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第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙

桜龍達は、十和田湖から辺り一面雪景色の八甲田山を登っていた。険しい山道を懸命に上り続け、山頂にたどり着いた。皆は遥か北の下北半島を眺めると、恐山上空から黒雲と激しい稲妻が見えた。桜龍は冷たくおぞましい邪気に身震いをして言った。
「今までに感じたことが無い、凄まじい邪気だな・・・まるで、マガツイノカミが現れたみたいだぜ・・・」
「まるで、ではなく・・・マガツイノカミの写しですよね、厳美は」
千里は重々しい口調で大芹に問いかけた。
「・・・ああ。決戦を迎える君達には全てを話さなければならない。厳美は・・・」
大芹は大切な事を口にしようとした時、恐山の空から無数の魂が、上空を覆う闇の渦に飲み込まれるのを目にした。モトスと湘は信じられない光景に言葉を失っていた。
「無数の魂を闇の生贄にしているのか」
「もう飲み込まれた魂は手遅れなのか・・・」
「いいや、諦めてたまるか。厳美さえ倒せば闇の渦は消える。一気に恐山まで行くぜ!!」
桜龍は左目の眼帯を外し、祝詞を唱えると巨大な聖龍が皆の前に現れた。
「応えてくれてありがとうな、聖龍。俺達を厳美の元へ連れて行ってくれ」
聖龍は桜龍達の強い志に応え、『我が胴に乗れ』と心の中に伝えた。
「ありがとう、聖龍。・・・ここからは命懸けの戦いになる。俺は闇を討ち払いに行くが、皆はどうする?」
桜龍は決戦に行く覚悟を皆に示した。それに対し仲間達も『お前と共に行くぞ』と答えた。
「そりゃあ、行くに決まってんだろ!!俺だって大切な者を守る為に戦いに行くんだ」
「君一人に良い格好をさせないよ。強くなった私達の力を見せてやろうではないか」
「桜龍よ、お前だけに宿命を負わせぬと言ったはずだ。共に戦うと最初から決めておる」
「厳美は僕の仇です。今回は僕が決着を付けます」
「皆・・・そうだよな。だが、厳美はとてつもない力を持っている。共に戦って勝利を掴もう!!」
勇士達の覚悟は迷う事なく決まっていた。厳美を倒し、闇に染まった陸奥国を救うと心から誓っていた。大芹達、魔改造戦士も彼らの意志の強さと宿命に立ち向かう姿に感化されていた。
「俺も連れて行ってくれないか、厳美の事を知っているし、力を止めてみせる。氷雨と豹剛は付いていかなくて良いぞ」
「アタシも行くわ。これは大芹さんの為ではなく、大勢の民達を救いたいからよ」
「オラも、厳美を止めたいよ。あの子だって闇に囚われているかもしれない」
大芹達が行くか行かないかで口論していると、桜龍は3人をなだめて言った。
「いいや、大芹達は陸奥の民達の救出や怪我人の治療を頼む。決着は俺達がつけてくるから」
「し・・しかし・・・」
続いて千里も大芹たちに民を助ける事に専念して欲しいと頼み込んだ。
「あなた達は戦うよりも身近で困っている人たちを助けてください。この後の戦いは僕達の役目です」
「・・・分かった。だが、厳美は俺達を遥かに超える強さを持っている・・・厄神四天王や卑弩羅にも匹敵するかもしれない・・・絶対に生き延びてくれ」
大芹と氷雨と豹剛は桜龍達に握手し、健闘を祈った。モトスは桜龍に合図した。
「桜龍、これで皆の意見は一致した。もう行かれるか?」
「ああ、もう行かれるぞ。聖龍、恐山の厳美の元へ導いてくれ」
桜龍の言葉に聖龍は応え、長い胴に皆を乗せた。そして天高く羽ばたき、恐山の黒い闇の中に向かった。
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