第1章 異説 武田の残党狩り編 桃源郷に集う勇士
甲府の躑躅が崎館で、お都留は昔の夢を見ていた。それはまだ彼女が小精霊であった頃。
武田家に仕える忍びのモトスという少年がいた。お都留は山中湖の近くで、モトスが、駿河や相模への偵察や任務の際に会いに来てくれるのを待っていた。
ある日、少年モトスは山中湖の村を寄った時に、果樹園のおばちゃんから、たくさんの新鮮な桃を貰った。そして、湖周辺に集まる小精霊たちに小さく切って分け与えた。
「さぁ、みんなー!!たくさん食べるずら!!」
モトスは自分の手の平や膝、肩などに乗っている小精霊に優しく笑いながら桃を渡した。
「おいしいじゅらー♪」
「モトス兄ちゃん、にんむお疲れさまじゅらー♪おらも、モトス兄ちゃんのようなりっぱな忍びになりたいじゅらー!!」
小精霊たちはモトスに憧れの眼差しを向けていた。モトスは照れながら言った。
「おらなんてまだまだ忍びの見習いずらー。やっと甲斐の外への偵察を任された位ずら!!」
モトスは残っている桃を果物用包丁で切っていると、すぐそばの草むらで泣いている女の子の小精霊を見かけた。
「君は、お都留だったね・・・何で泣いているんずら?」
モトスは優しくお都留の小さな体を手に乗せた。すると、少女の瑠璃色の美しいハネと、浅葱色の着物と小さな足に細かい傷跡が見えた。モトスは直ぐに手の平から癒しの術をかけた。お都留は嬉しそうに礼を言った。
「あ・・ありがとう・・モトスさん。あたち・・・あのお花に触ったら、トゲが刺さって・・痛かったじゅら・・・」
お都留が差した方向に赤紫色のアザミの花があった。モトスはやっぱり・・と納得して言った。
「アザミで切っちまったかー。アザミの葉や蕾にはトゲがあるから、可愛らしい花でも近づいて遊んじゃダメずら!」
モトスはアザミのトゲの部分をお都留に教えた。すると、お都留はうつむきながらすねるように言った。
「モトスさんにこのお花を渡したかったじゅら・・花びらがふわふわで気持ちよさそうだったから・・・・」
モトスはお都留の絹のような銀色の髪を優しく撫でながら言った。
「気持ちだけでも十分嬉しいずら。それに、こんなに綺麗に咲いているアザミを見れて、元気になったずら!!」
お都留はモトスの太陽のような眩い笑顔を見て、顔を赤くした。そして、小さな心臓の鼓動が高まっていた。
「は・・はい!!モトスさん!!!」
「さぁ、お都留も桃をお食べ。美味しいずらよ~♪」
「ありがとう!!モトスさん。いただきますじゅら!!」
お都留は嬉しそうにモトスの手の平に乗り、小さく切った桃を食べた。
「・・つる・・・お都留!!」
躑躅が崎館の寝室で深い眠りについていたお都留は、江津に軽く肩を叩かれ、起こされた。
「あ・・江津様、おはようございます。・・・申し訳ございません・・寝過ごしてしまって!」
お都留は急いで布団から出て、江津に謝罪した。
「良い、気にするな。いくら卿が精霊戦士とはいえ、長旅は疲れたであろう。・・・それより、随分と楽しい夢を見ていたようだな。このまま目を覚まさんと思ったよ」
江津は薄く笑いながら言った。すると、お都留は困ったような顔をして否定した。
「楽しい夢など見ておりませんわ!!私は江津様や梅雪様に忠誠を誓ったのですから。昔の事など覚えてなどいません!!」
すると江津はお都留の暗く濁っている瑠璃色の瞳を見つめながら命令した。
「今、モトスと桜龍と湘が吉田集落から大月を経由して甲府へ向かおうとしている。迎え撃つ覚悟はあるか?特に卿が慕っているモトスをな」
お都留は冷めた顔で笑い、横に首を振った。
「ご心配に及ばずとも、邪魔者は消すまでです。そのような賊(モトス)、退治してあげますわ」
お都留は寝間着を脱ぎ、戦着に着替えた。江津は静かに笑いながら寝室を出た。
