第1章 異説 武田の残党狩り編 桃源郷に集う勇士
林の中の小さな廃屋に入ると、双葉と玄杜は暖かい布団を掛けられて眠っていた。湘は双葉を優しく起こした。
「う・・あ・・あなたは湘?どうしてここに?私は確か・・・勝頼様が自害をし・・私も後を追おうと・・・」
双葉は頭を押さえながら混乱していた。湘は彼女の体を支えながら話を聞いた。
(双葉殿・・・梅雪の元に囚われていた時の記憶は無いのか?)
「湘・・・私を北条家に帰らせるために、氏政兄様の命で来たのね・・・。危ない中、ありがとう・・・。だけど・・勝頼様はもう居ない。武田家は滅んでしまった・・・・」
双葉は湘の胸の中で涙を流した。湘は彼女の小さい体を抱きしめようとしたが・・・
「のぶやしゅ・・?のぶやす・・あしょぼ・・・のぶやしゅ・・」
目を覚ました玄杜が、無邪気に信康の名を呼んでいた。湘は双葉を抱きしめるのをためらってしまった。
(・・・したたかなようで詰めの甘い男め。愛してしまった女と子を置いて先に逝くなどと・・・)
湘は心の中で信康に怒りを込めていた。そして、玄杜の揺り篭の中に入っていた文を読んだ。
双葉殿と玄杜の事は君にお願いする。
(何か私に変な誤解をしているようだな・・・だが、言われなくとも2人の身はしっかりと護るつもりだ)
湘は桜龍から貰った御守りに力を込めると、3人は大きな泡に包まれ、大雨から護られた。そして、雨が止んだ頃に西沢渓谷を降りると、モトス達が迎えに来てくれた。モトスは嬉しそうに2人の無事を確認した。
「双葉様!!玄杜様!!よくぞご無事で!!!」
双葉と玄杜はお都留に連れられ、西の石和の地(現山梨県笛吹市)で休息をとった。
夜、新府城で息絶え絶えの梅雪は、江津と対峙していた。
「ついに、この姿になってしまったか・・・梅雪よ。やはり真実を知ってしまったのか。」
「ご・・う・・つ・・・貴様は・・知っていた・・・のか?俺と信康の正体を・・・・」
「卿の父の日記を見て知っただけだ。しかし・・・これでは卿ももう終わりだな。信康と厳美は姿を消してしまったし、白州は寝返えり、お都留も正気に戻った。私もそろそろ、桜龍と決着を付けに行きたい。まぁ、花くらいは添えてやろう」
江津が部屋を去ろうとした時、梅雪は体を引きずりながら、江津にすがり涙を流しながら懇願した。
「モ・・・モトスに勝ちたい!!江津よ!!俺の財産も領土も・・・魂も全てくれてやる!!・・・だから、モトスに勝てる力が欲しい!!信康も双葉も穴山家もどうでも良い!!」
江津は彼に優しく笑い、願いを受け入れた。
「・・・良かろう。これが最後に卿にしてやれる願いだ」
江津は梅雪の周りに黒い闇の魔法陣を出現させ、梅雪の魂を奪った。梅雪はあまりの苦しみで声が枯れるほどの叫びを上げた。
「ぐぅわあああああ!!!!モトスが憎い!!!!武田の者達が憎い!!!!!」
梅雪にはもはや、自我が失われ、モトス達への憎悪の心しか残されていなかった。梅雪の身体は徐々におどろおどろしい姿に変化していった。江津は手に付いた梅雪の血を舐めて笑いながら言った。
「梅雪よ・・・何とも美醜に満ちた血だ。血の色は美しいが、怨念と憎悪に満ちている、苦く毒のような味だ。だが、この味は嫌いではないぞ。心も体も悪に染まった私には至極の味だぞ・・・梅雪」
江津の笑みには悲しさも感じとられていた。
(私たち一族も、梅雪も信康も、戦国の世を壊す邪神の意のままに踊らされていたのか・・・・)
江津は悔しさの中に決意をしていた。
(桜龍や御伽勇士の力を見極めてみるか・・・汚れ役は私が請け負えば良い・・・)
江津は梅雪の部屋を去り、甲府へ向かった。
第10話 完
「う・・あ・・あなたは湘?どうしてここに?私は確か・・・勝頼様が自害をし・・私も後を追おうと・・・」
双葉は頭を押さえながら混乱していた。湘は彼女の体を支えながら話を聞いた。
(双葉殿・・・梅雪の元に囚われていた時の記憶は無いのか?)
