第1章 異説 武田の残党狩り編 桃源郷に集う勇士
その頃モトス達は新府城から富士川に沿って急ぎ身延方面へ向かっていた。桜龍は梅雪の居場所を念じていた。
「あいつは・・本栖湖で森精霊と僧兵と戦っている。しかし、あいつの邪悪な力で、どんどん自然が壊されている・・・」
(・・・梅雪・・奴は俺が止める!!)
モトスは深く気をため、森精霊同志が使える能力で梅雪の心に念じた。
(梅雪よ・・・俺が憎いのだろう。俺を消し去るのが目的なのだろう。これ以上お前の好きにはさせぬ!!)
梅雪は心の中にモトスの言葉が伝わっていた。
「モトスか、面白い。ちまちま精霊共の相手をするのも退屈だった。そろそろ決着をつけようか」
梅雪は北西の険しい山脈へ向かった。白州達は後を追いかけようとしたが、エンザンに止められた。
「我々にはあやつの憎しみを解放させることは出来ぬよ・・・ここはモトス達に任せるしかない」
(今のモトスならきっと梅雪と雪菜の憎悪の心を受け入れられる)
エンザンはモトスの力を信じていた。
モトスは4人にこれからの事を告げていた。
「皆、ここまで付いて来てくれて感謝する。だが、ここからは俺が決着を付けなければならぬ。それに・・・決戦の地は高く険しい山。今まで以上に過酷になる・・・」
球磨は不安な表情を浮かべ、モトスに尋ねた。
「ダンナ・・1人で戦うのかよ・・」
「梅雪は心の奥で苦しんでいる。あの者の苦しみを俺は受け入れなければならない。だから、皆はもう俺に付き合わなくて良い」
モトスが答えると、千里は引き止める事無く彼の瞳を見つめ、言った。
「・・・覚悟は出来ているのですね」
「ああ。薄々分かっていたのだ。梅雪がこうなってしまったのは俺の責任もあると・・・」
モトスは4人に深く頭を下げ、翡翠のハネを広げ空高く舞い上がった。そして、後に南アルプスと言われる西の赤石山脈へ向かった。湘と球磨は空を見上げながら悔やんでいた。
「く・・・モトスが駄目なところ責任感が強過ぎて1人で何でも抱えこむところだ・・」
「モトスさんは1人で決着を着けたいって行っていたが、放っておけねぇぜ!!」
すると、後ろから低い声の男が姿を現した。桜龍は直ぐに反応をした。
「卿達、モトスと共に戦うのか?」
「お!!江津じゃねーか!!」
球磨と湘は一瞬警戒したが、桜龍の穏やかな態度を見て納得していた。
「赤石山脈はいくら強靭な卿らでも、登るのに時間と体力を半端なく消耗する。着く前にバテてしまうな。・・・連れてってやろう」
「恩にきるぜ!!江津。皆んな、早くモトスさんと戦いに行こうぜ!!」
桜龍に促され、球磨と湘は江津を信じた。千里は桜龍の耳元で囁いた。
「この為に江津を生かしたのですか?」
桜龍は特に何も考えていなかったようで、キョトンとしていた。
「え?いいや・・・連れてってくれるなんて思ってなかった。陰険江津が意外だぜ」
「桜龍よ・・・これ以上減らず口を叩くと、卿だけ連れて行かんぞ」
桜龍はあちゃー聞こえてたと焦った顔をした。千里は呆気に取られながらも小さく笑っていた。湘と球磨は未だに信じ難いやり取りを見続けていた。
「・・・これが先程まで死闘をしていた2人には見えないな・・・」
「桜龍はそういうやつなんだよ。昨日の敵は今日の友ってやつ。昨日じゃ無くて数刻前だけどな・・・」
桜龍達は江津の放つ光に包まれ、転移の術で北岳に移動した。