(ふふふふ。闇に心を支配された恋人を・・・真実の愛とやらで取り戻せるかな・・・・モトス)
武田家に仕える忍びのモトスという少年がいた。お都留は山中湖の近くで、モトスが、駿河や相模への偵察や任務の際に会いに来てくれるのを待っていた。
ある日、少年モトスは山中湖の村を寄った時に、果樹園のおばちゃんから、たくさんの新鮮な桃を貰った。そして、湖周辺に集まる小精霊たちに小さく切って分け与えた。
「さぁ、みんなー!!たくさん食べるずら!!」
モトスは自分の手の平や膝、肩などに乗っている小精霊に優しく笑いながら桃を渡した。
「おいしいじゅらー♪」
「モトス兄ちゃん、にんむお疲れさまじゅらー♪おらも、モトス兄ちゃんのようなりっぱな忍びになりたいじゅらー!!」
小精霊たちはモトスに憧れの眼差しを向けていた。モトスは照れながら言った。
「おらなんてまだまだ忍びの見習いずらー。やっと甲斐の外への偵察を任された位ずら!!」
モトスは残っている桃を果物用包丁で切っていると、すぐそばの草むらで泣いている女の子の小精霊を見かけた。
「君は、お都留だったね・・・何で泣いているんずら?」
モトスは優しくお都留の小さな体を手に乗せた。すると、少女の瑠璃色の美しいハネと、浅葱色の着物と小さな足に細かい傷跡が見えた。モトスは直ぐに手の平から癒しの術をかけた。お都留は嬉しそうに礼を言った。
「あ・・ありがとう・・モトスさん。あたち・・・あのお花に触ったら、トゲが刺さって・・痛かったじゅら・・・」
お都留が差した方向に赤紫色のアザミの花があった。モトスはやっぱり・・と納得して言った。
「アザミで切っちまったかー。アザミの葉や蕾にはトゲがあるから、可愛らしい花でも近づいて遊んじゃダメずら!」
モトスはアザミのトゲの部分をお都留に教えた。すると、お都留はうつむきながらすねるように言った。
「モトスさんにこのお花を渡したかったじゅら・・花びらがふわふわで気持ちよさそうだったから・・・・」
モトスはお都留の絹のような銀色の髪を優しく撫でながら言った。
「気持ちだけでも十分嬉しいずら。それに、こんなに綺麗に咲いているアザミを見れて、元気になったずら!!」
お都留はモトスの太陽のような眩い笑顔を見て、顔を赤くした。そして、小さな心臓の鼓動が高まっていた。
「は・・はい!!モトスさん!!!」
「さぁ、お都留も桃をお食べ。美味しいずらよ~♪」
「ありがとう!!モトスさん。いただきますじゅら!!」
お都留は嬉しそうにモトスの手の平に乗り、小さく切った桃を食べた。
「・・つる・・・お都留!!」
躑躅が崎館の寝室で深い眠りについていたお都留は、江津に軽く肩を叩かれ、起こされた。
「あ・・江津様、おはようございます。・・・申し訳ございません・・寝過ごしてしまって!」
お都留は急いで布団から出て、江津に謝罪した。
「良い、気にするな。いくら卿が精霊戦士とはいえ、長旅は疲れたであろう。・・・それより、随分と楽しい夢を見ていたようだな。このまま目を覚まさんと思ったよ」
江津は薄く笑いながら言った。すると、お都留は困ったような顔をして否定した。
「楽しい夢など見ておりませんわ!!私は江津様や梅雪様に忠誠を誓ったのですから。昔の事など覚えてなどいません!!」
すると江津はお都留の暗く濁っている瑠璃色の瞳を見つめながら命令した。
「今、モトスと桜龍と湘が吉田集落から大月を経由して甲府へ向かおうとしている。迎え撃つ覚悟はあるか?特に卿が慕っているモトスをな」
お都留は冷めた顔で笑い、横に首を振った。
「ご心配に及ばずとも、邪魔者は消すまでです。そのような賊(モトス)、退治してあげますわ」
お都留は寝間着を脱ぎ、戦着に着替えた。江津は静かに笑いながら寝室を出た。
(ふふふふ。闇に心を支配された恋人を・・・真実の愛とやらで取り戻せるかな・・・・モトス)