第1章 異説 武田の残党狩り編 桃源郷に集う勇士
現実に戻り、モトスが深い眠りにつき昔の夢を見ている時、新府城で梅雪は
双葉に紅玉の耳飾りを外され、森精霊であった封印が解かれた。しかし・・・それは禍々しい異形な物の怪と化し、梅雪の面影は無かった。
「ば・・バカな・・・俺は森精霊の・・・成り損ないだった・・・の・・か・・・!?ゔぅ!!!ゲホ・・・・ゲホ・・・」
梅雪は突然口から血を吐いた。双葉は彼の変わり果てた姿に信じられない思いでいっぱいだったが、苦しんでいる梅雪を助けたいと思った。
「ば・・梅雪!!あなたは一体・・・?でも、このままにはしておけないわ!!厳美を呼んで来る!!」
双葉は急いで部屋を出ようとした時、梅雪に強く足を掴まれ、転んでしまった。
「・・・待てよ・・双葉・・・・よくも俺を・・・こんな醜い姿にしてくれたな・・・・・このままでは済まさんぞ!!!お前と玄杜を喰い殺してやる!!!!」
「い・・・嫌あー!!!梅雪!!正気に戻りなさい!!あなたをこんな姿にさせた私はどうなっても良いから・・・玄杜には手を出さないで!!」
双葉は押し倒されながらも必死に訴えた。
「うるさい!!問答無用!!まずはお前から喰ってやる!!!!」
梅雪は怒り狂いながら双葉の喉元を噛もうとしたその時、双葉を庇うように、信康が前に立ちはだかった。彼は梅雪に左腕を噛まれながらも必死な姿で短銃を構えていた。
「う・・ぐ・・の・・ぶや・・・す・・・・・」
「梅雪様・・・その姿は・・・森精霊?・・・・あなたは穴山家の当主ではなかったのですか?」
信康は梅雪の変わり果てた姿を見て、戸惑っていたが、目の前で震えている双葉を護る為に、恐れる事なく主の心臓に銃弾を放った。梅雪の胸からは血が流れたが、直ぐには息絶えなかった。
「の・・ぶやす・・・これは違うのだ!!俺は・・・穴山家の・・信友の息子だ!!・・・・モトスの同胞ではない!!ゴボオ!!!!」
梅雪は血を吐き苦しみながら必死に信康に訴えた。しかし、信康はニヤッと冷酷な笑みを浮かべ、梅雪の肩を撃った。
「僕は・・・今まで、偽りの当主に仕えていたのか・・・しかも、森精霊の成り損ないの貴様に!!!」
信康は梅雪のボロボロのハネを強く踏みつけた。そして、後ろで戸惑いながら立ちすくんでいる双葉に感情を殺した口調で言った。
「双葉殿・・・僕はこいつと決着を付ける・・・あなたは玄杜を連れて安全な場所に逃げてください・・・・・」
双葉は今の信康を止めることが出来ないことと、息子の安全を考え、信康に礼を言い部屋を急いで出た。梅雪は怒り狂いながら信康を睨みつけた。
「信康!!!!ぎざまー!!!!!双葉まで奪うのか!!!!」
「・・・どうせ、双葉殿には一切の愛は無く、勝頼から妻を奪ったという満足感だけだったのだろ!!だが、今のお前はもう権力と名高き穴山家の当主では無くなったな」
「く・・・信康!!俺への恩を忘れたのか!!俺は・・・笛吹川の氾濫で野垂れ死ぬ寸前のお前を助けてやったのだぞ!!穴山家の小姓として良い暮らしもさせてやったのだぞ!!」
梅雪は信康の胴にしがみついたが、信康に胸を蹴られてしまった。そして、信康は冷徹な瞳を梅雪に向けて言った。
「助けてくれたことにはとても感謝していますよ。梅雪サマ。おかげで、真の当主が今ここに生きているのだから」
梅雪はうつろな表情で信康の言葉を聞いた。
「僕が穴山家当主、穴山信君(のぶただ)なのだよ!!!!」
信康は腕から血を流しながらも2丁の短銃を構え、梅雪目掛け連射した。城内では激しい銃声と梅雪のうめき声が響き渡っていた。双葉は玄杜を連れ、本丸の外に出ていた。そして、信康の身を案じながら闇色に染まっている本丸を眺めていた。
