番外編や短編集
小田原港の海を見ながら湘は桜龍に憑依した者を説得していた。男は穏やかな潮風に当たり、冷静になった。
「・・・つまりここは、四百年後の小田原ということじゃな」
「はい。貴方が、平清盛殿であればそうなります」
「・・・うーん・・ワシは熱病で死に、長い間眠りについておったが、目を覚ましたらこの若造の姿になっており、神社から少し歩いたらこの都にたどり着いたのじゃ」
湘はやはりなと頭を押さえた。
(桜龍が近くの神社で術を編み出し中に失敗して清盛殿の霊を呼んでしまったようだな・・・)
「今だと、都というよりは城下町と言いますよ」
「そういえば、小田原じゃと石橋山に近いか?あの地で頼朝を討伐できておれば・・・」
「頼朝公が敗走した戦場ですね。その後は源氏が躍進し始めましたが」
「じゃが、その源氏も前北条に乗っ取られ、北条も滅び、その後は色々な地方武将が現れ、国取りをする時代に変わったのじゃな」
「貴族の時代から武士の時代になって、外国との貿易も盛んな時代になりましたよ」
「く・・ワシがなし得なかった、『貿易による富国』が今成されたか。そういえば、湘はアナンの仲間か?」
清盛は懐かしい友の香りを湘にも感じ取れたので、聞いてみた。
「私は、海洋族と人間の混血種族です。アナンとは面識はあります」
「そうか、奴は元気か?娘や孫の面倒を見てくれたり、ワシに世界の海を教えてくれたりと平家に尽くしてくれたよ」
清盛は嬉しそうにアナンの話をしたので、湘は本当に親交があったのだなと感心していた。
「アナンに会いたいなら連絡してみますよ」
「それは結構じゃ。それより、この小田原を見てみたい。京の六波羅や遷都しようとしていた福原京(現兵庫県神戸市)とどう違うのか」
「案内致します、清盛殿。城下町の店は美味しい料理や民芸品が沢山ありますよ」
湘は清盛を小田原城下町へ案内した。
湘は清盛と城下町でおすすめの食事処に入った。そこは湘南の海の幸を使った漁師飯の店である。
「この時代は飯屋が多いのう」
「小田原は東海道の宿場町になっていますし、この店は旅人だけでなく、領民や漁師にも人気なのですよ」
「そう考えると、貿易で国を豊かにするより、地場産業に力を入れれば良かったかのう・・・」
清盛は深く反省していた。京の都は飢饉などで作物は採れず民はひもじい思いをしていた。そんな中、平家一門の贅沢な暮らしに、武士と没落貴族が平家に反乱を起こした。それを取り締まるのに過激に出過ぎて、平家滅亡の原因となってしまったのだ。
「ワシは国を豊かにするはずだったのに、ワシのやり方に反対する者を処罰し、いつの間にか権力で支配してしまった。それが平家を滅ぼしてしまったとはな」
「貴族や貧しい民が居る時代なのだから、仕方ないですよ」
清盛が少し暗い顔をしていると、定食が運ばれた。湘は場を和ませようと、料理の紹介をした。
「是非とも、今は小田原名物をご堪能ください」
お盆には、鯵の干物を中心に、梅干しと生シラスが入ったご飯、わかめと大根の味噌汁、香の物が添えられていた。さらに、食前酒にみかん酒も出された。清盛は今までに食べた事がない盛り合わせに驚いていた。
「何だか庶民ぽい料理じゃが、腹が減ったから食ってみよう」
清盛は味噌汁を飲み、干物を食べ、梅シラスご飯を口にした。するとほっぺが落ちそうな顔をした。
「こ・・これは見事な美味じゃ。庶民が口にする料理を侮っていたぞ」
「お口に合ってとても嬉しいです」
湘が笑顔で言うと、店主も嬉しそうに清盛に駆け寄り礼を言った。
「お兄さん!!うちの店を美味と嬉しいお言葉をありがとうございます!!これからも美味い漁師飯を作り続けますよ!!」
「あ・・ああ。馳走になった」
清盛は店主の感謝の言葉に戸惑っていた。
