第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙
「うぅ・・・やはり、鬼神・・いいえ、大地の守護の力を持つ勇士には勝てなかった・・・ですね。俺・・・いいえ、私は闇の一族にも捨てられ、千里に討ち取られた・・・実に滑稽な最期ですね・・・」
「厳美・・・1つだけ聞いて良いですか?もし、お前が闇を倒す守護者として造られたのなら、その運命を受け入れましたか?」
「・・・・そんなの考えたことありません。私は生み出された時点で滅ぼすしか頭になかったですから。でも、何かを守るために戦う・・・そういう感情が芽生えれば、闇と戦っていたかもしれません」
「・・・そうですか。正直、平泉で出会ったとき、お前も安曇殿に造られた人造戦士なら良かったと思っていました」
「・・・可笑しいですね。憎むべき敵にそんな言葉をかけるなんて。まるで、共に戦いたかったと言っているみたいじゃないですか・・・・」
厳美の瞳から一滴の黒い涙が流れた。
「お前・・いいえ、貴方もまたマガツイノ神に思うがままに操られた犠牲者。僕は貴方よりも、闇の一族と厄神が許せません」
「・・・千里、最後に貴方と一騎打ちが出来て嬉しかったです。貴方と御伽勇士達なら、卑弩羅や厄神四天王、そしてマガツイノカミにも負けないでしょう・・・。だけど、奴らは今まで戦ってきた者達とは違う。敵を慈しむ心は捨てなさい・・・」
「・・・・言われなくてもそのつもりです」
千里はまぶたを閉じながら、厳美に返答した。厳美は桜龍に笑いかけながら忠告した。
「桜龍、君の聖なる龍の力が運命を大きく左右します。闇が勝つか光が勝つか・・・」
「あんたからそんな言葉が聞けるとはな。惜しいぜ、あんたが勇士だったら共に戦えたのによ」
「それが、私の運命だったのですよ」
厳美は少し残念そうな顔をしていると、若桜がよろめきながら厳美に歩み寄った。
「厳美、あなたは一人ではないわ。私と黄泉へ行きましょう」
仁摩と梓は若桜の考え方に納得できず、必死に止めた。
「何をいうの!?若桜、あなたは千里さんと共に・・・」
「良いのよ、仁摩。私は心を取り戻しても、体は魔改造戦士のまま。それにもうこの体では戦えないわ・・・」
「それなら、私が元に戻すべさ!!もう戦わない、普通の人造人間として生まれ変わらすべさ」
仁摩と梓は説得し続けたが、千里に止められた。
「・・・それは、若桜が決めた事ですね」
「・・・ええ。その代わりに千里に私の力をあげる。どうか、これで闇の者達を倒して」
若桜は自分の胸に手を当て、薄紅色の光玉を体から取り出した。そして笑顔で千里の胸に入れた。
「私はあなたの心の中で生きている。そして、あなたの強さになる」
「若桜・・・」
「千里、皆、これからの戦い、黄泉で見守るわ」
「仁摩、あなたの強さは皆の支えになるわ」
「梓、あなたは母親、安曇様以上の術師になれるわ」
若桜は皆に笑顔を向け、別れの言葉を告げた後、倒れている厳美の手を優しく握った。
「さぁ、厳美。私達は黄泉へ行きましょう。天国か地獄か分からないけど、あなたは一人ではないわ」
「若桜・・・私と共に来てくれるのですか・・・」
若桜は厳美の腕を引き、桜龍に頼んだ。
「桜龍、私と厳美を黄泉へ送って欲しいわ」
「・・・分かった。それなら賽(さい)の河原へ行こう。黄泉へ送るのにちょうど良いよ」
恐山の麓にある賽の河原には無数に置かれた風車がゆっくりと回っていた。若桜と厳美は三途の川と呼ばれる宇曽利(うそり)湖に入水しようとしていた。
「この湖は本来酸性で入れないから、術をかけるよ」
桜龍と仁摩は湖に向けて聖なる光を放った。すると湖は七色の光に染まり、虹の道が現れた。
「厄神の写しとして造られ、多くの者を手にかけたのに、こんな美しい道を渡って良いのですかな?」
「ああ。天国へ行くか地獄へ落ちるかはお前しだいだがな」
「大丈夫よ、厳美。私達はきっと生まれ変わる。来世は日ノ本を護る勇士になれると願いましょう」
モトス達もまぶたを潤わせながら2人に別れの言葉を伝えた。
「梓殿や土竜族がお主らを造ってくれると思うぞ」
「そうしたら、一戦交えたいぜ、若桜と厳美と」
「やれやれ、暴れ牛は相変わらず戦バカだな。だが、若桜と厳美と将棋対決も良いな」
「厳美、本当は奥州で共に義経様を護ってくれると信じていました。願わくば共に戦いたかったです」
「・・・それは残念でしたね」
「私達はまた巡り合うわ、千里。そうだ、梓」
「何だべさ?」
若桜はいたずらっ子のような顔をしながら耳元で囁いた。
(あなた、千里の事が好きでしょう?)
