第1章 異説 武田の残党狩り編 桃源郷に集う勇士
正午になり、湘は西沢渓谷の七ツ釜の滝にたどり着いた。五段の滝壺は日光に照らされ、美しい青色に染まっていた。
「ふぅ・・・笛吹川の源流地まで上るのも結構距離があったな・・それにしても、わざわざこんな所に私をおびき出すとは・・・」
湘は軽やかに跳躍しながら五段の滝を上って行った。周りの木々を見回しながら双葉と玄杜が拘束されている廃屋を探していた。
(雲行きが怪しくなってきたな・・・山の天気は変わりやすい。早く2人を救出しなくては!!)
湘が急いで廃屋を探していると、木と木の間から屋根らしきものが見えた。湘は直ぐに木の枝を避けながら廃屋へ向かおうとした瞬間、湘は木の影から殺気を感じ、素早く木陰に隠れ、放たれた銃弾を防いだ。湘は呆れた口調で銃弾が放たれた方向に嫌味を言った。
「これが君の挨拶の仕方かねぇ?これでは交渉ではなく暗殺ではないのかい?」
湘が笑いながら睨むと、木陰から2丁の短銃を装備している信康が姿を現した。
「ふふふ・・・。お初にお目にかかります。僕は信康。貴殿は北条家に仕える湘殿ですかね?」
信康は朗らかな口調で自己紹介をした。
「ほう・・・君が梅雪の腹心かい?確かに、容姿と性格の悪さは梅雪にそっくりだ。初めから素直に挨拶したらよいのではないか?」
「それはすまなかった。この程度の不意打ちで死なれては救いたい者も救えないからねー。試させてもらったよ」
信康が毒のある言葉を続けていると、湘は銃剣で彼の頬を目掛け発砲した。信康の右頬から血が流れた。
「私はお喋りで陰険で口が悪い男が嫌いなんでね。今すぐに双葉殿と玄杜様を返してもらうよ!!」
湘が銃剣を構えると、信康は篭手から仕込み刃を出し、疾風の如き速さで湘に襲い掛かった。湘は攻撃を避けながら滝壺へ信康を誘き出した。
(やれやれ・・・武闘派と戦うのか。私は肉弾戦は苦手だから、私が有利になる所で戦わせてもらうよ!)
渓谷の空は雲に覆われ雨が降り始めた。湘は滝の水流を利用し巨大な水龍を召還した。そして、信康に激しく巨大な水龍をぶつけた。
「う・・・ぐわぁー!!!!!!」
信康は水流の威力と、激しい水圧に押し流された。
「ふん・・・これで少しは頭を冷やしたまえ!!」
湘は怯んでいる信康に氷の弾を当てようとしたが、信康が渾身の力で雷光を帯びた弾を撃った。湘は素早く避けたが、肩に弾が当たってしまった。
「うわぁぁ!!!く・・・う・・・・」
湘の肩に付着した球からは電撃が発動され、体全体を感電させた。電撃は彼の濡れた体に威力を増していた。
「ははははは!!!お前は海の一族のようだから、水辺の戦いが有利だということ位分かっているぞ!!わざとお前の作戦に乗ったのだよ!!」
信康は勝ち誇った顔をしながら、滝壺にうつ伏せに倒れた湘に馬乗りし、右手で彼の首を絞め、海老反り状に引き上げて、首と背骨に攻撃を与えた。
「この程度の力か、湘!!これでは、双葉も玄杜も護れないぞ!!2人を助けたければ、僕を倒せ!!」
「う・・・私は・・正直、君を侮っていたな・・・。力では君には勝てぬよ・・・。ただ・・1つだけ聞いて良いか?これは梅雪の命なのか・・?それとも、信康の意志なのか・・・?」
湘は苦しみながらも彼に質問をした。
「・・・いずれ分かることだけど、教えてあげよう。梅雪などは始めから存在していなかったのだよ。・・・だから双葉も玄杜も穴山に居る意味がなくなった」
「な!?それはどういうことだ!!・・・う!?」
湘は信康の言葉に深い疑念を持ち質問を返したが、こめかみに銃を当てられた。
「おっと、話すのはここまでだよ。お前はここで終わりだ!!」
信康が引き金を引こうとした時、湘は不敵な笑みを浮かべ姿を変形させた。
「君はまさか、主君に謀反をしたのかい?」
湘の下半身は人魚の姿となり、瑠璃色の尾が出現した。信康は彼の変形した体に体勢を崩し、湘は解放された。湘は大きな尾びれに、信康の腹部を乗せ上げ、イルカのような跳躍力と蹴りの力で、信康を空高く飛ばした。信康は衝撃で深い滝壺に落下した。
「はぁ・・・はぁ・・やはり御伽勇士は・・・強いな・・・」
信康は甲冑の重さと濡れた体で動作が鈍りながらも、水面から上がろうとした。しかし、すでに元の姿に戻っている湘に銃剣を向けられていた。
「形勢逆転・・・と言いたいところだが、信康には梅雪の事とか、聞きたいことが山ほどある。双葉殿と共にモトスの元に来てもらおうか」
湘が信康を水の術で拘束しようとした時、大雨による七ツ釜の上流が決壊したことにより、大量の水が流れ込んできた。湘は急いで高い木に飛び移った。流されている信康を助けようとしたが、彼は笑顔で、双葉と玄杜の元へ行けと促した。信康は五段の滝から姿を消した。
「・・・結局、信康の真意が分からなかったな・・・」
湘は信康の事を考えながら、2人が拘束されている廃屋へ向かった。
「ふぅ・・・笛吹川の源流地まで上るのも結構距離があったな・・それにしても、わざわざこんな所に私をおびき出すとは・・・」
湘は軽やかに跳躍しながら五段の滝を上って行った。周りの木々を見回しながら双葉と玄杜が拘束されている廃屋を探していた。
(雲行きが怪しくなってきたな・・・山の天気は変わりやすい。早く2人を救出しなくては!!)
