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第1章 異説 武田の残党狩り編 桃源郷に集う勇士

夕食後に球磨と千里はキクの家で夕食の片づけをしていると、キクが息を切らして家に入ってきた。
「白州は・・・白州を見なかったかね?」
キクが必死な顔で2人に尋ねると、球磨は小さい老女の体を支え、千里は竹筒の中に入っている水を飲ませてあげた。
「白州が居なくなったのか!?あの野郎・・・1人で抱え込みやがって・・・・」
「あの子が何も言わずに村を出ていくなんて初めてじゃ・・・何だか胸騒ぎがするのじゃよ・・・」
「球磨さん!!僕は村を護ります。あなたは白州の元へ行ってください。まだ遠くへは行っていません!!」
千里は強い口調で球磨に指示した。
「ああ!!あの野郎には言いてー事が山ほどあるからな!!あいつを見つけたら、直ぐに村に戻るぜ。それまでは村の事を任せたぞ!!千里!!」
千里は強く頷き、武器を確認した。そして、球磨はキクに笑顔で告げた。
「こんなに優しくて、本当の息子のように可愛がってくれる素敵なばっちゃんはあいつには勿体ないぜ・・・だから、あいつにはガツンと言って、連れ戻して来るよ!!」
「すまないねぇ・・・球磨さん。白州は小精霊の時から、わたしたち村人の為に働いてくれて、わたしたちも大切に育てたのじゃよ。・・・本当はすごく優しい子なんじゃ。ただ・・・どこで何の仕事をしているのやら・・・」
球磨は御守りとして、身に着けている十字架の首飾りをキクに渡し、西洋槍を担ぎ、村の外を出た。



村の近くの河口湖で、白州は黄金色のハネを広げ、飛び立とうとした。しかし、後ろから球磨が来たことに気づいた。
「やはり来たか・・・暴れ牛・・お前と千里は見逃そうと思っていたんだが」
「見逃そうって・・・お前まさか!?モトスさん達を殺ろうとしてるんじゃねーだろうな!!」
冷酷な口調で言う白州に球磨は怒りに満ちていた。
「・・・・そうだよ。俺は別行動をしている残りの3人を始末し、梅雪サマから莫大な報酬を手に入れる!!そして、この村の為に使うんだよ!!」
白州は大太刀を抜き、球磨に襲い掛かってきた。球磨は即座に槍を構え、攻撃を受け止めた。そして、怪力で白州の大太刀を払いのけた。
「てめぇは!!キクさんや村人達を欺いてまで悪に仕えて、本当に幸せなのか!!そして、キクさん達はそれを望んでいるのか!!」
球磨は槍を背にしまい、素手で白州に挑んだ。
「黙れ!!俺はばっちゃんが居る村を護りてーんだよ!!モトスやお前らのように全ての民を護るなんて綺麗ごとにしか聞こえねーんだよ!!」
白州も大太刀を背中の鞘に収め、素手で球磨の頬当て目掛け、強い拳をお見舞いした。
「・・く・・確かに、全ての民を護るなんて相当の覚悟が無ければ難しいかもしれない・・・だが、お前はキクさんの本当の気持ちを考えないで、勝手に報酬だの、住みやすく整備するだの、思い込みで動いているだけだろうが!!」
球磨は白州の腕を強く掴み、勢い良く湖に投げ飛ばし、頭から落としてやった。
「ちったあ頭を冷やせってんだ!!バカ州!!!」
球磨は怒りの一言をぶつけ、湖に落ちた白州を睨みつけた。しかし、白州もしぶとく、直ぐに湖から出て、再びハネを出現させ、体勢を整えた。そして、白州は真剣な眼差しで球磨に言った。
「・・・球磨。ばっちゃんの事を助けてくれたり、村の手伝いをしてくれたのには感謝する。だが、俺にだって譲れないモノがあるんだよ!!村の皆が幸せに暮らせれば、俺は邪にもなれる!!」
白州は月光をハネに吸収させた。黄金色のハネは今までとは比べ物にならないほどの輝きを増し、ハネは一回り大きく変化した。
「これが最大級の俺の力だ!!俺を倒さねーと、梅雪の元へは行かれねーぞ!!」
白州は余裕の表情で球磨を挑発した。しかし、球磨は怒りを鎮め、静かに・・・そして、心に熱い闘志を燃やし、西洋槍に紅蓮のごとき熱い炎を纏わせた。
「・・・これは、裁きの炎だぜ、白州。お前が背負っている苦しみや辛さを燃やし尽くしてやるぜ!!」
「望むところだー!!!!」
2人は再び武器を交えた。裁き炎と月光の輝き。どちらも果てる事無く、夜の闇と静寂さを漂わせる湖面を照らしていた。
しばらく、互いの攻防が続くと、白州の方が最後の一撃の構えをとっていた。
「球磨ー!!!これで終わりにしてやる!!」
白州の体は、ハネの光から黄金色に染まり、大太刀も金色に染まった。そして、白州は大太刀を天高く掲げた。
「最後の技だ!!月光黄金蝶破斬(げっこうこがねちょうはざん)!!」
黄金色に輝く斬撃が放たれた。球磨は燃え盛る槍で攻撃を受け止め、不敵な笑みを浮かべ、彼もまた強大な技で決めようとした。
「これが・・・精霊戦士のとっておきの技か・・お前の大切な者を護りたいという強い意志が・・・・十分に伝わったよ。・・・だがな!!その大切な者達の本当に望んでいる思いも考えてやらず、一人で抱え込む、そのお前の考え方が間違ってんだよ!!」
球磨の裁きの炎は金色の光を帯びた大太刀を打ち払った。そして、体勢を崩した白州目掛け、強力な技を放った。
「炎の神、プロメテウスの加護を受けてみやがれ!!!」
槍から紅蓮の炎の渦が白州を包んだ。しかし、白州は焦げ死ぬことはなかったが、力尽きその場に倒れた。
「は・・・あ・・はぁ・・・・見事だったぜ・・・暴れ牛」
球磨は優しく笑い、白州に手を貸した。
「この炎は邪悪な者しか焼き尽くさない。お前がその証拠さ。まぁ・・・少しくらいは火傷しているかもだけどな」
白州はゆっくりと立ち上がり、球磨の顔を見て、悲しげな顔をして、自分の今までの行いを反省した。
「間違っていたのは俺のようだったな・・・理由はどうであれ、甲斐の大地を穢そうとする梅雪に加担しちまったからな・・・モトスやお前らの邪魔をしてしまったし」
白州は申し訳ない顔をしていると、球磨は彼の黄色い髪をくしゃくしゃと触りながら笑って返事をした。
「それでも護りたいものの為に一生懸命働いていた事は分かる」
「球磨・・・ばっちゃんや村の皆に本当の事を話そうと思うのだけど、受け入れてくれるだろうか・・・」
白州が不安そうに言うと、球磨は握り拳を彼の手に当て、ニヤッと笑って言った。
「お前は梅雪に加担していても、民たちを傷つけていない。そんな心配は無用だ。早く村に戻ろうぜ!!」
白州は小さく笑いながら頷き、村へ向かおうとした瞬間、近くの三つ峠で爆発が起きた。


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