北岳は、甲斐西部と南信濃と北駿河との境に面する長く険しい赤石山脈(現山梨県南アルプス市)であり、富士の次に標高が高い山である。モトスは翡翠のハネで岩肌の上を飛び続け、山頂に舞い降りた。すると、梅雪はすでにその地に降り立っていた。岩山に咲く高山植物は梅雪の放つ毒により枯れ果て、大地も腐敗し、黒く染まっていた。モトスは静かな怒りと闘志を梅雪に突きつけ、向き合った。
「この地は古来から美しき霊山と呼ばれていたが、死の山としたぞ。この際、甲斐国だけでは無く日ノ本中を腐敗した大地にしてやろう」
「・・・梅雪。俺はお前のことを何も知らなかった・・・。お前の過去も真実も今知ったよ。・・・だが、お前が今までしてきた事は許せぬ!!今ここでお前を討ち倒す!!」
「黙れ!!下賤のモトス!!貴様こそ腐敗した山で腐り果て死ぬがよい!!」
梅雪はモトスに素早く接近し扇で殴りかかった。モトスは双曲刀で受け止め、聖風の力を刀に帯させ払いのけた。そして、モトスは彼の巨大な扇を斬り裂き破壊した。梅雪は鋭い爪での攻撃を繰り出し、モトスは必死に避けた。爪はモトスの髪や頬をかすった。
「その憎たらしい顔を傷だらけにしてやる!!」
モトスは梅雪の腕を掴み引っ張り、勢いよく彼の腹部に蹴りを入れた。そして手の甲から蔦を出現させ、ハネとムカデの尾もろとも彼を拘束させた。
「梅雪よ・・・俺の存在がお前を苦しめていたのか・・・。お前の正体に気がつかず・・・すまなかった。どうか元の梅雪に戻ってくれ・・・」
モトスは双曲刀で梅雪を浄化させようとしたが・・・。
「それでは、貴様に最高の苦しみを味わいさせて、あの世へ送ってやる・・・」
梅雪は妖しく笑い、強力な蔦を破いた。そしてムカデの尾でモトスを拘束した。
「う・・・・く・・体に力が入らぬ・・・う!?あああああ!!!!!」
ムカデの尾からは生命力を吸収され、尾の棘からは猛毒が出された。モトスは体内が燃える程の痛さと苦しみを味わっていた。
「アーハハハハハ!!!このまま毒で腐り果てるか、力を吸われ干からびるか、どちらも見ものだなーモトス!!」
梅雪が勝ち誇った顔をしていると、どこからか炎と電撃が放たれた。梅雪は素早く避け辺りを見回すと、桜龍達が待ち構えていた。
「モトスの旦那を離しやがれ!!蛾ムカデ野郎!!」
「モトスさん!!今助けるぜ!!」
桜龍はムカデの尾に斬りかかろうとしたが、邪悪な結界に阻まれた。
「残念だったなー、貴様ら。ちょうど良い。この間受けた屈辱をここで晴らしてやる!!覚悟しな!!桜龍!!!」
梅雪は鋭い爪で桜龍を攻撃しようとしたが、千里が梅雪の周りに砂嵐を起こし目をくらませた。そして、湘が隙をついて氷の銃弾で梅雪を凍らせようとしたが、結界で氷は溶かされた。
「く・・・早くモトスを助けなければ危ないな・・・」
「あの結界を破らなければ・・・攻撃も通用しません」
梅雪は激しい雄たけびを上げ、4人を吹き飛ばした。
「モトスが死ぬのも時間の問題だな。その間に貴様らを始末してやる!!」
さらに梅雪は蛾のハネから毒の鱗粉をばら撒き、4人は手も足も出ず倒れてしまった。
「ちっくしょ・・・こんなところで終わってたまるかよ・・・」
「モトスさん!!目を覚ましてくれ!!梅雪の苦しみから解放できんのは、あなただけなんだから!!」
「 無駄な減らず口を叩きおって。これで終わりだ!!」
梅雪は必死に立ち上がろうとしている桜龍を爪で斬り倒そうとしたその時、後ろから儚い哀愁と強い希望を漂わせる美しく気高い琵琶の音色が流れ、梅雪の動きが止まった。
「あいつは・・本栖湖で森精霊と僧兵と戦っている。しかし、あいつの邪悪な力で、どんどん自然が壊されている・・・」
(・・・梅雪・・奴は俺が止める!!)