「湘・・・私を北条家に帰らせるために、氏政兄様の命で来たのね・・・。危ない中、ありがとう・・・。だけど・・勝頼様はもう居ない。武田家は滅んでしまった・・・・」
双葉は湘の胸の中で涙を流した。湘は彼女の小さい体を抱きしめようとしたが・・・
「のぶやしゅ・・?のぶやす・・あしょぼ・・・のぶやしゅ・・」
目を覚ました玄杜が、無邪気に信康の名を呼んでいた。湘は双葉を抱きしめるのをためらってしまった。
(・・・したたかなようで詰めの甘い男め。愛してしまった女と子を置いて先に逝くなどと・・・)
湘は心の中で信康に怒りを込めていた。そして、玄杜の揺り篭の中に入っていた文を読んだ。
双葉殿と玄杜の事は君にお願いする。
(何か私に変な誤解をしているようだな・・・だが、言われなくとも2人の身はしっかりと護るつもりだ)
湘は桜龍から貰った御守りに力を込めると、3人は大きな泡に包まれ、大雨から護られた。そして、雨が止んだ頃に西沢渓谷を降りると、モトス達が迎えに来てくれた。モトスは嬉しそうに2人の無事を確認した。
「双葉様!!玄杜様!!よくぞご無事で!!!」
双葉と玄杜はお都留に連れられ、西の石和の地(現山梨県笛吹市)で休息をとった。
夜、新府城で息絶え絶えの梅雪は、江津と対峙していた。
「ついに、この姿になってしまったか・・・梅雪よ。やはり真実を知ってしまったのか。」
「ご・・う・・つ・・・貴様は・・知っていた・・・のか?俺と信康の正体を・・・・」
「卿の父の日記を見て知っただけだ。しかし・・・これでは卿ももう終わりだな。信康と厳美は姿を消してしまったし、白州は寝返えり、お都留も正気に戻った。私もそろそろ、桜龍と決着を付けに行きたい。まぁ、花くらいは添えてやろう」
江津が部屋を去ろうとした時、梅雪は体を引きずりながら、江津にすがり涙を流しながら懇願した。
「モ・・・モトスに勝ちたい!!江津よ!!俺の財産も領土も・・・魂も全てくれてやる!!・・・だから、モトスに勝てる力が欲しい!!信康も双葉も穴山家もどうでも良い!!」
江津は彼に優しく笑い、願いを受け入れた。
「・・・良かろう。これが最後に卿にしてやれる願いだ」
江津は梅雪の周りに黒い闇の魔法陣を出現させ、梅雪の魂を奪った。梅雪はあまりの苦しみで声が枯れるほどの叫びを上げた。
「ぐぅわあああああ!!!!モトスが憎い!!!!武田の者達が憎い!!!!!」
梅雪にはもはや、自我が失われ、モトス達への憎悪の心しか残されていなかった。梅雪の身体は徐々におどろおどろしい姿に変化していった。江津は手に付いた梅雪の血を舐めて笑いながら言った。
「梅雪よ・・・何とも美醜に満ちた血だ。血の色は美しいが、怨念と憎悪に満ちている、苦く毒のような味だ。だが、この味は嫌いではないぞ。心も体も悪に染まった私には至極の味だぞ・・・梅雪」
江津の笑みには悲しさも感じとられていた。
(私たち一族も、梅雪も信康も、戦国の世を壊す邪神の意のままに踊らされていたのか・・・・)
江津は悔しさの中に決意をしていた。
(桜龍や御伽勇士の力を見極めてみるか・・・汚れ役は私が請け負えば良い・・・)
江津は梅雪の部屋を去り、甲府へ向かった。
第10話 完