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第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙

「な・・・わ・・若桜・・・・・・」
「あなたの力はまだ使うべきでは無いわ!!ここは私が食い止める」
若桜は太刀で闇の息吹を防いだ。しかし闇の力が強力すぎたから全てを防ぐことは出来ず、攻撃を受けてしまった。
「う・・くぅ・・・・」
「止めてください!!若桜!!!これ以上力を使ったら君は死んでしまう!!!!」
しかし若桜は諦めること無く、太刀に全魔力を溜め闇の息吹を消し去った。
「若桜!!!!!!」
「千里・・・あなたはまだ死んではだめ。私が命かけてあなた達を護るから!!」
若桜は千里に優しい笑みを浮かべ、その場に崩れ倒れそうになった。千里は若桜を支え、強く抱きしめた。
「何で・・・こんな無茶をしたのですか?・・・・」
「闇に操られ、皆を傷つけてしまった償いと、あなた達を護りたいという意志よ。だから悲しい顔をしないで。魔改造戦士としての私を終わらせたいの、この戦いで」
若桜は苦痛に耐え、千里に優しい笑顔を向け彼の頭と頬を撫でた。
「・・・それが、若桜が出した答えなのですね・・・」
千里の頬から1滴の涙が流れ、傷ついた若桜を抱きかかえ、共に付いてきていた仁摩と梓に託した。
「仁摩さんと梓殿、若桜の心を救ってくれてありがとうございます。僕は厳美と決着を付けるので、安全な場所へ逃げてください」
「千里さん・・・」
千里は再び鎖鎌を構え、闇龍に鋭い視線を向けた。桜龍とモトスも彼の肩に手を置き、球磨と湘も勇ましい姿で隣に並んだ。
「見せてやろうぜ、千里。俺達の真の力をな!!」
千里は凜々しい表情で皆に頷き、強い気を溜めた。湘は人魚の姿となり水神のような神々しい姿に変った。球磨も黄金の鎧に炎のように燃える紅いマントを翻した火の神プロメテウスの姿となった。モトスも煌びやかで巨大な翡翠のハネを広げ、高貴な束帯姿に変った。そして、千里は鋼鉄の鎧に獣の毛皮を羽織った大地の守護者のような姿となった。そして桜龍も黄金の龍の装飾が施してある白い甲冑姿となり、それは龍神のように見えた。
「これで、勝負をつけます!!」
皆は一斉に地水火風と雷光を闇龍に放った。闇龍は黒い邪気を放ったが5色に輝く光にかき消され、それが闇龍に直撃した。
『グァアアアアアアア!!!!』
そして、千里が闇龍の懐に入り、額の黒曜石目掛け、鋼鉄の拳で砕いた。闇龍の身体からは取り込んだ魂が解放され、徐々に弱体化していった。


闇龍の力が消え去った厳美は元の美丈夫な青年姿に戻った。
「うぅ・・・元の姿に戻ってしまいましたか・・・」
「所詮お前はマガツイノ神の『写し』だったのだよ・・・」
「黙りなさい・・・私は厳美という唯一無二の存在なのですよ・・・私は写しではありません!!」
厳美は千里に殴りかかった。しかし、千里は拳が顔に当たる寸前に腕を強く掴み、背中に回し、腕の骨を折った。
「うぐぁあああ!!!!!!」
「マガツイノ神の力を失った、貴様の力はその程度なのですね・・・」
千里は冷酷な瞳を厳美に向けた。すると彼は今までに見せたことが無い鬼のような目つきになり、腕の痛みを耐えながらも彼の身体を蹴り、距離を置いた。そして折れた腕を元に戻した。
「舐めるな・・・私は・・俺は・・・雑魚共とは違う・・・最強の魔改造戦士なんだよ!!!!」
厳美は残った闇の力を全部解放させた。球磨は驚き戸惑い、千里の援護に回ろうとした。
「野郎!!まだこんな力を持っていやがったのか!!」
球磨は炎をまとわせた西洋槍を構え、厳美に攻撃しようとしたが湘達に止められた。
「球磨、助けたい気持ちは分かるが、これは千里の戦いだ。彼は助太刀を望みはしないよ」
「厳美は千里が討つべき仇だ。俺達はこの戦いを見届けよう。それが俺達に出来ることだ」
「大丈夫だよ、千里は絶対に負けない。だって、千里の後ろに見えているぜ・・・」
桜龍が穏やかな笑みを浮かべながら、千里と共に駆ける光を見た。
「共に戦った義経殿、弁慶殿、生みの親、安曇殿の魂が、千里と共に戦っているのが見えるよ」
千里の真紅の瞳は炎のように燃え、拳は金剛石のように堅く輝に満ちていた。
「僕は1人ではありません。ここまで共に戦ってくれた仲間と。そしてかつて共に戦った仲間が僕に力を貸してくれている!!」
千里の瞳が黄金色に光り、流星の如き速さで爆裂拳が厳美の身体に炸裂した。
「うぐぅううう・・・・・・」
「僕は、貴様には負けない!!貴様によって犠牲になった者達の痛みを喰らうがいい!!」
千里は怒りを込めた渾身の蹴りを厳美の腹部に喰らわせた。厳美は岩壁に激突し、激しい悲鳴を上げた。
「く・・・・俺はまだ終わらないぞ!!!!例え、卑弩羅やマガツイノカミに見捨てられても、貴様ら正義を貫く勇士共を根絶やしにしてやる!!!!!」
厳美は再び黒い大鎌を出現させ、凄まじい速さで千里に襲いかかった。千里は鎖で受け止めたが、大鎌の激しい斬撃に鎖は粉々に砕け、千里の鎧と着物を引き裂いた。しかし千里は動ずること無く、大鎌の鋭い刃を素手で受け止め、厳美の瞳を睨み付けた。
「魔改造戦士最強とはその程度の力・・・ですか?」
千里はもの凄い握力で刃を粉々に砕いた。厳美は目を丸くしながらも素早く千里から距離を取り、最後の力を拳に込めた。
「く・・・俺はお前の力が憎い!!闇と戦う御伽の勇士だと・・・ふざけんな!!!なんで俺は闇の・・・厄神を元に造られた『殺りく人形』なんだよ!!!!それなら上等だ・・・最後まで厄神の写しとして貴様を始末してやる!!!!!」
厳美の拳から黒く太い刃が現れた。最後の力で千里の胸を貫き粉々に破壊しようと突進してきた。厳美は無防備の千里の厚い胸板に刃が刺さった感触を味わった時、勝ち誇った顔をした。
「あーははははは!!!!!!!砕け散れ!!!!忌々しき鬼神、千里!!!!!」
「もはや、知能も狡猾さも無くなった、周りが見えなくなった戦闘人形ですね・・・・」
「な・・・何・・・・!?」
グサ!!ドバ!!!!
厳美は背中から胸を鋼鉄の刃のような物で貫かれた感覚を味わっていた。後ろを振り向いたとき、彼の胸は千里の拳に貫かれていた。
「う・・・今のは幻覚・・・だったのか・・・・・」
「砂煙に『幻惑の砂』を混ぜたのですよ。貴様が貫いたのはただの岩だったのですよ・・・」
千里は哀れむような顔を厳美に向け、彼の身体から拳を抜いた。厳美の口からは黒い血が吐き出された。
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