侮辱するんじゃねーよ!!」
梅雪は怒り狂いながら再び雄叫びを上げようとしたその時、梅雪の心臓部から翡翠の宝石のような輝きが放たれた。
モトスは梅雪の心の中に侵入し、蝶の姿から元の姿に戻った。
「ここが・・・・梅雪の心の中?」
夜のような暗く静寂さを漂わせる雪原であり、所々に黒い花が咲いていた。凍えそうな突き刺さる寒さだが、モトスは毅然とした表情で先の見えぬ暗闇を進み続けた。すると、奥で黒髪の女が涙を流しながらしゃがみ込んでいた。
「お主は・・・梅雪を生んだ・・・雪菜殿か?」
雪菜はモトスの姿に気づき、低く怨念に満ちた声で言った。
「・・・そうよ、私は雪菜。・・穴山信友に身も心も奪われ、捨てられた・・・帰る場所も無く、寒い雪の中をさまよったわ」
「雪菜殿・・・もう止めましょう。どのような姿に変わろうが、あなたも自然を愛する森精霊に変わりはありません!!」
モトスは雪菜に歩み寄ろうとしたが、彼女は激しく拒絶し、凄まじい闇の波動を放った。雪菜は泣き睨みながらボロボロに切れ、破れた紅のハネを見せた。
「うるさい!!私はこんな姿になって、森精霊の里にも戻れず・・・腐り果てて死んだのよ!!私が怨念を込めて生んだ梅雪を利用して、私を捨てた穴山家にも武田家にも復讐して、この大地も汚してやるのさ!!」
モトスは闇の波動に行く手を阻まれていたが、屈せずひたすら前に進んだ。そして、翡翠のハネを広げ闇を打ち消し、雪菜を深く抱きしめた。その時モトスは、姿が忍び装束から高貴な貴族が着る若草色の束帯姿に変化した。そして、ハネからは翡翠に輝く美しい鱗粉と、優しく温かい桃の花びらが辺り一面に舞った。暗闇の雪原風景から春のような桃畑と色とりどりの花畑が無限に広がった。
「・・・綺麗な景色だね・・あなたは優しいんだわ、モトス。信友もあなたのような男だったら良かったのに・・・あいつを少しでも愛してしまった私の自業自得だけどね」
雪菜は涙を流しながら、優しくモトスに笑いかけた。
「森精霊は命尽きた時、蝶となり天に召され、再び精霊の花を咲かせ生まれ変わる、来世でもまた美しい精霊に転生するよ、絶対にな!!」
雪菜はボロボロのハネや小袖から美しい光沢を帯びた紅色のハネと桃色の小袖に変化し、笑顔で浄化された。同時に、梅雪の体内から眩い光が放出され、蛾のハネやムカデの尾は完全に消え去り、元の姿に戻った。
「目を覚ましてくれ・・・モトス」
声の主はかつての主君、武田勝頼であった。
「勝頼様・・・私の言動は浅はか過ぎました・・・私1人で梅雪を討伐するつもりが、叶わぬ事でした」
「諦めてはいけないよ、モトス。私もかつて、父を超えたいが為に家臣の忠告も聞かず、独断で行動してしまった。その結果、多くの仲間が犠牲になったり、離れてしまった。・・・梅雪もその1人」
勝頼は哀愁を帯びた表情でモトスの手を握った。
「モトスには私のようになって欲しくない!!お主には苦楽を共にする仲間がいる。だから、彼らと共に梅雪を怨念から解放して欲しい」
勝頼の言葉にモトスは共に戦ってくれた桜龍達の事を思い出し、申し訳ない顔をしていた。
「皆に迷惑をかけたくないと思っていたが・・・結局、迷惑をかけてしまったのは俺の方だったな・・・」
「私は梅雪に何度も助けられたのに、あの者の本心に気づいてやれなかった・・・願わくば梅雪とともに武田家を再興させたかった・・・」
モトスは消えかかる勝頼に強く誓った。
「お任せ下さい、勝頼様!!今度こそ梅雪の心を救ってみせます」
「ありがとう、モトス。お主には戦国の世を護る強い力と慈愛の優しさを持ち備えている。自の力を信じて生きるのだ!!」
勝頼の姿は消え去った。そしてモトスは目を閉じ、集中力を高め自らの姿を翡翠の蝶と変化させた。すると、エンザンの声が心の中に聞こえた。
