番外編や短編集
相模国西部、箱根大涌谷で噴煙が立ち上る中、桜龍と千里は対峙していた。千里は険しい顔で桜龍に鎖鎌を向けていた。
「貴方と会うのは初めてですが、1度は源氏を滅ぼした実力を持っているはず。貴方の武芸、見せてもらいますよ」
桜龍は不敵な笑みを浮かべ、抜刀しようと相手の出方を伺っていた。しかし、いつもの桜龍とは違った威厳ある雰囲気と言葉使いだった。
「対平家用に造られた人造戦士千里、息子や一門が世話になったそうじゃな。この若造の中に入ったワシは強いぞ!!」
強い殺気と大涌谷の煙が漂う中、湘は冷や汗をかきながら見ていた。
(千里も清盛殿も本気だ・・・これでは大涌谷が爆発するぞ・・・やはりアナンを呼ぶべきだった・・・)
千里と桜龍の体に憑依した平清盛との決闘が始まった。
前日の午前、過去に後北条氏に仕えていた湘は、河内国で隠居する氏直(うじなお)に頼まれ、小田原の町の様子を見に来ていた。秀吉による小田原征伐で北条家は滅亡したが、この地は現在、徳川家の管轄となっていた。亡き当主、氏政(うじまさ)から家康へと『民を大切にするという志』が引き継がれたので、町も変わらず活気付いていた。
「皆も変わらず元気そうだ。北条が無くなったのは悲しいが、小田原が残って良かったよ」
湘は小田原城が目の前に見える城下町を歩いていると、顔見知りの男が魚屋と言い争っているのが見えた。
「あれは、桜龍か?小田原に来ていたのか?だが、何だか様子が変だな・・・」
普段あまり怒らない彼が、めくじらを立てて怒っているのに違和感があった。湘はゆっくり彼らに近づいた。
「ここは、『大輪田の泊(現兵庫県神戸市神戸港)』ではないのか!!」
湘は桜龍の叫び声を聞いて、推測出来た。
(おおわだのとまり?は、平家全盛の頃の貿易港ではないか。まさか・・・)
「何言ってるんでい!!ここは、北条5代が築き上げた、難攻不落『小田原の城下町』だ!!今は徳川家の管轄だが、北条魂は俺らの中にあるぜ!!」
「北条だと・・・おのれ時政め、伊豆で頼朝の監視をしているかと思いきや、こんな所に立派な都を造りおって・・・」
桜龍は町の上にそびえ立つ見たこともない天守閣を見て悔しがっていた。魚屋は首を傾げながら返答した。
「時政公つったら、昔の鎌倉北条氏だろ?この地は、早雲公から始まり、氏綱公、氏康公、氏政公と氏直公と5代続いたんだぜ」
「・・・貴様ら、何を言っておるのじゃ?」
桜龍は眉間にシワを寄せ、ちんぷんかんぷんな顔をしていたので、湘はクスッと笑いながら、これ以上桜龍と魚屋との会話が噛み合わないだろうと見兼ねて、彼を引っ張り出した。
「皆、桜龍が迷惑をかけてしまったね。こやつは弱いのに酒を飲み、酔っ払ってしまったのだろう」
「何じゃ若造!!わしはこやつらに聞く事が沢山ある!!ワシは太政大臣、平きよもォガア・・・」
桜龍に憑依した者は名を名乗ろうとしたが、湘に口を押さえられた。
「私がこの状況を教えるので、どうかここは引いて下さい」
(ここを徳川の者に見られると厄介だしな・・・)
湘はとりあえず、城下町の外れまで桜龍を連れて行った。
「貴方と会うのは初めてですが、1度は源氏を滅ぼした実力を持っているはず。貴方の武芸、見せてもらいますよ」
桜龍は不敵な笑みを浮かべ、抜刀しようと相手の出方を伺っていた。しかし、いつもの桜龍とは違った威厳ある雰囲気と言葉使いだった。
「対平家用に造られた人造戦士千里、息子や一門が世話になったそうじゃな。この若造の中に入ったワシは強いぞ!!」
強い殺気と大涌谷の煙が漂う中、湘は冷や汗をかきながら見ていた。
(千里も清盛殿も本気だ・・・これでは大涌谷が爆発するぞ・・・やはりアナンを呼ぶべきだった・・・)
千里と桜龍の体に憑依した平清盛との決闘が始まった。
前日の午前、過去に後北条氏に仕えていた湘は、河内国で隠居する氏直(うじなお)に頼まれ、小田原の町の様子を見に来ていた。秀吉による小田原征伐で北条家は滅亡したが、この地は現在、徳川家の管轄となっていた。亡き当主、氏政(うじまさ)から家康へと『民を大切にするという志』が引き継がれたので、町も変わらず活気付いていた。
「皆も変わらず元気そうだ。北条が無くなったのは悲しいが、小田原が残って良かったよ」
湘は小田原城が目の前に見える城下町を歩いていると、顔見知りの男が魚屋と言い争っているのが見えた。
「あれは、桜龍か?小田原に来ていたのか?だが、何だか様子が変だな・・・」
普段あまり怒らない彼が、めくじらを立てて怒っているのに違和感があった。湘はゆっくり彼らに近づいた。
「ここは、『大輪田の泊(現兵庫県神戸市神戸港)』ではないのか!!」
湘は桜龍の叫び声を聞いて、推測出来た。
(おおわだのとまり?は、平家全盛の頃の貿易港ではないか。まさか・・・)
「何言ってるんでい!!ここは、北条5代が築き上げた、難攻不落『小田原の城下町』だ!!今は徳川家の管轄だが、北条魂は俺らの中にあるぜ!!」
「北条だと・・・おのれ時政め、伊豆で頼朝の監視をしているかと思いきや、こんな所に立派な都を造りおって・・・」
桜龍は町の上にそびえ立つ見たこともない天守閣を見て悔しがっていた。魚屋は首を傾げながら返答した。
「時政公つったら、昔の鎌倉北条氏だろ?この地は、早雲公から始まり、氏綱公、氏康公、氏政公と氏直公と5代続いたんだぜ」
「・・・貴様ら、何を言っておるのじゃ?」
桜龍は眉間にシワを寄せ、ちんぷんかんぷんな顔をしていたので、湘はクスッと笑いながら、これ以上桜龍と魚屋との会話が噛み合わないだろうと見兼ねて、彼を引っ張り出した。
「皆、桜龍が迷惑をかけてしまったね。こやつは弱いのに酒を飲み、酔っ払ってしまったのだろう」
「何じゃ若造!!わしはこやつらに聞く事が沢山ある!!ワシは太政大臣、平きよもォガア・・・」
桜龍に憑依した者は名を名乗ろうとしたが、湘に口を押さえられた。
「私がこの状況を教えるので、どうかここは引いて下さい」
(ここを徳川の者に見られると厄介だしな・・・)
湘はとりあえず、城下町の外れまで桜龍を連れて行った。