(そういえば、京の民から感謝された事が無かったな。・・・これが、感謝される気持ちか)
「・・・つまりここは、四百年後の小田原ということじゃな」
「はい。貴方が、平清盛殿であればそうなります」
「・・・うーん・・ワシは熱病で死に、長い間眠りについておったが、目を覚ましたらこの若造の姿になっており、神社から少し歩いたらこの都にたどり着いたのじゃ」
湘はやはりなと頭を押さえた。
(桜龍が近くの神社で術を編み出し中に失敗して清盛殿の霊を呼んでしまったようだな・・・)
「今だと、都というよりは城下町と言いますよ」
「そういえば、小田原じゃと石橋山に近いか?あの地で頼朝を討伐できておれば・・・」
「頼朝公が敗走した戦場ですね。その後は源氏が躍進し始めましたが」
「じゃが、その源氏も前北条に乗っ取られ、北条も滅び、その後は色々な地方武将が現れ、国取りをする時代に変わったのじゃな」
「貴族の時代から武士の時代になって、外国との貿易も盛んな時代になりましたよ」
「く・・ワシがなし得なかった、『貿易による富国』が今成されたか。そういえば、湘はアナンの仲間か?」
清盛は懐かしい友の香りを湘にも感じ取れたので、聞いてみた。
「私は、海洋族と人間の混血種族です。アナンとは面識はあります」
「そうか、奴は元気か?娘や孫の面倒を見てくれたり、ワシに世界の海を教えてくれたりと平家に尽くしてくれたよ」
清盛は嬉しそうにアナンの話をしたので、湘は本当に親交があったのだなと感心していた。
「アナンに会いたいなら連絡してみますよ」
「それは結構じゃ。それより、この小田原を見てみたい。京の六波羅や遷都しようとしていた福原京(現兵庫県神戸市)とどう違うのか」
「案内致します、清盛殿。城下町の店は美味しい料理や民芸品が沢山ありますよ」
湘は清盛を小田原城下町へ案内した。
湘は清盛と城下町でおすすめの食事処に入った。そこは湘南の海の幸を使った漁師飯の店である。
「この時代は飯屋が多いのう」
「小田原は東海道の宿場町になっていますし、この店は旅人だけでなく、領民や漁師にも人気なのですよ」
「そう考えると、貿易で国を豊かにするより、地場産業に力を入れれば良かったかのう・・・」
清盛は深く反省していた。京の都は飢饉などで作物は採れず民はひもじい思いをしていた。そんな中、平家一門の贅沢な暮らしに、武士と没落貴族が平家に反乱を起こした。それを取り締まるのに過激に出過ぎて、平家滅亡の原因となってしまったのだ。
「ワシは国を豊かにするはずだったのに、ワシのやり方に反対する者を処罰し、いつの間にか権力で支配してしまった。それが平家を滅ぼしてしまったとはな」
「貴族や貧しい民が居る時代なのだから、仕方ないですよ」
清盛が少し暗い顔をしていると、定食が運ばれた。湘は場を和ませようと、料理の紹介をした。
「是非とも、今は小田原名物をご堪能ください」
お盆には、鯵の干物を中心に、梅干しと生シラスが入ったご飯、わかめと大根の味噌汁、香の物が添えられていた。さらに、食前酒にみかん酒も出された。清盛は今までに食べた事がない盛り合わせに驚いていた。
「何だか庶民ぽい料理じゃが、腹が減ったから食ってみよう」
清盛は味噌汁を飲み、干物を食べ、梅シラスご飯を口にした。するとほっぺが落ちそうな顔をした。
「こ・・これは見事な美味じゃ。庶民が口にする料理を侮っていたぞ」
「お口に合ってとても嬉しいです」
湘が笑顔で言うと、店主も嬉しそうに清盛に駆け寄り礼を言った。
「お兄さん!!うちの店を美味と嬉しいお言葉をありがとうございます!!これからも美味い漁師飯を作り続けますよ!!」
「あ・・ああ。馳走になった」
清盛は店主の感謝の言葉に戸惑っていた。
(そういえば、京の民から感謝された事が無かったな。・・・これが、感謝される気持ちか)