(信康・・・・お願い・・私と玄杜の元に戻って来て・・・)
今から少し前
双葉が梅雪の部屋に入る前、信康は厳美に問い詰めていた。
「今日、躑躅が崎館の書庫に行ったが、特に変わった本は無かったぞ!!お前の言っている真実とは何なのだ?」
必死な顔で質問をしている信康に対し、厳美は能天気に笑っていた。
「あ・・あれは・・・すいませんねぇー。性悪の神官さんが証拠を消してしまいましたー。で・も、信康さんに答えを導いてあげますよー♪そ・れ・は、穴山家の昔話でーす♪」
穴山信友の息子には、梅雪ともう1人、信君(のぶただ)という跡継ぎにしようとした実子が存在していた。しかし、信君は生まれて直ぐに病にかかり、息絶えた。そして信友は息子を笛吹川の河原に捨てた。
「確か、信康さんも赤ちゃんの時に、同じ場所に捨てられていたと言っていましたねー」
厳美は再び話を続けた。
そして、数年後に、笛吹川の氾濫で信康を拾い育ててくれた家族は皆流され、亡くなった。そこを、梅雪が信康の命を救ってくれた。
「その後に、信友様が書いた日記に、こう記してあったのですよー。こんなこともあろうかと、この1枚だけ切り取っておきましたー」
どうやら、江津に日記を見られる前に事前に一枚切り取っていたようだ。信康はじっくりと読んでみると、かなり動揺していた。しかし、心の奥では勝ち誇った風に見えた。
「信君は・・・僕だったのか・・・?僕が穴山家の真の当主だったのか・・・それでは、梅雪・・・様は一体?」
信康が梅雪の正体を考えていると、厳美は静かに笑いながら彼に忠告をした。
「そういえば先ほど、双葉様が梅雪様の寝室に入って行くのを見ましたよー。姫様、何か無謀な事をしそうな顔でしたよー」
信康は急いで梅雪の寝室へ向かった。
(穴山家の当主は梅雪ではなかった・・・そんな奴に双葉殿は渡すものか!!!)
厳美は信康の後ろ姿を眺めながら、妖しく笑っていた。
「破滅への道に進み始めましたねー♪さぁ、これからどうしますかー?御伽勇士の皆さん♪」
現在に戻り、梅雪は信康に銃弾を撃たれ続け、虫の息であった。信康は父、信友が残した1枚の日記を彼の前で読んだ。
「梅雪が拾った小姓、信康は間違いなく正妻との間に生まれた信君だ。赤子の時に笛吹川に捨てたのに生きていたのか・・・?しかし、今更当主を代えられない・・・。信君は信康として梅雪の影をしてもらう・・・・と書いてあったよ。・・・真の当主が偽者の影をしていたなんて笑いが止まらないよ」
「う・・・黙れ・・・信康・・・俺を哀れな目で・・・見るな」
信康は冷たく笑いながら倒れている梅雪の床に発砲した。そして別れの言葉を告げた。
「さよなら。元主どの。僕は新しい穴山家を創るよ。僕はもう影ではなく光として生きるのだよ!!!」
信康は梅雪の寝室を出た。すると、廊下で厳美が待機していた。
「そんな腕で出かけるのは無茶ですよー信康さん。今、噛まれた傷を治しますよー」
厳美は信康の左腕の傷を不思議な特効薬により、傷口から流れる血は直ぐに止まり驚異的に体力も回復した。
「ふふふ。直ぐに治ったでしょー♪この薬は私が作ったのですよー。力もモリモリ湧いてきますよ」
「・・・恩に着る、厳美。・・・正直、お前の事胡散臭い者かと思っていたが、真実を教えてくれてありがとう。僕はこれから穴山家の為に・・・自分自身に決着を付けて来るよ」
「甲斐の残党狩りはどうしましょー?」
「・・・もう梅雪は居なくなった。穴山と織田兵はモトス達に敗れると思う。だから、厳美も江津殿も、あと白州も、これ以上残党狩りは続けなくていい・・・僕が新しい平和な甲斐の国を築き上げたい」