湘が急いで廃屋を探していると、木と木の間から屋根らしきものが見えた。湘は直ぐに木の枝を避けながら廃屋へ向かおうとした瞬間、湘は木の影から殺気を感じ、素早く木陰に隠れ、放たれた銃弾を防いだ。湘は呆れた口調で銃弾が放たれた方向に嫌味を言った。
「これが君の挨拶の仕方かねぇ?これでは交渉ではなく暗殺ではないのかい?」
湘が笑いながら睨むと、木陰から2丁の短銃を装備している信康が姿を現した。
「ふふふ・・・。お初にお目にかかります。僕は信康。貴殿は北条家に仕える湘殿ですかね?」
信康は朗らかな口調で自己紹介をした。
「ほう・・・君が梅雪の腹心かい?確かに、容姿と性格の悪さは梅雪にそっくりだ。初めから素直に挨拶したらよいのではないか?」
「それはすまなかった。この程度の不意打ちで死なれては救いたい者も救えないからねー。試させてもらったよ」
信康が毒のある言葉を続けていると、湘は銃剣で彼の頬を目掛け発砲した。信康の右頬から血が流れた。
「私はお喋りで陰険で口が悪い男が嫌いなんでね。今すぐに双葉殿と玄杜様を返してもらうよ!!」
湘が銃剣を構えると、信康は篭手から仕込み刃を出し、疾風の如き速さで湘に襲い掛かった。湘は攻撃を避けながら滝壺へ信康を誘き出した。
(やれやれ・・・武闘派と戦うのか。私は肉弾戦は苦手だから、私が有利になる所で戦わせてもらうよ!)
渓谷の空は雲に覆われ雨が降り始めた。湘は滝の水流を利用し巨大な水龍を召還した。そして、信康に激しく巨大な水龍をぶつけた。
「う・・・ぐわぁー!!!!!!」
信康は水流の威力と、激しい水圧に押し流された。
「ふん・・・これで少しは頭を冷やしたまえ!!」
湘は怯んでいる信康に氷の弾を当てようとしたが、信康が渾身の力で雷光を帯びた弾を撃った。湘は素早く避けたが、肩に弾が当たってしまった。
「うわぁぁ!!!く・・・う・・・・」
湘の肩に付着した球からは電撃が発動され、体全体を感電させた。電撃は彼の濡れた体に威力を増していた。
「ははははは!!!お前は海の一族のようだから、水辺の戦いが有利だということ位分かっているぞ!!わざとお前の作戦に乗ったのだよ!!」
信康は勝ち誇った顔をしながら、滝壺にうつ伏せに倒れた湘に馬乗りし、右手で彼の首を絞め、海老反り状に引き上げて、首と背骨に攻撃を与えた。
「この程度の力か、湘!!これでは、双葉も玄杜も護れないぞ!!2人を助けたければ、僕を倒せ!!」
「う・・・私は・・正直、君を侮っていたな・・・。力では君には勝てぬよ・・・。ただ・・1つだけ聞いて良いか?これは梅雪の命なのか・・?それとも、信康の意志なのか・・・?」
湘は苦しみながらも彼に質問をした。
「・・・いずれ分かることだけど、教えてあげよう。梅雪などは始めから存在していなかったのだよ。・・・だから双葉も玄杜も穴山に居る意味がなくなった」
「な!?それはどういうことだ!!・・・う!?」
湘は信康の言葉に深い疑念を持ち質問を返したが、こめかみに銃を当てられた。
「おっと、話すのはここまでだよ。お前はここで終わりだ!!」
信康が引き金を引こうとした時、湘は不敵な笑みを浮かべ姿を変形させた。
「君はまさか、主君に謀反をしたのかい?」
湘の下半身は人魚の姿となり、瑠璃色の尾が出現した。信康は彼の変形した体に体勢を崩し、湘は解放された。湘は大きな尾びれに、信康の腹部を乗せ上げ、イルカのような跳躍力と蹴りの力で、信康を空高く飛ばした。信康は衝撃で深い滝壺に落下した。
「はぁ・・・はぁ・・やはり御伽勇士は・・・強いな・・・」
信康は甲冑の重さと濡れた体で動作が鈍りながらも、水面から上がろうとした。しかし、すでに元の姿に戻っている湘に銃剣を向けられていた。
「形勢逆転・・・と言いたいところだが、信康には梅雪の事とか、聞きたいことが山ほどある。双葉殿と共にモトスの元に来てもらおうか」
湘が信康を水の術で拘束しようとした時、大雨による七ツ釜の上流が決壊したことにより、大量の水が流れ込んできた。湘は急いで高い木に飛び移った。流されている信康を助けようとしたが、彼は笑顔で、双葉と玄杜の元へ行けと促した。信康は五段の滝から姿を消した。
「・・・結局、信康の真意が分からなかったな・・・」
湘は信康の事を考えながら、2人が拘束されている廃屋へ向かった。