「な!?何言ってんだぁ!!」
梓の顔と頭からは湯気が上がった。若桜はそんな彼女の姿を見て微笑んでいた。
(ふふ、千里をしっかりと支えてあげてね)
「では、私達は黄泉へ向かうわ。皆、厳美と私を救ってくれて、ありがとう」
若桜は厳美の手を握り、宇曽利湖に掛かる虹の橋を渡った。皆は2人の行先を見守りながら、後ろ姿を見続けた。
「また、会えると良いな、厳美、若桜」
2人の姿は消えると同時に虹の橋も消えた。そして、闇に覆われていた恐山は晴れ晴れとした空に変わり、無数の魂は天に還って行った。
その後、大芹達魔改造戦士や、いすみ達仲間も駆けつけた。皆は桜龍達の戦いの傷を癒やし始めた。
「よくぞ、陸奥の闇を打ち払ってくれた、桜龍達よ。陸奥の民達も無事に救う事が出来たぞ」
「ありがとうございます、いすみ様。ですが、まだ終わってはいませんよ」
「最後の戦いが残っておるな。卑弩羅を始め、厄神四天王やマガツイノカミとの最終決戦が」
「次は絶対に奴らも全力でかかって来るな、望むところだ!!」
「・・・厳美と若桜の死は無駄にしません。仇を討ちます」
「今までの悲劇を生ませた闇の根源との決着をつけてみせるぜ!!」
桜龍達は晴天の空に向かって、最終決戦の誓いを立てた。
第12話 完
「厳美・・・1つだけ聞いて良いですか?もし、お前が闇を倒す守護者として造られたのなら、その運命を受け入れましたか?」
「・・・・そんなの考えたことありません。私は生み出された時点で滅ぼすしか頭になかったですから。でも、何かを守るために戦う・・・そういう感情が芽生えれば、闇と戦っていたかもしれません」
「・・・そうですか。正直、平泉で出会ったとき、お前も安曇殿に造られた人造戦士なら良かったと思っていました」
「・・・可笑しいですね。憎むべき敵にそんな言葉をかけるなんて。まるで、共に戦いたかったと言っているみたいじゃないですか・・・・」
厳美の瞳から一滴の黒い涙が流れた。
「お前・・いいえ、貴方もまたマガツイノ神に思うがままに操られた犠牲者。僕は貴方よりも、闇の一族と厄神が許せません」
「・・・千里、最後に貴方と一騎打ちが出来て嬉しかったです。貴方と御伽勇士達なら、卑弩羅や厄神四天王、そしてマガツイノカミにも負けないでしょう・・・。だけど、奴らは今まで戦ってきた者達とは違う。敵を慈しむ心は捨てなさい・・・」
「・・・・言われなくてもそのつもりです」
千里はまぶたを閉じながら、厳美に返答した。厳美は桜龍に笑いかけながら忠告した。
「桜龍、君の聖なる龍の力が運命を大きく左右します。闇が勝つか光が勝つか・・・」
「あんたからそんな言葉が聞けるとはな。惜しいぜ、あんたが勇士だったら共に戦えたのによ」
「それが、私の運命だったのですよ」
厳美は少し残念そうな顔をしていると、若桜がよろめきながら厳美に歩み寄った。
「厳美、あなたは一人ではないわ。私と黄泉へ行きましょう」
仁摩と梓は若桜の考え方に納得できず、必死に止めた。
「何をいうの!?若桜、あなたは千里さんと共に・・・」
「良いのよ、仁摩。私は心を取り戻しても、体は魔改造戦士のまま。それにもうこの体では戦えないわ・・・」
「それなら、私が元に戻すべさ!!もう戦わない、普通の人造人間として生まれ変わらすべさ」
仁摩と梓は説得し続けたが、千里に止められた。
「・・・それは、若桜が決めた事ですね」