凛とした強い意志の信康に、厳美は分かりましたと笑い、信康と別れた。しかし、厳美は信康が去った後に胡散臭い笑みを浮かべていた。
(ふふふ・・・信康さん。随分と甘くお優しい志しですね。そんなあなたには面白い事をさせてあげますよー♪)
信康が新府城の門を出ようとした時、双葉と玄杜が待ち構えて居た。
「・・・信康、私たちの元へ戻って来てくれたの?・・・それともまさか・・・どこかへ行ってしまうの?」
双葉は真剣な顔で信康に問い詰めたが信康は黙っていた。双葉は必死に言葉を続けた。
「あなたは穴山家の当主なんかではないわ!!あなたは信康よ!!穴山なんて存続させる必要なんて無い!!あなたは何も罪を背負うことなんて無い!!私が梅雪を殺めたのだから!!」
「・・・双葉殿、玄杜を抱っこして良いですか?」
信康は優しい表情で玄杜を抱き、ゆっくりと赤ん坊のおでこを撫でた。
「きゃっきゃ!!のぶやしゅ!!のぶやしゆぅー!!」
玄杜は無邪気に嬉しそうに彼の名を呼んでいた。その姿を見た双葉は笑顔で信康を説得した。
「私たち3人で平和に暮らそうよ!!何も縛られる事無く!!ぶどう園を営んで、ぶどう酒を造ろうよ!!」
「双葉殿・・・玄杜・・・ありがとう」
信康は嬉し涙を流している双葉の涙を手で拭い、彼女の口に口付けをした。その時、双葉は小さい珠薬を飲まされた。双葉は急に眠気に見舞われ、信康が支えた。
「けど・・・すまない。僕はこれから修羅の道に進む。君たちは僕といてはいけない・・・」
「い・・・や・・・いかない・・で・・・信康・・・・」
信康は深い眠りについた双葉と、無邪気に笑っている玄杜を荷台に寝かせた。そして夜が明け、馬の後ろに荷台を付け新府城を出発した。
双葉に紅玉の耳飾りを外され、森精霊であった封印が解かれた。しかし・・・それは禍々しい異形な物の怪と化し、梅雪の面影は無かった。
「ば・・バカな・・・俺は森精霊の・・・成り損ないだった・・・の・・か・・・!?ゔぅ!!!ゲホ・・・・ゲホ・・・」
梅雪は突然口から血を吐いた。双葉は彼の変わり果てた姿に信じられない思いでいっぱいだったが、苦しんでいる梅雪を助けたいと思った。
「ば・・梅雪!!あなたは一体・・・?でも、このままにはしておけないわ!!厳美を呼んで来る!!」
双葉は急いで部屋を出ようとした時、梅雪に強く足を掴まれ、転んでしまった。
「・・・待てよ・・双葉・・・・よくも俺を・・・こんな醜い姿にしてくれたな・・・・・このままでは済まさんぞ!!!お前と玄杜を喰い殺してやる!!!!」
「い・・・嫌あー!!!梅雪!!正気に戻りなさい!!あなたをこんな姿にさせた私はどうなっても良いから・・・玄杜には手を出さないで!!」
双葉は押し倒されながらも必死に訴えた。
「うるさい!!問答無用!!まずはお前から喰ってやる!!!!」
梅雪は怒り狂いながら双葉の喉元を噛もうとしたその時、双葉を庇うように、信康が前に立ちはだかった。彼は梅雪に左腕を噛まれながらも必死な姿で短銃を構えていた。
「う・・ぐ・・の・・ぶや・・・す・・・・・」
「梅雪様・・・その姿は・・・森精霊?・・・・あなたは穴山家の当主ではなかったのですか?」
信康は梅雪の変わり果てた姿を見て、戸惑っていたが、目の前で震えている双葉を護る為に、恐れる事なく主の心臓に銃弾を放った。梅雪の胸からは血が流れたが、直ぐには息絶えなかった。
「の・・ぶやす・・・これは違うのだ!!俺は・・・穴山家の・・信友の息子だ!!・・・・モトスの同胞ではない!!ゴボオ!!!!」