(モトスよ。梅雪の怨念は奴の心の中におる)
モトスは梅雪の心臓部を見るとエンザンが放った蛍光色に輝く液が見えた。蝶となったモトスは彼の心の中に入っていった。
「エンザン棟梁が導いてくれた。そして勝頼様と皆も・・・この思いを無駄には出来ぬ!!」
梅雪は捕えていたモトスが消え驚いていた。4人はモトスの勝利を信じて見守っていた。しかし、梅雪は江津の琵琶の演奏に苛立ち、凄まじい圧力で彼を掴み握り潰そうとした。
「江津め・・・死の龍は浄化され善人となったか!!!だが、貴様は一生重い罪を背負う哀れな罪人と変わりはないわ!!」
しかし江津は梅雪の言葉を否定することなく、薄く笑いながら独り言を呟いていた。
「ふ・・モトスは勝頼に会えたようだ。・・・私は最期に勇士達を助ける役目が出来て悔いはない。地獄に行くぞ・・・お律」
「何だぁ?よーく聞こえないな!!命乞いしてるのか?」
「卿も哀れな男であったな・・・私は卿の事嫌いではなかったよ」
「黙れ!!貴様のような醜い罪人が、俺様と同等の立場で語るな!!」
梅雪は江津を地面に叩きつけようとしたその時、渾身の力で桜龍が梅雪の腕を斬り落とした。江津は千里の術で柔らかい土の上に落ちた。
「梅雪!!てめぇは誰かの力に縋らねーと戦えない臆病者が、力を与えてくれた江津の事を侮辱するんじゃねーよ!!」
梅雪は怒り狂いながら再び雄叫びを上げようとしたその時、梅雪の心臓部から翡翠の宝石のような輝きが放たれた。
モトスは梅雪の心の中に侵入し、蝶の姿から元の姿に戻った。
「ここが・・・・梅雪の心の中?」
夜のような暗く静寂さを漂わせる雪原であり、所々に黒い花が咲いていた。凍えそうな突き刺さる寒さだが、モトスは毅然とした表情で先の見えぬ暗闇を進み続けた。すると、奥で黒髪の女が涙を流しながらしゃがみ込んでいた。
「お主は・・・梅雪を生んだ・・・雪菜殿か?」
雪菜はモトスの姿に気づき、低く怨念に満ちた声で言った。
「・・・そうよ、私は雪菜。・・穴山信友に身も心も奪われ、捨てられた・・・帰る場所も無く、寒い雪の中をさまよったわ」
「雪菜殿・・・もう止めましょう。どのような姿に変わろうが、あなたも自然を愛する森精霊に変わりはありません!!」
モトスは雪菜に歩み寄ろうとしたが、彼女は激しく拒絶し、凄まじい闇の波動を放った。雪菜は泣き睨みながらボロボロに切れ、破れた紅のハネを見せた。
「うるさい!!私はこんな姿になって、森精霊の里にも戻れず・・・腐り果てて死んだのよ!!私が怨念を込めて生んだ梅雪を利用して、私を捨てた穴山家にも武田家にも復讐して、この大地も汚してやるのさ!!」
モトスは闇の波動に行く手を阻まれていたが、屈せずひたすら前に進んだ。そして、翡翠のハネを広げ闇を打ち消し、雪菜を深く抱きしめた。その時モトスは、姿が忍び装束から高貴な貴族が着る若草色の束帯姿に変化した。そして、ハネからは翡翠に輝く美しい鱗粉と、優しく温かい桃の花びらが辺り一面に舞った。暗闇の雪原風景から春のような桃畑と色とりどりの花畑が無限に広がった。
「・・・綺麗な景色だね・・あなたは優しいんだわ、モトス。信友もあなたのような男だったら良かったのに・・・あいつを少しでも愛してしまった私の自業自得だけどね」
雪菜は涙を流しながら、優しくモトスに笑いかけた。
「森精霊は命尽きた時、蝶となり天に召され、再び精霊の花を咲かせ生まれ変わる、来世でもまた美しい精霊に転生するよ、絶対にな!!」
雪菜はボロボロのハネや小袖から美しい光沢を帯びた紅色のハネと桃色の小袖に変化し、笑顔で浄化された。同時に、梅雪の体内から眩い光が放出され、蛾のハネやムカデの尾は完全に消え去り、元の姿に戻った。