モトスは深く気をため、森精霊同志が使える能力で梅雪の心に念じた。
(梅雪よ・・・俺が憎いのだろう。俺を消し去るのが目的なのだろう。これ以上お前の好きにはさせぬ!!)
梅雪は心の中にモトスの言葉が伝わっていた。
「モトスか、面白い。ちまちま精霊共の相手をするのも退屈だった。そろそろ決着をつけようか」
梅雪は北西の険しい山脈へ向かった。白州達は後を追いかけようとしたが、エンザンに止められた。
「我々にはあやつの憎しみを解放させることは出来ぬよ・・・ここはモトス達に任せるしかない」
(今のモトスならきっと梅雪と雪菜の憎悪の心を受け入れられる)
エンザンはモトスの力を信じていた。
モトスは4人にこれからの事を告げていた。
「皆、ここまで付いて来てくれて感謝する。だが、ここからは俺が決着を付けなければならぬ。それに・・・決戦の地は高く険しい山。今まで以上に過酷になる・・・」
球磨は不安な表情を浮かべ、モトスに尋ねた。
「ダンナ・・1人で戦うのかよ・・」
「梅雪は心の奥で苦しんでいる。あの者の苦しみを俺は受け入れなければならない。だから、皆はもう俺に付き合わなくて良い」
モトスが答えると、千里は引き止める事無く彼の瞳を見つめ、言った。
「・・・覚悟は出来ているのですね」
「ああ。薄々分かっていたのだ。梅雪がこうなってしまったのは俺の責任もあると・・・」
モトスは4人に深く頭を下げ、翡翠のハネを広げ空高く舞い上がった。そして、後に南アルプスと言われる西の赤石山脈へ向かった。湘と球磨は空を見上げながら悔やんでいた。
「く・・・モトスが駄目なところ責任感が強過ぎて1人で何でも抱えこむところだ・・」
「モトスさんは1人で決着を着けたいって行っていたが、放っておけねぇぜ!!」
すると、後ろから低い声の男が姿を現した。桜龍は直ぐに反応をした。
「卿達、モトスと共に戦うのか?」
「お!!江津じゃねーか!!」
球磨と湘は一瞬警戒したが、桜龍の穏やかな態度を見て納得していた。
「赤石山脈はいくら強靭な卿らでも、登るのに時間と体力を半端なく消耗する。着く前にバテてしまうな。・・・連れてってやろう」
「恩にきるぜ!!江津。皆んな、早くモトスさんと戦いに行こうぜ!!」
桜龍に促され、球磨と湘は江津を信じた。千里は桜龍の耳元で囁いた。
「この為に江津を生かしたのですか?」
桜龍は特に何も考えていなかったようで、キョトンとしていた。
「え?いいや・・・連れてってくれるなんて思ってなかった。陰険江津が意外だぜ」
「桜龍よ・・・これ以上減らず口を叩くと、卿だけ連れて行かんぞ」
桜龍はあちゃー聞こえてたと焦った顔をした。千里は呆気に取られながらも小さく笑っていた。湘と球磨は未だに信じ難いやり取りを見続けていた。
「・・・これが先程まで死闘をしていた2人には見えないな・・・」
「桜龍はそういうやつなんだよ。昨日の敵は今日の友ってやつ。昨日じゃ無くて数刻前だけどな・・・」
桜龍達は江津の放つ光に包まれ、転移の術で北岳に移動した。
北岳は、甲斐西部と南信濃と北駿河との境に面する長く険しい赤石山脈(現山梨県南アルプス市)であり、富士の次に標高が高い山である。モトスは翡翠のハネで岩肌の上を飛び続け、山頂に舞い降りた。すると、梅雪はすでにその地に降り立っていた。岩山に咲く高山植物は梅雪の放つ毒により枯れ果て、大地も腐敗し、黒く染まっていた。モトスは静かな怒りと闘志を梅雪に突きつけ、向き合った。