「・・・ええ。その代わりに千里に私の力をあげる。どうか、これで闇の者達を倒して」
若桜は自分の胸に手を当て、薄紅色の光玉を体から取り出した。そして笑顔で千里の胸に入れた。
「私はあなたの心の中で生きている。そして、あなたの強さになる」
「若桜・・・」
「千里、皆、これからの戦い、黄泉で見守るわ」
「仁摩、あなたの強さは皆の支えになるわ」
「梓、あなたは母親、安曇様以上の術師になれるわ」
若桜は皆に笑顔を向け、別れの言葉を告げた後、倒れている厳美の手を優しく握った。
「さぁ、厳美。私達は黄泉へ行きましょう。天国か地獄か分からないけど、あなたは一人ではないわ」
「若桜・・・私と共に来てくれるのですか・・・」
若桜は厳美の腕を引き、桜龍に頼んだ。
「桜龍、私と厳美を黄泉へ送って欲しいわ」
「・・・分かった。それなら賽(さい)の河原へ行こう。黄泉へ送るのにちょうど良いよ」
恐山の麓にある賽の河原には無数に置かれた風車がゆっくりと回っていた。若桜と厳美は三途の川と呼ばれる宇曽利(うそり)湖に入水しようとしていた。
「この湖は本来酸性で入れないから、術をかけるよ」
桜龍と仁摩は湖に向けて聖なる光を放った。すると湖は七色の光に染まり、虹の道が現れた。
「厄神の写しとして造られ、多くの者を手にかけたのに、こんな美しい道を渡って良いのですかな?」
「ああ。天国へ行くか地獄へ落ちるかはお前しだいだがな」
「大丈夫よ、厳美。私達はきっと生まれ変わる。来世は日ノ本を護る勇士になれると願いましょう」
モトス達もまぶたを潤わせながら2人に別れの言葉を伝えた。
「梓殿や土竜族がお主らを造ってくれると思うぞ」
「そうしたら、一戦交えたいぜ、若桜と厳美と」
「やれやれ、暴れ牛は相変わらず戦バカだな。だが、若桜と厳美と将棋対決も良いな」
「厳美、本当は奥州で共に義経様を護ってくれると信じていました。願わくば共に戦いたかったです」
「・・・それは残念でしたね」
「私達はまた巡り合うわ、千里。そうだ、梓」
「何だべさ?」
若桜はいたずらっ子のような顔をしながら耳元で囁いた。
(あなた、千里の事が好きでしょう?)
「な!?何言ってんだぁ!!」
梓の顔と頭からは湯気が上がった。若桜はそんな彼女の姿を見て微笑んでいた。
(ふふ、千里をしっかりと支えてあげてね)
「では、私達は黄泉へ向かうわ。皆、厳美と私を救ってくれて、ありがとう」
若桜は厳美の手を握り、宇曽利湖に掛かる虹の橋を渡った。皆は2人の行先を見守りながら、後ろ姿を見続けた。
「また、会えると良いな、厳美、若桜」
2人の姿は消えると同時に虹の橋も消えた。そして、闇に覆われていた恐山は晴れ晴れとした空に変わり、無数の魂は天に還って行った。
その後、大芹達魔改造戦士や、いすみ達仲間も駆けつけた。皆は桜龍達の戦いの傷を癒やし始めた。
「よくぞ、陸奥の闇を打ち払ってくれた、桜龍達よ。陸奥の民達も無事に救う事が出来たぞ」
「ありがとうございます、いすみ様。ですが、まだ終わってはいませんよ」
「最後の戦いが残っておるな。卑弩羅を始め、厄神四天王やマガツイノカミとの最終決戦が」
「次は絶対に奴らも全力でかかって来るな、望むところだ!!」
「・・・厳美と若桜の死は無駄にしません。仇を討ちます」
「今までの悲劇を生ませた闇の根源との決着をつけてみせるぜ!!」
桜龍達は晴天の空に向かって、最終決戦の誓いを立てた。
第12話 完