梅雪は血を吐き苦しみながら必死に信康に訴えた。しかし、信康はニヤッと冷酷な笑みを浮かべ、梅雪の肩を撃った。
「僕は・・・今まで、偽りの当主に仕えていたのか・・・しかも、森精霊の成り損ないの貴様に!!!」
信康は梅雪のボロボロのハネを強く踏みつけた。そして、後ろで戸惑いながら立ちすくんでいる双葉に感情を殺した口調で言った。
「双葉殿・・・僕はこいつと決着を付ける・・・あなたは玄杜を連れて安全な場所に逃げてください・・・・・」
双葉は今の信康を止めることが出来ないことと、息子の安全を考え、信康に礼を言い部屋を急いで出た。梅雪は怒り狂いながら信康を睨みつけた。
「信康!!!!ぎざまー!!!!!双葉まで奪うのか!!!!」
「・・・どうせ、双葉殿には一切の愛は無く、勝頼から妻を奪ったという満足感だけだったのだろ!!だが、今のお前はもう権力と名高き穴山家の当主では無くなったな」
「く・・・信康!!俺への恩を忘れたのか!!俺は・・・笛吹川の氾濫で野垂れ死ぬ寸前のお前を助けてやったのだぞ!!穴山家の小姓として良い暮らしもさせてやったのだぞ!!」
梅雪は信康の胴にしがみついたが、信康に胸を蹴られてしまった。そして、信康は冷徹な瞳を梅雪に向けて言った。
「助けてくれたことにはとても感謝していますよ。梅雪サマ。おかげで、真の当主が今ここに生きているのだから」
梅雪はうつろな表情で信康の言葉を聞いた。
「僕が穴山家当主、穴山信君(のぶただ)なのだよ!!!!」
信康は腕から血を流しながらも2丁の短銃を構え、梅雪目掛け連射した。城内では激しい銃声と梅雪のうめき声が響き渡っていた。双葉は玄杜を連れ、本丸の外に出ていた。そして、信康の身を案じながら闇色に染まっている本丸を眺めていた。
(信康・・・・お願い・・私と玄杜の元に戻って来て・・・)
今から少し前
双葉が梅雪の部屋に入る前、信康は厳美に問い詰めていた。
「今日、躑躅が崎館の書庫に行ったが、特に変わった本は無かったぞ!!お前の言っている真実とは何なのだ?」
必死な顔で質問をしている信康に対し、厳美は能天気に笑っていた。
「あ・・あれは・・・すいませんねぇー。性悪の神官さんが証拠を消してしまいましたー。で・も、信康さんに答えを導いてあげますよー♪そ・れ・は、穴山家の昔話でーす♪」
穴山信友の息子には、梅雪ともう1人、信君(のぶただ)という跡継ぎにしようとした実子が存在していた。しかし、信君は生まれて直ぐに病にかかり、息絶えた。そして信友は息子を笛吹川の河原に捨てた。
「確か、信康さんも赤ちゃんの時に、同じ場所に捨てられていたと言っていましたねー」
厳美は再び話を続けた。
そして、数年後に、笛吹川の氾濫で信康を拾い育ててくれた家族は皆流され、亡くなった。そこを、梅雪が信康の命を救ってくれた。
「その後に、信友様が書いた日記に、こう記してあったのですよー。こんなこともあろうかと、この1枚だけ切り取っておきましたー」
どうやら、江津に日記を見られる前に事前に一枚切り取っていたようだ。信康はじっくりと読んでみると、かなり動揺していた。しかし、心の奥では勝ち誇った風に見えた。
「信君は・・・僕だったのか・・・?僕が穴山家の真の当主だったのか・・・それでは、梅雪・・・様は一体?」
信康が梅雪の正体を考えていると、厳美は静かに笑いながら彼に忠告をした。
「そういえば先ほど、双葉様が梅雪様の寝室に入って行くのを見ましたよー。姫様、何か無謀な事をしそうな顔でしたよー」
信康は急いで梅雪の寝室へ向かった。
(穴山家の当主は梅雪ではなかった・・・そんな奴に双葉殿は渡すものか!!!)