「この地は古来から美しき霊山と呼ばれていたが、死の山としたぞ。この際、甲斐国だけでは無く日ノ本中を腐敗した大地にしてやろう」
「・・・梅雪。俺はお前のことを何も知らなかった・・・。お前の過去も真実も今知ったよ。・・・だが、お前が今までしてきた事は許せぬ!!今ここでお前を討ち倒す!!」
「黙れ!!下賤のモトス!!貴様こそ腐敗した山で腐り果て死ぬがよい!!」
梅雪はモトスに素早く接近し扇で殴りかかった。モトスは双曲刀で受け止め、聖風の力を刀に帯させ払いのけた。そして、モトスは彼の巨大な扇を斬り裂き破壊した。梅雪は鋭い爪での攻撃を繰り出し、モトスは必死に避けた。爪はモトスの髪や頬をかすった。
「その憎たらしい顔を傷だらけにしてやる!!」
モトスは梅雪の腕を掴み引っ張り、勢いよく彼の腹部に蹴りを入れた。そして手の甲から蔦を出現させ、ハネとムカデの尾もろとも彼を拘束させた。
「梅雪よ・・・俺の存在がお前を苦しめていたのか・・・。お前の正体に気がつかず・・・すまなかった。どうか元の梅雪に戻ってくれ・・・」
モトスは双曲刀で梅雪を浄化させようとしたが・・・。
「それでは、貴様に最高の苦しみを味わいさせて、あの世へ送ってやる・・・」
梅雪は妖しく笑い、強力な蔦を破いた。そしてムカデの尾でモトスを拘束した。
「う・・・・く・・体に力が入らぬ・・・う!?あああああ!!!!!」
ムカデの尾からは生命力を吸収され、尾の棘からは猛毒が出された。モトスは体内が燃える程の痛さと苦しみを味わっていた。
「アーハハハハハ!!!このまま毒で腐り果てるか、力を吸われ干からびるか、どちらも見ものだなーモトス!!」
梅雪が勝ち誇った顔をしていると、どこからか炎と電撃が放たれた。梅雪は素早く避け辺りを見回すと、桜龍達が待ち構えていた。
「モトスの旦那を離しやがれ!!蛾ムカデ野郎!!」
「モトスさん!!今助けるぜ!!」
桜龍はムカデの尾に斬りかかろうとしたが、邪悪な結界に阻まれた。
「残念だったなー、貴様ら。ちょうど良い。この間受けた屈辱をここで晴らしてやる!!覚悟しな!!桜龍!!!」
梅雪は鋭い爪で桜龍を攻撃しようとしたが、千里が梅雪の周りに砂嵐を起こし目をくらませた。そして、湘が隙をついて氷の銃弾で梅雪を凍らせようとしたが、結界で氷は溶かされた。
「く・・・早くモトスを助けなければ危ないな・・・」
「あの結界を破らなければ・・・攻撃も通用しません」
梅雪は激しい雄たけびを上げ、4人を吹き飛ばした。
「モトスが死ぬのも時間の問題だな。その間に貴様らを始末してやる!!」
さらに梅雪は蛾のハネから毒の鱗粉をばら撒き、4人は手も足も出ず倒れてしまった。
「ちっくしょ・・・こんなところで終わってたまるかよ・・・」
「モトスさん!!目を覚ましてくれ!!梅雪の苦しみから解放できんのは、あなただけなんだから!!」
「 無駄な減らず口を叩きおって。これで終わりだ!!」
梅雪は必死に立ち上がろうとしている桜龍を爪で斬り倒そうとしたその時、後ろから儚い哀愁と強い希望を漂わせる美しく気高い琵琶の音色が流れ、梅雪の動きが止まった。