厳美は信康の後ろ姿を眺めながら、妖しく笑っていた。
「破滅への道に進み始めましたねー♪さぁ、これからどうしますかー?御伽勇士の皆さん♪」
現在に戻り、梅雪は信康に銃弾を撃たれ続け、虫の息であった。信康は父、信友が残した1枚の日記を彼の前で読んだ。
「梅雪が拾った小姓、信康は間違いなく正妻との間に生まれた信君だ。赤子の時に笛吹川に捨てたのに生きていたのか・・・?しかし、今更当主を代えられない・・・。信君は信康として梅雪の影をしてもらう・・・・と書いてあったよ。・・・真の当主が偽者の影をしていたなんて笑いが止まらないよ」
「う・・・黙れ・・・信康・・・俺を哀れな目で・・・見るな」
信康は冷たく笑いながら倒れている梅雪の床に発砲した。そして別れの言葉を告げた。
「さよなら。元主どの。僕は新しい穴山家を創るよ。僕はもう影ではなく光として生きるのだよ!!!」
信康は梅雪の寝室を出た。すると、廊下で厳美が待機していた。
「そんな腕で出かけるのは無茶ですよー信康さん。今、噛まれた傷を治しますよー」
厳美は信康の左腕の傷を不思議な特効薬により、傷口から流れる血は直ぐに止まり驚異的に体力も回復した。
「ふふふ。直ぐに治ったでしょー♪この薬は私が作ったのですよー。力もモリモリ湧いてきますよ」
「・・・恩に着る、厳美。・・・正直、お前の事胡散臭い者かと思っていたが、真実を教えてくれてありがとう。僕はこれから穴山家の為に・・・自分自身に決着を付けて来るよ」
「甲斐の残党狩りはどうしましょー?」
「・・・もう梅雪は居なくなった。穴山と織田兵はモトス達に敗れると思う。だから、厳美も江津殿も、あと白州も、これ以上残党狩りは続けなくていい・・・僕が新しい平和な甲斐の国を築き上げたい」
凛とした強い意志の信康に、厳美は分かりましたと笑い、信康と別れた。しかし、厳美は信康が去った後に胡散臭い笑みを浮かべていた。
(ふふふ・・・信康さん。随分と甘くお優しい志しですね。そんなあなたには面白い事をさせてあげますよー♪)
信康が新府城の門を出ようとした時、双葉と玄杜が待ち構えて居た。
「・・・信康、私たちの元へ戻って来てくれたの?・・・それともまさか・・・どこかへ行ってしまうの?」
双葉は真剣な顔で信康に問い詰めたが信康は黙っていた。双葉は必死に言葉を続けた。
「あなたは穴山家の当主なんかではないわ!!あなたは信康よ!!穴山なんて存続させる必要なんて無い!!あなたは何も罪を背負うことなんて無い!!私が梅雪を殺めたのだから!!」
「・・・双葉殿、玄杜を抱っこして良いですか?」
信康は優しい表情で玄杜を抱き、ゆっくりと赤ん坊のおでこを撫でた。
「きゃっきゃ!!のぶやしゅ!!のぶやしゆぅー!!」
玄杜は無邪気に嬉しそうに彼の名を呼んでいた。その姿を見た双葉は笑顔で信康を説得した。
「私たち3人で平和に暮らそうよ!!何も縛られる事無く!!ぶどう園を営んで、ぶどう酒を造ろうよ!!」
「双葉殿・・・玄杜・・・ありがとう」
信康は嬉し涙を流している双葉の涙を手で拭い、彼女の口に口付けをした。その時、双葉は小さい珠薬を飲まされた。双葉は急に眠気に見舞われ、信康が支えた。
「けど・・・すまない。僕はこれから修羅の道に進む。君たちは僕といてはいけない・・・」
「い・・・や・・・いかない・・で・・・信康・・・・」
信康は深い眠りについた双葉と、無邪気に笑っている玄杜を荷台に寝かせた。そして夜が明け、馬の後ろに荷台を付け新府城を出発した。